私にはすごく仲のいいA子がいたんだけど、
ある日唐突にタヒんでしまった。
交通事故に遭って、その時はぴんぴんしてたんだけど、
夜中に急に容体が変わって誰にも
看取られずひっそりと逝ってしまった。
事故に遭ったという報せを聞いて慌てて連絡した時には、
「お見舞いの品は○○のプリンで!」
とか軽口を叩くくらい元気だったのに。
A子は私の2つ上で、放置子だった私を何かと
構ってくれて、面倒見てくれて、実の姉のように思っていた。
これからも二人で行きたい場所やらやりたいことやらたくさんあった。
訃報を聞いた時から、頭の中がずーっとぼんやりして、
自分が泣いてるのか何をしているのかどこにいるのか
わからなくなった。
時計がいつも通り時間を刻んでることや
新聞がいつも通りに届くことが無性に許せなかった。
でも時間が経つにつれ、徐々に普段通りの生活を
送れるようになった。
それでも、日常の些細な場面で「A子はいないのに
私は何をしているんだろう」と考え込んだりした。
ある日、目を覚ますとA子がベッド脇の椅子に座っていた。
これは夢かと思っていると、A子は私に気づいて
「やっと起きた」と泣いていた。
よく見れば、そこは自分の部屋ではなく病室で、
私は病院のベッドで寝ていた。
結果から言うと、事故に遭ったのは私だった。
プリンを欲しがったのも私で、夜中に容体が変わったのも私。
ただ私はタヒんだわけではなく、昏睡状態になっていて、
3日ほどで目を覚ました。
A子がタヒんだのは私の夢の中の話で、
現実のA子はずっと私を心配してくれていた。
A子からすれば私は無事だったし、
私からすればA子が生きていて良かった話なんだけど、
A子がタヒんだときの感情があまりにもリアルすぎて、
たまにどっちが現実かわからなくなる。
あんなに苦しくて辛かったのが夢なら、
A子が生きているこっちだって夢で、
唐突に夢から覚めてまた違う現実が
あるんじゃないかと怖くなる。
カウンセリングにも通ってるけど、
目が覚めた時の足元から現実が崩れ行く
感触が忘れられない。