今でも、君と会って話がしたくなります

酒の力を借りて書きます。

妻とは高校のとき、クラスと委員が同じで仲良くなった。
おっちょこちょいだがお喋りで、明るい彼女の話を聞くのが好きだった
徐々に好きになってしまい、自分の気持ちにきづいたころ。
俺が一番仲の良かった友達のKにこう言われた。

「あの子(彼女)から告白されたんだけど、断ったから」

それだけ言っておく、と。
どうしてそれを俺に、と尋ねた。

「見りゃわかるし、お前あの子のこと好きだろ」

ケロッと言われ、呆気(アッケ)にとられた。
彼女への気持ちがバレていたとはいえ、
恥ずかしさでもない、複雑な気持ちになった。

Kとは中高と同じだった。人気者で頭も良かった。
男の俺から見たって魅力のある人間だ。彼女は、
そんなKが好きで告白した。
Kの俺への気遣いに気付いてしまってから、自信のない俺は
彼女を好きになる前の自分に戻ろうと気持ちをおさえた。
自分でも情けなかったが、気づけばそうしていた。

仮に、彼女に勇気を出して気持ちを伝えたとしても、
答えがわかりきっているように思えたから。

それなら、友達のままでいたかった。

社会人になり、まもない頃のこと。

一人の友達から「Kが事故に遭ったことを聞いているか?」
と電話がかかってきた。

頭が真っ白になった。
何とか平常心を保って、
言われるまま通夜の場所と日時をメモした。

聞いた限りでわかったのは
Kが帰宅時に知人のバイクの後ろに乗り、
送ってもらう途中だったこと。

通夜に、高校のとき俺が好きだった彼女が来ていたのもわかっていた。
その日、彼女とは会話はろくにせぬまま。
突然の友達の最期を受け入れられぬまま、皆で見送った。
それから2年近く経とうとしていた夏頃。
車の教習所で彼女に再会した。

教習を終えてからは、電話したり、たまに会っていた。
同窓会の話をしたときのことだった。
俺は卒業後の同窓会は行っていなかった。

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彼女「私ね、高校のときKのこと好きだった。彼女いるからって振られたんだけどね」

俺「うん」

「知ってた?」と聞かれたので
「知ってたよ」と言った。

彼女「同窓会の時、Kも来てたんだ。でもそのとき…」

口を閉ざした後、再び彼女は言った。
Kに「俺とは今でも仲いいのか?」と聞かれたこと。

「最近は忙しいから」と答えると、

「あいつ(俺)ね、高校の時お前のこと(彼女)大好きだったんだよ」と言われたこと。

「冬にも遊んだけど、あいつはまだ好きに違いない」とからかってきたこと。

Kは、俺のことばかり話していたこと。
彼女の話を聞いているうちに、Kのことを思い出してしまい、
目頭が熱くなった。
嗚咽がとまらなくなった。

K、君のことは今でも大切で一番の友達だと思っています。
御節介なところもあったけど、友達思いで。
そこも含めて本当に大好きだった。

でも今思えば君の優しさに甘えていて、
自分は何もしてあげられなかったと後悔しています。
今年、彼女と結婚して10年経ちました。

高校の卒業式、三人で撮った写真は今も大事にしまってあるよ。
君がいなかったら、今の俺はいなくて。
今も妻と一緒にはいないと思います。
支えてくれて、ありがとう。

本当は今でも、君と会って話がしたくなります。

今も昔も弱虫のRより。

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