エビゾーの嫁さんのニュースを見て
思い出した。
もう、あれから5年経ったんだってこと。
今から8年前に
俺の転職やらなんやらで
ちょっと揉め事があって、
夫婦仲が1年ほど
険悪になった時期があった。
その後、お互いに腹の中を曝け出して、
何とか再構築するようになった。
もうかなり仲が良くなったと思った5年前、
嫁さんにガンが見つかった。
大腸にかなり大きな腫瘍があり、
ステージ4だから、
即入院→手術となった。
主治医はその分野では
有名な方だったようで、
手術そのものは順調に終わった。
しかし、嫁さんの修羅場は
退院後の抗がん剤治療から始まった。
まず、手足が異常なくらい痺れる。
おまけに口の中まで痺れる。
だから、熱いものや
冷たいものを口に入れることができない。
さらに、抗がん剤の副作用で
常に吐き気に悩まされる。
そんな理由で、食べることや飲むことが
殆どできない。
息も絶え絶えで横たわっている嫁さんは、
「何もできなくてごめんね」と言っていた。
俺は、若い頃に調理のバイトをやっていたので、
料理に関しては全く問題がなかった。
娘は3人いるので掃除や洗濯物の取入れは
分担して手伝ってもらった。
風呂掃除や洗濯はもともと手伝っていたので、
家事に関しては大丈夫だった。
だから嫁さんには治療に専念してもらった。
それでも日に日に痩せ細っていく嫁さんが
本当に気の毒だった。
手指が痺れて力が入らないため、
マグカップを何度も落としては
涙ぐむ嫁さんを見ていると、
病を治すことについて
何もできない自分が情けなくて、
不安でたまらなかった。
なんで、もっと早く病気に
気付いてやれなかったのだろう。
なんで、もっと大事にして
やらなかったのだろう。
俺にできることといえば、
ただ抱きしめてやるだけだった。
そんな苦しい抗がん剤治療も
なんとか6か月で終了し、
それからは毎月検診を受けるのみになった。
嫁さんの痩せ細った身体や
衰えた体力を元に戻すため、
俺はあらゆる協力を惜しまなかった。
そんな甲斐もあって、
手術の1年後は
家族旅行に行けるくらい回復した。
それからは、毎年その季節には
家族旅行に行くことが
我が家の好例になった。
5年経過して転移がなかったら
全快だと言われていたが、
4年後の定期検診で大腸に
ポリープが見つかり再度入院した。
あと1年だったのに、と思うと、
腹の底から力が抜けていった。
ところが、ポリープを採取して
再検査した結果、
悪性では無かったので無事退院。
先月、5年後の定期検診で
異常なしの診断が出た。
嫁さんが無事でいてくれて、
本当に嬉しかった。
心の底から喜んだ。
5年前から始まった
「おはよう」と「おやすみ」のキスは
毎日欠かさずやっている。
去年の手術後からは「行ってきます」と
「ただいま」のキスも追加された。
これからも嫁さんを大事にして、
嫁さんから愛されるように、
弛まぬ努力をしようと思う。
来年の春には銀婚式をする予定だが、
出来ることなら金婚式まで
2人で頑張ろうと思う。
失いそうになって気付くなんて、
ホントはダメなんだろうけど、
失う前に気付いてまだ良かったと
思いますわ。
娘たちからは
「お父さん、お母さんにベタ惚れじゃん」
って言われるけど、
「悔しかったら
そこまで惚れる相手を探してみろ」
ってドヤ顔で返します。