夜中に「虫取り網もっていますか?」と訪ねてきた嫁

アパートに住んでたころ
夜にテレビみながら寛いでいたら
インターホンが鳴ったので
出たら上の階の女性が立ってた

「こんばんは。虫取り網…もってますか?」
「網…ですか?」

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俺がはじめて引っ越してきた当初、嫁は女性と住んでた
引越の挨拶でたずねるとその女性が出てくれたんだ
この虫取り網をかりにたずねてきた頃には嫁は一人暮らしになってた
すれ違った時にたまに会釈はしてたが
その夜にはじめて嫁とまともに会話した

俺「網は小さいやつならありますよ。取っ手がほぼないんですが」
嫁「それでじゅうぶんです!かしていただいてもいいですか?」
俺「ちょっと待っててください」

網譲渡

嫁「ありがとうございます!
なるべくお早めにお返しするので
お借りしても大丈夫ですか?」

俺「かまわないですよ、ほとんど使わないんで」

この辺田舎だしたまに変な虫が入ってくるから
てっきりそれかなぁと思った

俺「虫入ってきたんですか?」
嫁「いえ・・・雨戸を閉めようとしたら
転がってきてきちゃったんですコウモリが」
俺「コウモリ?」

部屋に入ってきたコウモリを逃がすためだ
と言って嫁は部屋へ走り去って行った
その翌朝ゴミ捨てに行ったら嫁がいたので
会釈したんだけども
俺の見るなり心なしかしょげた顔してた

俺「昨日いけました?(捕獲)」
嫁「すみません・・・まだお借りしてます」
俺「それは全然いいですよ」
聞いてみると昨晩粘ったものの思うように
外に逃げてくれなかったんだと

俺「というか、あの網のサイズでいけます?結構大きいんですか」
大きいのか小さいのかは初めて見たのでわからないらしい

嫁「たまに旋回し出すし怖くて布団被って寝ましたよw
髪ぼっさぼさです」
俺「ははは、でも大変ですねえ」
嫁「結構むずかしいんですね 衛生的にも気になるし
今日中にはなんとかしたいです」
俺「役に立たないかもしれないですけど、手伝いましょうか?」

って言ったら本当に手伝うことになって嫁宅へ

小学生ぐらいの頃祖父母の家でコウモリを見たことがあった
空が明るいときには逃げませんよね?となって、
手伝いに行ったのは暗くなってからだ
窓は開けっ放し、新たな虫が入ってきてしまうの
で電気をつけたり消したり・・・
サイズは小さかったんだろうけどつばさ広げられたら
網もサイズ的に意味ないしで
紙で誘導したから網はほとんど役に立たずに終わった
20分ぐらいかかりつつその日のうちに誘導して
逃がすことに成功

部屋の隅に突っ立って
「もういなくなりました?」と神妙な顔で
タオルでほっかむり状態にしてる嫁を見たときは
危うく吹きそうになった
嫁が麦茶出してくれたので、
少し落ち着いてから頂いたのち退散

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その日嫁の部屋に欧州のサッカーチームの
ポスターが貼ってあったのが目について
お茶飲んでたときにサッカー好きなんですか?って聞いたんだ
(俺もサッカーをよく観ていた)
その年の冬にはおれの契約してたサッカーチャンネル目当てで
休日に嫁が遊びにくるようになってたし
普通にアパート住民同士親しくしてた

なれそめといっていいのか微妙なところだが
嫁のことを意識するようになったのは食べ物の渡しあいからだ
俺が実家から貰ったヤマイモとリンゴをおすそわけで
渡したりDVDの貸し借りをしたりするたびに
嫁がそのつど切り干し大根やらカジキマグロの煮付けやら
おかずをちょいちょいくれたりしてたんだが、
これが思いのほか美味かった

平日は眉毛半分しかないうえに
ダランとした服着た茶髪頭の嫁が
田舎の婆ちゃんみたいな凝った料理もってくるのは
はじめはビックリもしたんだけどな
完全に胃袋つかまれてた
飯につられたのかと思われても仕方ない
俺も自炊はしてたとはいえ嫁からの差入れは本当にありがたかった

そんな中一緒に映画見に行ったり
食事に行ったり繰り返してたら
だんだんと嫁がOLさんらしい小奇麗な恰好とか
してくるようになったので
俺は気遣わなくていいと言った
(こっちはシャツにジーンズとかそんなん)

「べつに気は遣ってないんだけど、ちょっといいかな」

と切り出されたあと

「お洒落してるのは自分のためなのもあるけど、
俺君が好きだからというのもある」

と告白された
聞けば、コウモリを逃がそうとしてくれていた
姿をみたときから気になっていたとかいうから
それはさすがにないだろうと言ったんだけども
家でサッカーを見せてくれるようになってからも
一緒に見て話をするのが休日で癒しで楽しみだったと

それに家でいつも料理をしているわけではないし
一人で作って食べるのは味気がないから作らないときも多い
作っていたのはほぼ俺のためで何を作って
も美味しそうに食べてくれるから
嬉しくて作り甲斐があったとか

そのあとも家に着くまで思いのたけをぶつけられ続けて
もうこっちも顔真っ赤になったわけだ

嫁としてはそれまでもいろんなところで何度かわかりやすく
アプローチしていたつもりだったと言った
冷静になって考えれば、服装だって会うたびに
向こうなりに精一杯お洒落してきてくれていたのだろうし
すっぴんでアパートうろついてたのに化粧して
遊びにくるようになっていた
俺が空気のよめないやつだったんだと思う

俺「鈍くてごめん。俺も嫁さんのこと好きです。」
俺「一緒にいると楽しいし、飯美味いし、意外に女の子らしいし」
嫁「あの、嬉しいけど・・・その後半の付けたし感」
嫁「でも嬉しいからいいや。ありがとう」
俺「よろしくお願いします」

それからすぐに付き合い始めた
喧嘩しつつ仲直りしつつは繰り返したけど
、結婚話は大きな波乱もなく順調にまとまった

嫁さんは今となれば虫が出るたびに普通に叩き潰すし
部屋の隅でほっかむり状態だった面影もないほど
俺よりたくましくなっているが
素直で温かいし料理上手なところは変わらずだし幸せだなと思う

馴れ初めとしてはそんな感じ
まとまりないけどお付き合いありがとう

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