妻とはベタに合コンで出会った
合コンで、家族のことを楽しそうに話していたのが
印象的で好きになった
俺は小さい頃に父親を亡くしていて、中学の時に母親も亡くし、
その後育ててくれた祖母も就職してすぐに亡くした
付き合う前に話すと、
「親を亡くしたこともないからなんて言うのが正解か分からないや、
ごめん。○年間、一人で頑張ってきたんだね。
いや、俺君なら支えてくれる彼女もいっぱい居たか。」
と言われた
よく可哀想とか言われていたので、
こういう反応もありなのかと思った
家に呼んだときは、最初に仏壇に手を合わせてくれて、
この子と結婚したいと思った
祖母と暮らしていた古い一軒家にそのまま住んでたんだけど、
大抵の人は売って、駅近のマンションに移ればいいとか言ってきたけど、
彼女はマンションで育ってきたこともあり、興味津々だった
子供みたいに
「こういう家に住んでみたかった!夏に庭で花火とか縁側で西瓜とか!
秋は焼き芋とか出来るの?ご近所さんに怒られる?いいなー。」
と興奮気味
その日に付き合ってほしいと言ったら、
OKしてくれた後に、すぐに仏壇に報告していた
「いつまで俺君の恋人でいられるか分かりませんが、
よろしくお願いします。」
そのまま泊まって、一緒に過ごしたけど、
夜中にトイレに怖くて行けないと起こされたときは笑った
この家に来たときはもう大きかったけど、
最初の頃はそんな気持ちになったことを思い出した
彼女が俺の恋人だったのはたったの1年間でした
その後もいろいろあったのですが、
妻は死の縁から帰ってきてくれました
言葉足らずでした
祖母の家に来たときは母が亡くなった後なので、
既に中学生で大きく、意気がってもいたので言えなかったけど、
夜の家の雰囲気が怖かったことを思い出して、
彼女も一緒なんだと嬉しくおかしかったんです
その日にはキスするだけで精一杯のへたれでした
がっついて嫌われたくない一心でした
恋人期間1年で結婚して家族になってくれました
旅行先でプロポーズをしたら、
帰ったら一緒に墓参りに行きたいと言われて一緒に行った
「でも、仏壇のが身近な気がするね、家のせいかな。」
と、結局そのまま家に帰って仏壇にも報告していた
彼女の家に挨拶に行き、家族のことを説明しようとすると、
聞いてるから大丈夫と言われた
「俺さんにご家族が居ないなら、あんまり遠慮しないでいいのかしら。」
と彼女のお母さんに言われて一瞬戸惑ったら
「息子って思ってもいい?息子が欲しかったから嬉しい。
お母さんとお祖母さんから母のバトン受け取ってもいいかしら?
俺さんは義母だって思ってくれていればいいから。」
と言われて思わず泣いた
お父さんは
「キャッチボールかゴルフは出来る?」
と聞いてきて不意打ちで笑いが止まらなくなった
俺はご両親の近く、彼女の地元に住みたかったけど、
彼女は俺の家に住みたがり、それなら別居婚!と宣言された
お母さんも俺の家を見て、
「夏に西瓜持ってきてもいい?」
と聞いてきたのは微笑ましかったし、
毎年夏は西瓜と花火が恒例行事
彼女の妹も、よく家に来ては「この家は居心地がいい。」と寛いでいる
彼女の祖母宅はお店もやっているし、
彼女の実家よりも都会なので、よくある“おばあちゃんの家”って感じじゃないので、
わが家が居心地がいいみたい
結婚するときは、彼女が
「みなさんの分まで俺君とずーっと一緒に生きていきます!」
と宣言してくれた
結婚式も俺の親族席が空になることを懸念していたんだけど
「なにを引け目に感じる必要があるの?」と言われて、
小さい規模ながら執り行った
彼女のご両親は共に3人兄妹で親戚同士も仲が良く、
悪い人が誰もいないという奇跡の親戚だった
彼女の従兄弟達とも、普段飲みに行ったりするくらいになったし、
定期的に親戚の食事会があるんだけど、本当に仲が良い
そして、義母も義父も母親を早くに亡くし、既に父親も亡くなっている
彼女の祖母は後妻さんだということで、
俺の境遇も“可哀相”だとは誰も言わなかったし、
「出会った人たちに愛されて育ってきたんだね。
嫌じゃなければ俺たちが家族で親戚です。」
と言ってくれるような人たち
幸せに、慎ましやかに暮らしていたある日、彼女が交通事故に遭った
駅から家までの道は狭くて暗くて、曲がってきた車に撥ねられた
やっぱり彼女の実家の近くに住めば良かったと後悔した
駅に着いたって連絡から充分時間が経っても帰って来なくて、
警察から電話が来たときのことは思い出したくもない
緊急手術をして、眠っている彼女を見たときは、
母親が亡くなったときを思い出して、取り乱した
俺に関わる人はみんな早死にするんだと思い、
結婚したことも心の底から後悔した
なかなか目を覚まさなくて、ICUにいる間は何も手につかなかった
4日後に、目を覚ましてくれたときのことは一生忘れられないと思う
話せるようになってすぐ
「俺君より先には死にたくない。もう一人にしたくない。」
って言われて、本当に生きていてくれて良かったと思い、
看護師さんが引くほど泣いて、
過呼吸みたいにもなって迷惑をかけた
更に元気になってきたら、
「三途の川で俺君の両親とか祖父母が帰れみたいなのはなかった!
ドラマとか嘘だよ!会いたかったなー。
もう少しで会えるところだったんだけど、もっと先みたい。」
とか縁起でもないこと言ってた
心肺停止したし、全然笑えなかったら、
言い過ぎたと謝られた
幸い、大きな後遺症が遺るようなことはなく、
リハビリをすれば日常生活には戻れるらしくて安心している
入院中は両親が家に来てくれたり、
俺が実家に泊まったりで、俺のことまで心身共にフォローしてくれたし、
親戚一同も弁護士を紹介してくれたり、
飯に連れていってくれたり、
日中に彼女のところに遊びに来てくれたり、差し入れをくれたり、
手厚くサポートしてくれている
もちろん友達もよく遊びに来ていて、嬉しそうにしているし、
辛いリハビリも頑張れている
彼女の職場も迷惑を掛けているのに、治すことが最優先で、
いつまでも待つと言ってくれていている
それでも日中暇な時間に、と、納期が先の軽めの仕事を振ってくれたり、
安心するように配慮してくれたりしている
復帰が先になるから退職すると言った彼女への最大の配慮だと思っている
まだリハビリ入院中なんだけど、
先日、外出許可を得て、彼女の祖母宅の近所であるお祭りに行きたいと言うから
空いてる時間に車椅子で行ってきた
お神輿を見て、夏に行けなかったお祭りに行って大満足していた
そのまま病院に戻ろうとしたけど、
どうしても家に帰りたいと言うので、
家に帰って、仏壇に手を合わせて、
「守ってくれてありがとうございます。」
と言っていた
抜き打ちで俺の生活チェックもしたらしく、合格が出ました
当たり前のように家にいる彼女を見たらまた泣けてきて、
安心して、改めて一生守ると決意をして、
出来れば彼女より先に死にたいと思っていたけど
俺が彼女より後に死ぬ為に長生きすると決めた
やっぱり疲れたのか、安心したのか、気持ち良さそうに畳の上で眠る姿を見て、
また泣いてしまった
古い家なので、風呂とかトイレも狭いし、
段差もたくさんあるし、階段も急だし、コンビニとかも遠いし、
駅も遠いので、退院直後は実家で療養させるつもりだけど、
自宅ですると聞かなくて揉めています
リフォームも認めてくれないので、
とりあえず帰ってくるまでに畳を替えたいので、職人さんには連絡済み
移動のために車を買いたくて、祖母の遺してくれたお金で一括で買おうと思っていて、
その話を妻にしたら、そのお金はいざというときの為に取っておいてと言われた
「そのお金はお祖母さんの為に、俺君の家族のために、って私か。
俺君が病気とかはダメ、健康でいて。
とにかく車くらいは私達の貯金で買えるから。
家のリフォームはしないよ。修繕はするけどね。」
と、誰よりも家を大切にしてくれているから何も言えないし、
下手したら俺よりも俺の家族のことを考えてくれている
とりあえず、どちらで療養するにせよ、
療法士の先生に相談して、風呂場の椅子とかを買ったりの対処療法になりそう
退院はもう少し先だけど、実家で療養出来れば、
義母が勤める病院でのリハビリも出来るって言ってもらえてるし、
行き帰りは義母が車で請け負ってくれるし、
悪いことが1つもないので説得するしかない
俺の健康診断も視力以外はAだったので一安心
妻をサポートするためにジムに通ったかいがあったのかも
最初に抱き抱えたときは、「あれだけ嫌がったお姫さま抱っこが実現してる。」
と言われる始末でした
今週末は外泊許可がおりたので、自宅と実家とで過ごして、
自宅の不便さを実感してもらうつもり
最近は更に家族を増やしたいという話もしていたけど、
事故もあり、彼女の体が何よりも一番大切なので2人でも良いと思っている
その辺は全快してから、本人と医師とも相談していくしかないと思ってる
授かりものだし、絶対安静だったこともあって、
大分体力が衰えているから無理はさせたくないし、
年齢的なこともある
妻はこのことについてどう考えているのかは聞いてないけど、
焦りがあるのはなんとなく気がついているし、
事故後も子宮、卵巣のこと気にしてたんだよな
まだ歩くことも大変そうだから、
いろんな焦りとかも今後はフォローしていかないといけないと思ってる
結婚後に喧嘩して、「俺がこの家に住んでるから結婚したんだろ!」
って馬鹿みたいなことを言ったことがある
そのとき彼女が
「ボロアパートだって高級マンションだって結婚したに決まってるでしょ!」
と、当たり前の返事をくれたけど、
俺の好きなところとかきっかけは教えてもらったことがないし、
聞くと「この家は魅力的だったよ。」と言って誤魔化される
物凄いだらだらと、馴れ初め以降のことを書いてしまいましたが、
彼女と結婚できて、家族が増えて本当に幸せだし、
これから先も一生大切にしていきたい