同僚と付き合っていたある日、彼女が出社していないと連絡があった。「身の潔白を証明できないとあなたが無実の罪をおう事になるんです」

T山…俺、27歳
元子…彼女、25歳

俺と元子は同じ会社で、付き合って約半年位。
ちょっと俺が忙しい時期だったんで、
中々会えなかったけど会社では普通に会えるし、
別におおっぴらにしてた訳でもないが
社内では普通にカップルとして認識されてた。
社内恋愛に関しては全くゆるい会社の上に、
部署も違うし特に気を使われる事もなく、
まあ自分としては満足してた。

そんなある日、元子の部署の課長から連絡があり、
元子が出社してないと聞かされた。
携帯と家の電話に連絡しても出ないし、
メールも返事がないと。
元子は実家住まいなので寝坊という事もありえない。
とりあえず自分もかけてみたけど、やっぱり応答なし。
心配だけど、とりあえず待ってみて帰りに
元子の家に寄ってみると言っておいた。

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そうしたら昼過ぎ、課長から

「元子さん、具合悪くてしばらく休むって親御さんが連絡してきたよ」

と教えられた。

「昨日まで何ともなかったですよね!?」

とすごく驚いて
しかも親が電話よこす位だから相当悪いんだろう、
と居てもたっても居られなくなった。

それと電話を切るときに、
元子の親が「T山さんによろしく」と言っていたらしく、
それまで元子の家にあいさつに行った事が無かったので、
これを機会に一度ちゃんと挨拶しようと思った。
ただこちらからの連絡は出来ない状態であったので、
どうしようかと思いあぐねていたら
俺の携帯に向こうから連絡をしてくれた。

相手は元子の姉。

「元子の事でお話があります。本日のご都合はよろしいですか?」

こちらから元子の病状を聞いても

「お会いした時にお話しします」

としか言ってくれない。
なのでとりあえず会社の前で待ち合わせをして、
向こうが車で迎えに来てくれるという事になった。

上司に事情を話し、定時に上がらせてもらい
会社の前で待っていたら車が来た。
乗っているのは若い男性と女性。
俺は元子の姉とその彼氏か夫か…と思い挨拶をしたが

「突然ですみません。私こういう者です」

と出された名刺には

「○○法律事務所」。

事情が全く分からない俺はパニックだが、
向こうは申し訳なさそうな顔で
「全員がそろいましたらお話を」って感じ。
どうしようもなくてただ従うしかない俺。

着いた所はその法律事務所だった。
結構きれいなビルなのにエレベータが
3人乗れるか乗れないかって位の広さしかないんで
先に俺と男性が乗った。
階段もすっごく狭くて、すれ違うのに苦労しそう。
不便じゃないのか?あれでいいんか?といまだに思う。
社員用は別にあるのかな?
まあどうでもいい話は置いといて。

中に入り、応接室に通されるとそこにはまず弁護士さん、
それから夫婦と20代の男性が居た。
その3人はK島さんと言う方で、
息子さん(K男さん)が代表で話しだした。

内容は驚愕するもので、
K男さんと元子は結婚を前提としたお付き合いをしていて、
様子のおかしい元子を調べた結果、黒も黒真っ黒。
最初は俺と元子両方に制裁を加えてやろうと思ったが、
元子の携帯メールを覗き見ると、
どう考えても俺は被害者であると思ったそうだ。
俺はもうアワアワして何言ったか覚えてない…

「T山さん、大変不躾ですが携帯のメールを見せていただけませんか」

と丁寧に頼まれ、
とっさに「恥ずかしい」と「K男さんに申し訳ない」
と思ってしまって断った。
だが、弁護士さんが

「私からお話します。
身の潔白を証明できないとT山さんが無実の罪をおう事になるんです」

慌てて「どういう事ですか」と聞くと、

元子は前日の夜に浮気の証拠を突きつけられたが
「自分はT山に脅迫されて強姦された」
と主張してるそうだ。

脅迫の内容は元子の仕事のミスを俺が上手くごまかし、
そのごまかしをする為に会社の金を横領、
更に「俺に横領させたのはお前だ。
ばれたら賠償させられて前科がつく。
お前の人生は終わるぞ。嫌なら言う事を聞け」。

賠償額はゆうに数千万で、当然元子に払える金額ではなく
親が払うとしたら家も老後の為の財産も全て無くなってしまう。
K島さんにも迷惑がかかってしまう、
俺はK島家には黙ってくれると言っているし、
結婚もさせてくれると言っていて、
誰にも相談できず、一人思い悩み皆を不幸にする位なら
自分が…と思ったそうだ。

弁護士さんにも

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「T山は元は気の弱い人ですので、
弁護士さんから言ってもらえれば引くはず。
私も嬉しい。でも会社にはどうか内密に」と…

俺は言葉も出なかったが、弁護士さんが
「これが本当の事であれば○○法第何条○○罪、○×法第何条○×罪…」
と言うので泡食って携帯を出した。

顔から火が出る思いだった…
だって下ネタも、バカップルモード全開メールも、ちゅう写真も、
もちょっときわどい写真も全部晒し者だもん。
K男さんだけではなく、K島さんご夫婦にまで。
「あの女は!」「ああ結婚前で良かった本性が見えて!」「何たる事だ!」
って感想もちらほらと。おまけにそれ印刷するって。
何このプレイ…
俺は変態だがさすがにこれは嬉しくない。

俺ずっと頭下げっぱなしだったんだけど、K島さんが
「T山さんは何も悪くないです!」
と頭を上げるように頼まれたが顔を上げられない。
さすがにK男さんも非常に複雑な顔でした…

K島家の調査では明らかに脅迫された
人間の態度や表情ではなく、
元子のメールの事もあったが、元子によると
「脅迫されていて笑顔でいないといけなかった。
喜んだ顔でいないといけなかった。
T山は私を彼女と思いたがっていたのでそうせざるを得なかった」……

俺って何だったんだろ…とすっげー凹んだけど
もっとも強い裏付けが出来たと弁護士さんはニコニコしてた。
多分わざとだろうけど。
でも当然ながらそれで元気付いたり、部屋の空気が軽くなる訳でもなく。
おまけにこれから元子と親が来ると言う。
「T山さんは会わなくてもいいですから♪」
と言われたけど何一つ嬉しくないよもうw

もう何もかもが嫌になってしまったが、
正直付き合って半年ほどの俺と、
4年付き合って結婚を真剣に考えていたK男さんの方が辛い。

4年もの間元子が同僚にK男さんの事を
内緒にしてたのも気になったが、
K男さん曰く、K男さんと元子は一度別れた事があり、
直ぐ復縁したものの、
その時同僚女に妙に口出しや
干渉されてうんざりした事があったそうだ。
なので復縁しても元子は会社では言わない様にしてたらしい。
俺と元子は結構うまくやってたし、
まだ付き合いが短かったから何も言われなかっただけかな。
それとも元子が口止めしてたか…会社公認だったしな。

とうとう男泣きに泣きだしてしまったK男さんと
K島夫婦と話し合ってるうちに
秘書さん?が部屋に来て
「元子さんがいらっしゃいました」と言ってきた。

俺はとりあえず部屋に待機して、
弁護士さんとK島家が別室へ。
一人になって悲しいとか悔しいとかそういう気持ちも
わかずに茫然としてたら
2~30分後、奇声と罵声と泣き声が聞こえてきた。
秘書さんが来て「お気になさらず」と、
落ち着いた様子でコーヒーいれに来てくれたが俺また超動揺w
帰った方がいいかと聞くと、困った顔で
「今お帰りになりましたら、もしかしたら元子さん達と
会ってしまうかもしれません…」
と言われたので座りなおし。

しばらく待っていたら救急車が来た。
秘書さんによると、脅迫暴行を信じ込んでいた
元子親に真実を伝えた所、
元々高血圧の持病のあった元子父が倒れたそうで…

最後に少しK島さん達と話をしたんだけど、
元子は最初脅迫説を切々と語り、
元子親は怒りよりも悲しみで涙にくれ、俺に対して憎しみを語り、
「どうか娘を支えてあげてください」とソファーを降りて土下座したそうだ。
そこに浮気の証拠の数々、俺の携帯も含むを見せると発狂、
その時の声があの奇声罵声泣き声だったみたい。

大分落ちついていた俺は皆に
「大変申し訳ないし、図々しいとは分かった上で言いますが、
せめて私のいない所でやってほしかった」
と言ったら弁護士さんに謝られた。

まさか元子が横領だの強姦だの言い出すとは思わず、
更ににこやかに俺と手を繋いでホテルに入る所や、
車でキスする所の写真を見ても
「元子は被害者だ!」と親が信じるとは思わなかったそうで。

そりゃそうだ。
ま、しょうがないか…と思い、もう元子の事は
犬にかまれたとでも思って忘れようと思ったが
完全に目が逝っちゃってるK男さんの顔を見るのは辛かった。
今でもトラウマ。
何か現実味が無くて、足元ふわふわしてるような感じで家に帰って寝た。

サラリーマンの悲しいサガか、次の日は目覚ましも無く
普通に6時半に起きて、普通に出社。
何かホントに現実味がないんだもん。
体が勝手に動いてた感じで。
会社に着いてしばらくしたら元子の部署が騒がしくなって、
元子が退職した事を聞いた。
当然俺にも色々と聞かれたので
「いや、元子は婚約者に会社の金横領してた俺に
脅迫されて乱暴されたって言ってるんだってさww」
と投げやりに言ったら上司に呼ばれた。

洗いざらいぶちまけたんだけど、会社としては
一応調べないと、って事で自宅謹慎。
その事も連絡よこした弁護士さんに謹慎中に話したが、
罪が晴れれば会社都合で給料も出ると言われており、
「いや、定期代が2日分無駄になっただけですw」と言ったら
「それも請求できますよ」、とw
結果的には慰謝料込みで10万になった。

K島さんによると、K島さん側は結構な金額になったらしく
「憎らしい金です」と言ってた。
会社でも分かってもらえ、「心機一転頑張れよ」とか言われて同情され、
俺もあまり気にしてませんよ、って顔で普通に出社してたが
やっぱり居心地は悪かった。

んで、そんなこんなで1~2ヶ月くらいしてからか、
家に帰ったら玄関前に元子が居た。
しゃがみ込んで泣いていたけど、
俺の顔見たらまた泣きだしたんでどうしたもんか…と悩んでいたら
「変な事になっちゃったね…」って。
いや変ってw全部お前の自業自得じゃねぇかw
「これからどうなるのかな、私」
元子はK男さんと別れ、お父さんも退院してきたそうだが、
入れ替わりに家を追い出されてしまったそうだ。

「今は何とか貯金も少しあるし…でも働きたくてもなかなかいい所なくて…
もしかして私、すっごく下まで堕ちて行かなきゃいけないかな。
体、切り売りして汚い仕事で…」
「でも、そんな事T山さんには関係ないよね。あはっ何言ってるのかな、私。
でも私が悪いんだもん。頑張らなくっちゃ。
ごめん、なんで涙出るんだろ。
頑張らなきゃって決めたのに」
って言いながら、笑顔で涙ポロポロ流し出した。

それ聞いてすっげー寒気したし、どうしようもない位の嫌悪感がわいた。
大体「あはっ」てなんだよ、「あはっ」て。
お前いつの時代の少女漫画のヒロインだよ、みたいなさ。

何かすごく白々しいって言うか、私かわいそうよね?的な
悲劇のヒロインっていうか、自分に酔ってるような、
「あなたの好きな私がこれからどんどん落ちて行くのよ?
親にも婚約者にも捨てられてかわいそうでしょ?
でも無理に明るくふるまおうとしてるのよ?けなげでしょ?
言いたい事分かるでしょ?そっちから言ってよ、ちゃんと察してよ」
って感じがすげー鼻についたんで
(うがちすぎか?でも当時の俺の精神状況では好意的には解釈できず…)
「行くとこないなら俺の家に来るか?」と言ってみた。

そしたら打算的な、やったぜ!って感じで目を輝かせて
「えっ…でも私T山さんにあんな酷い事して…
そんな事お願いできない…」と俯いた。

我ながら性格悪いと思うが、ニコニコしながら
「そうだな、俺もお前の事助けてやる義理もないし、
助けてやりたいとも思わないしな。自業自得だもんな。
俺はたった半年だったけどK島さんはホントかわいそうだよな。
これから夜の店とかで働く事になるのかもしれないけど、
自業自得だな。
ごめんな、俺お前見てもかわいそうとか思えないんだ。
俺に謝る前にK島さんにきっちり謝ってこいよ」って言った。

元子驚いた顔で「ちょっ…何で?」ってポカンとしてこっち見てたんで
「いや、知らんしwお前もう俺とは赤の他人だしw」って笑っといた。
なんか「こうなったのもT山さんだって少しは
責任があるのに!」とかぬかしてたけど、
無視して家に入り、数時間後外を窺ってみたが
おとなしく帰ったらしく居なくなってた

後は何の接触もないし、元子が何してるのかもわからん。
同僚によると携帯もメールも変わっちゃってるってさ。

それにしてもひたすらK男さんがかわいそうだ。
でも俺とは会社公認だったのに、
俺と別れてK男さんと結婚でもしたらすぐばれるし…

ほんと何がしたいのか分からない人だ。
遊びならもっと別口で探すのが普通じゃね?

でも口は異常にうまいしな…
一瞬でかわいそうな私ストーリーを作り上げる事の出来る女だから
その辺うまくごまかす自信あったのかも知らんな。
ばれても別に良いとでも思ったんかな?
とにかく元子にとって俺はその程度の男だったってこった。
もうしばらく女なんていらん!
でも同僚たちが気を使ってか、色々紹介してくれるんで結構揺れるw

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