「もうアレ無理だしさ、今日中に終わらせちゃいたいんだよね。俺、明日ゴルフだし」 今から思えばアレとは母のこと

小学生の時に母が亡くなった。

病院で意識もなくたくさんのチューブに繋がれている母を
ただ見ていることしかできなかった時、
傍で立ち話をしていた母の担当のお医者様と看護婦さんの会話。

「もうアレ無理だしさ、今日中に終わらせちゃいたいんだよね。
俺、明日ゴルフだし」

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その時は会話の内容がわからなかったけど、
今から思えばアレとは母のことであり、
終わらせるとは生命維持装置を外すことだったとわかります。

その日の内に、父の了承の元に母はチューブを外され天国へ行きました。

毎日人の生と死を見続けていると、
感情が麻痺してしまうのかもしれません。
この経験は私の人生で一番重く、
衝撃的なことでした。

父と私の2人家族になりましたが、
それまでの母の治療費などもあり我が家は本当に貧乏でした。
私は一生懸命勉強して、アルバイトもして
(父には秘密だけれど、水商売をした時期もありました)
一浪してしまいましたが、夢だった医学部に進むことができました。

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思っていたよりもずっと学費がかかり、今まで貯めたバイト代も、
父の汗水垂らして働いた貯金も、全て消えてしまいました。

学部にいる生徒はお金持ちや父も医師、という人が多いです。
親のレベルで先生も態度を変えます。

私は『絶対に医者になる』と決意してはいましたが、
生活の苦しさを考えると父に申し訳なくて
何度もあきらめようかと思った時もありました。

現在、まだ研修医の身分ですが、人の命に関わる毎日です。
治療に口出しをできる立場ではない現在ですが、将来は
患者さんご本人だけではなく、
そのご家族の心も救えるように頑張っていこうと思います。

今日、初めて担当させて頂いた患者さんが亡くなり、
ご家族のお顔を見た時にふと母を思い出しました。

眠れず、何度も母と患者さんの顔を思い浮かべ、
こんな時間になりました。

この先もずっと、今の気持ちを忘れずに、技術や知識だけではなく
患者さんを思う心も成長させていこうと思います。

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