ある年の夏休み、○○渓谷に涼みに出かけた。
△△淵というところでふと見ると子供(保育園児くらい)が板切れのようなものに
掴まって流されていた。
騒然となる観光客。
すぐに近くにいた大学生のカップルの彼氏のほうが助けに飛び込んだ。
彼女のほうは手近な岩に駆け上がって大声を出している。
パニックになって叫んでいると思ったが、
そうではなく泳ぐ彼氏に方向や助け方の指示を出していた。
やがて彼氏は子供を後ろから抱くようにしてラッコのような体勢でこちらの岸に向かった。
しかし行きのクロールと違って泳ぐのが遅くて流されていく。
するとなんと彼女が岩から見事な飛び込みを見せて、
たちまち彼氏のところへ泳ぎ着き
2人がかりで子供を腹の上に乗せて泳ぎ始めた。
その間、岸ではロープなど何か投げてあげるものを
探す人が続出したがなにもなし。
するとどこかのおじさんが
「手を繋ぐぞ」
と叫んで水の中に入っていった。
何人か忘れたが一列に手を繋いだ男が
自分たちをロープがわりにしてカップルをつかまえて
みんなで引きずり上げた。
俺が係わったというのはその手を繋いだ男の中に
俺も俺の友だちも参加したから。
子供は意識あり、咳き込んだ後はギャン泣き。無事だった。
子供の親がどうだったか、なぜか記憶にない。
子供が助かったからいえることだが、
俺はそんなことより抱き合って泣き笑いしているカップルが
うらやましくて仕方がなかった。
競泳スタートの時のような鮮やかな飛込みをみせた
白いワンピースが目に焼きついている。