俺は母親が居なくて彼女は父親が居ない片親同士。
出会いはコンビニのアルバイトだった。
お互い貧乏で生活費を稼ぐのに必死だったけど
たまに食事してブラブラと散歩をするのが癒しだった。
親父が大学在学中に死んだこともあって色々と大変だったけど
大学を卒業して就職してようやくまともな暮らしができるようになった。
ここらでと思って俺から結婚を申し込んだ。でも彼女は母親が心配だし
あなたはいい人だから私なんかより他の人と結婚した方がいいと断られた。
縁が無かったのかと俺も諦めた。
その後何年か経って久々に昔のバイト先のコンビニに寄ったら彼女が働いてた。
彼女のバイト終わりに久々に会った。
どうしたのか聞くと母親が病気に掛かって仕事も母親の看病の為に辞めたと。
俺は困った事あったら言えよ少しばかりは金は工面してやると言って
その場は幾らか渡した。
そしたら彼女は私は乞食じゃない馬鹿にしないでと
この為にあなたと会ったんじゃないと怒った。
互いに貧乏人だからその気持ちは良く解った。
貧乏でどうしようもないけど情けを掛けられるほど落ちぶれちゃいないって
プライドみたいのがあるんだよ。
俺は謝った。
だけどこれは気持ちだから取っといてくれよと言って帰った。
そしたら数ヶ月後に彼女は前に渡した金を返しにきた。
彼女の意地を感じて貰っておいた。
そこからまた付き合うようになった。
彼女は俺に金を出して貰う事に引け目を感じてたようでよく別れ話を切り出してきた。
が俺は彼女にベタ惚れだったので嫌だと断るのが毎度だった。
この女になら浮気されても騙されてもいいと思っていた。
そしてある日彼女の母親が亡くなった。
通夜葬式が終わった後彼女は憔悴したようだったので俺の家に泊めた。
その時に初めて彼女が泣く所を見た。
俺は苦労してきた人間に慰めの言葉なんていらないと思ってただ撫でてた。
そこで俺は一緒に来るかと言った。返事は無かったけどそれ以来ずっと一緒だ。
安月給で籍を入れただけだったが昨日ささやかな結婚式を挙げたよ。
妻に俺についてきて良かったと言われた。
まさか俺が泣くとは思わなんだ。
恥ずかしかった。