もう5年前くらいの出来事、当時私は高校生だった。
向かいには私よりひとつ下の女の子A子がいる家があって、
家族ぐるみで仲が良かった。
幼い頃から一緒だったし、姉妹みたいなもんだったと思う。
私が中学時代に同級生に苛められた時も、A子は毎日校門の前で
待っててくれて一緒に帰ってくれたり、心が優しくて、
苛められっ子の先輩と一緒にいるなんて恥ずかしいなんて
チラとも考えない子だった。
で、そのA子の父母は、私が小学校の頃から仲が悪くて
A父は絵に描いたようなDV夫だった。
A母はよくうちの裏の庭に逃げてきてて、
ある夏はひまわり花壇の真ん中で血だらけで
号泣してたりしてた。
高校に上がると私は公立校、家が裕福だったA子は
少し遠方の女子校へと通った。
高校は勉強がすごく厳しくて、塾にも通いはじめたので
A子とはあまり会えない日がつづいたある夜、家の前の道からギャー!
と叫び声が聞こえて、出てみるとA母がまた血だらけで走ってて、
その後ろをA父が
「どうしたんだ?落ち着けよー」
と笑いながら追いかけていた。
ものすごく怖くて私は腰を抜かしてたんだけど、
うちの父がA父を殴り飛ばして、
A母をうちに引きずり込んだ。
その後のことは私は詳しく聞かされてないけど、
1週間後くらいにA子が私の高校の校門に立っていた。
「これからお母さんと東京に逃げる」
って言って、制服に登山用のリュックを背負ってた。
「お母さんとの約束で、連絡先は◯ちゃん(私)にも
教えられない。大好きだったよ、お姉ちゃん。」
って言って、校門でぎゅっと抱きしめられた。
小学校くらいまではA子は私をお姉ちゃんって呼んでた。
それから、A子からは連絡もなかったし、私もA子の話はしなかった。
A父はいまだ家の前に住んでる。
今でもA子の名前で時々ぐぐってしまう。
写真は別に取ってて、たまに引っ張りだして見ては泣いてしまう。
どの瞬間が修羅場だったとは言えないけど、
A子にまつわる一連が私にはすごく修羅場だった。
あの時、校門でじっと待ってたA子の姿は一生忘れられないし、
私が死ぬときも思い出すような気がしてる。
なんだか昔のことばかり思い出される。
もっとA子に色々してあげることがあったなとか、
中学の時何であんなにA子優しかったんだろうとか、
小学校の時もA子は大人っぽくて、調子がいい私に合わせてくれて、
先生に怒られて可哀想だったなとか。
この話、はじめて人にしたけど少しだけ心が楽になった。
読んでくれてありがとう。