兄が寝てた。 寝てたっていうか階段下でなんか首がゴニャっとなってて

私には一回り離れた兄がいた。
子供の頃は可愛がってもらったし、
次兄に苛められるといつも庇ってくれてた自慢のいい兄で、
有名大を卒業して、名の知れた企業に勤め、
私が中学の時、結婚した。

相手はずっと付き合ってて優しくて
美人で可愛くて笑顔がやさしい素敵な人。
姉が欲しかった私はそりゃ嬉しかった。
子供も生まれて、母子家庭で当時実家に介護が必要な祖母のいた
義姉はうちに里帰り出産し、赤ちゃんの可愛さにみんなメロメロ。

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ちょくちょく来てくれる義姉のお母さんも優しくて大好きだった。
ところが数年後、兄が何かトラブル起こしたらしく、
会社クビ?か自主退職かはわからないけどとにかく辞めた。
そして酒、賭け遊び、ボウリョク、浮気…優しかった兄は居なくなった。
最初は義姉と姪をうちにかくまったんだけど、姪もママから離れず、
視界から消えると泣き叫ぶ。

兄もグダグダに酔っ払って凄い目で乗り込んできて暴れまくるし、
ここじゃ危険だと判断した親が義姉の家にお金を出して
義姉のおばあさんを施設に入れ、
遠方の義姉実家に逃亡させ、更に兄夫婦の賃貸マンションと、
義姉の実家も引き払い、逃亡させた。

そこで私の祖父が倒れてしまい、母が介護でほぼ家を開ける上に、
父が長期出張で居ない。
なもんで私はほぼ兄と二人になった。
当然ボウリョクを受け、酔いが冷めれば泣きながら謝られ、
心配した次兄がうちに入り浸る。
とは言っても次兄も仕事があるし、結婚秒読みだった相手も居て、
その親から破談をチラつかせられてた。

父に「高校卒業まで頑張れるか?」
と絞り出すような声で聞かれ、
昔の優しくてかっこよかった兄が忘れられなくて
「いつか兄も元に戻るよ、姪も義姉さんも仲直りできるよ」
って泣きながら言った。

ところがそんな生活始めて何年かの時、
週に一度は帰ってきていた父がヨレヨレになった母に
「会社辞めてこっちに戻る。再就職も目処がついたし、
じいちゃんの施設探す。給料は下がるがこのままではいけない」と言った。
祖父は倒れては居たが頭は元気で介護度は低く、
中々良い施設がなかった。あっても金銭的にきつめなところだけ。

「覚悟決めて、この家売って、貯金と足せば何とかなる。
俺もお前も資格持ちだからまだ働けるから。
ついでに自分達の老後も考えよう。将来的にはその方が良い」

母は泣いて「お父さんのためにありがとう」

と喜んでたけど兄がキレた。

酔って呂律の回らない口で「俺の金はどうなるんだ!」って。

もう暴れに暴れまくって次兄と父が必タヒで止めて、
母と私は泣きじゃくった。朝明るいとこで見た家の惨状は
凄まじかったな…。

前置き長くてゴメン。
ある日、重い足を引きずるように帰宅すると
凄まじい異臭!くっさー!!と異臭の方に行くと兄が寝てた。
寝てたっていうか階段下でなんか首がゴニャっとなってて、
脱プンしてて、横には2リットル以上入ってそうな位の大きい取っ手つきの
ペットボトルの焼酎。多分ラッパ飲みしてたんだろう。
ゴニャっとなった顔を覗き込んだら血だらけでなんかゴチャッとなってた。
白目向いてて、呼吸してるか確認する為に顔に手をかざしたけどわからなかった。
古い家で、階段も廊下も絨毯敷きじゃなく、
黒っぽい硬い木で出来てて、踊り場もない。多分顔から落ちたんだと思う。
無職になってからびっくりする程太って、酒浸りだったし、
今思うと病気もしてたんじゃないかな。
糖尿とか高血圧とか、いわゆる成人病。
スポーツマンだった昔ならひらっとかわせただろうに。

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しばらく悩んだ。もし救急車呼んだら助かるかも、
でもこのままタヒんでくれたら保険金くらいはあるだろうし、
そしたら姪もちゃんと暮らせる。

いくらあるかわからないけど、
お金よりもなによりも安心して暮らせるし、
何と言ってもまだ3歳なったばっかりだもん、
パパの事覚えてないかも!

義姉さんだって今はやつれてるが元々すごく
ステキな人だった!まだ若いんだ!
バツついた後、兄からちょっかいかけられるかも
しれないとヒヤヒヤしながら生きるのは申し訳ない!
私もなぐられる事は無くなる!次兄は結婚出来る!
よし、頼む!頼むから!このままタヒんでくれ!!
ただ、父と母からすれば子供だし、言っちゃいけないなって思った。
軽く荷物まとめて満喫(今で言うネカフェ)に行って
「兄が荒れてるから私駅前の漫画喫茶来たから心配しないで。
次兄ちゃんが迎えに来てくれるって言うからそしたら帰るから、
お母さんはしばらく帰らんでな」と連絡した。

そして次兄に電話してありのまま話した。
急に罪悪感がわいて泣きじゃくった。
「多分タヒんでる。でも万が一生き延びて障害残ったりしたら
迷惑かけられるのは可愛い姪と罪のない義姉さんだよ、
あと次兄ちゃんと次兄ちゃん婚約者」と言ったら苦しそうな声で
「誰にも言うな、な?二人だけの秘密だ。俺も背負うから」
といわれ、「でも…」と言ったら
「お前の七針縫ったばかりの手を見ろ」と言われ二人でしばし泣いた。
両親に「私はしばらく次兄宅に厄介になります」と連絡して、学校も休んだ。

相談の上「親に発見させるのは忍びない」と、
二人で実家に帰ってみたらやっぱりタヒんでた。
状況からして事故とされた。ま、ホントに事故だけど。
私は「帰宅したら兄が二階で暴れている音が聞こえました。
怖かったのでそっと家に入り、見つからないように荷物をまとめ逃げました。
とにかく怖かったんです…」

と包帯の手で泣きじゃくった。
両親も次兄も「この子には辛い思いをさせました」と泣いてた。
詳しくはわからないけど、義姉に保険金もちゃんと入ったし、
家は更地にして売って義姉にも姪に渡した。
お礼を言う義姉に両親が無言で泣きながら土下座してた。
私が知らない所で兄は義姉にとっても酷いことをしてたのだろう。
無邪気な姪だけが心の救いだった。

私は大学へ進学し、そこで出会った人と結婚し子供も出来た、
次兄は当時の人とは違うが結婚して子供がいる。
元義姉は再婚はしなかったが、姪は本当にいい子でよく親や、
私達の所に遊びに来たり、旅先の土産をくれるし、
お母さんはお中元たお歳暮だとなにくれと送ってくれる。
義姉もよく顔を出してくれる。

そして私と次兄の所に何の因果か息子二人と
やや年の離れた娘の順で3人生まれた。
この前子供らがギャーギャー遊んでるとこ見ながら、ふと次兄に
「色々考えちゃうな」って言ったら
「お前はただでさえ色々考えすぎる、
女だから難しいだろうがもう居ないんだ。
俺も娘の父親だ。難しい。でも俺は当時間違えてた。クソバカ野郎だ。
お前にあの家を我慢させたのは最悪な決断だった。
俺ぁ忘れちゃいけねぇんだ。皆んなそうだ。
嫁や娘できて心底後悔した、俺も親父も守んなきゃねえもんがわかんねぇ
考えなしの大バカもんだ。ただアイツもオヤジとオフクロの息子なんだよな。つれぇな」
と絞り出すような声で言われた。
多分狂った目で笑いながら私ににじり寄る兄を次兄が体張って
止めてくれた時のこと言ってるんだろうなって思う。
「助かったよありがとさんよ、娘ちゃんも奥さんも心配するで泣くな」と言っといた。
もしかして気にしてるかな、とずっと思ってて、言うか迷ったけど
「未遂だよ、あんな事あの時初めてだよ」と言ったらハッとして余計泣かれた。
あの時かわいい姪がまだ幼児で良かった。

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