私が赤ん坊だった頃、涎を垂らして目はギョロギョロ動く男に母が追い回された

私が赤ん坊だった頃の母の修羅場。

私がまだ1歳にならないくらいの頃だそうなので
25年以上昔の話。
梅雨が終わりかけで薄曇り、気温も高くなく、
赤ん坊抱いて軽く散歩するには良さそうな昼下がり。
母は私を抱いてご近所さんにお裾分けか何かをしに行ったその帰り。
家とご近所さんの中間で、それぞれから100メートルちょっとというところに、
田舎の古い住宅街にしては道が広くなるところがあって、
そこに1台の乗用車が停まっていて、

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「すいません、○○ってどっちですか?」

乗用車に乗っていた男性がそんな風に声をかけてきた。
母は男性の聞いてきた地名か施設かなにかがよく聞き取れず、
乗用車に近寄りながら聞き返す。

「○○はどこですか?」

男性はそれを繰り返すものの、
母はその場所に心当たりが無かったので、
近くの交番の場所を説明してあげることにした。
最初はふんふん頷きながら聞いていた男性だったが、
あまりに何度も何度も聞き返してくるので妙に感じた母が
男性の様子を伺うと、先ほどとは様子が違ってきていた。
目は変にぎらぎらしてきているし、
ニコニコしていたのがのっぺり無表情に変わっていて、
そのくせ口元だけ不意にニヤッとしたりする。
直感的に危険を察知した母は、
後は交番で聞いて下さいと話を切り上げて車から離れた。

少し歩いたらもう家だからと
早足で歩いていると後ろからのろのろと車がついてくる。

「○○は?○○は?」

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母の歩く速度に合わせて後ろから声をかけ続ける男性。
ちらりと見やると涎を垂らして目はギョロギョロ動き、
一目で異様がわかるまでに変貌していた。
道幅が狭くなっていたので思い切って母はUターン。
私を抱っこしているので駆け足程度も怖かったそうだが、
今しがた行ったご近所さんの家まで走ろうとした。

後ろで男性が怒鳴っているのが聞こえるけれど、
もはや言葉になっていない。車はバックすらしないで
狭い道のガードレールやら家の壁やらにガリガリ擦りながら
方向転換して母を追ってくる。
(わたしはこの子と一緒に死ぬかもしれない)

母は膝が震えて走れなくなってしまい、
後ろから迫るガリガリ車が擦れる音から
少しでも離れようと必死に歩を進めようとしていたそのとき、

「(母)さん、どうしたねー?」

大きな声で呼ばわれて顔を上げると、
さっきまで話していたご近所のおじさんが
ダッシュで母のもとまで来てくれた。

「○○は?○○~?」

男性が金切り声で叫び続けるのを無視して、
ご近所さんは母をフォローしながら
家まで早足で連れて行ってくれた。

おじさんと母が玄関に入った後も
外から金切り声が聞こえていたそうだが、
おじさんが警察に通報している間にいなくなってしまったそうだ。

その後おじさんから聞いた話によると、
男性はボロボロの車だったので警察にすぐに見つかり、
人的被害は出ずに済んだ。

隣県の麻薬リハビリ施設から退院して
2つ隣の市に住む親に引き取られてきた翌日のことだったらしい。
帰省して妹と怪談話をしていたら、
自分の1番の恐怖体験として母が語った修羅場。

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