「私は同居で辛い思いしたから、あんたたちは別に居を構えなさい」
なんて言ってたくせに、毎週末呼びつけては、家事をさせ、
マッチ箱の隅をつつくようなイヤミを言うトメ。
相談しても
「あーわかったよ!みんな俺が悪いんだな!」
と意味不明なキレ方をするエネ夫。
ふんぞり返ってリビングでテレビ見てる、基本空気ウト。
そんな義実家には、末っ子長女のコトメがいる。
結婚式で顔を見た程度だが、
兄貴である旦那にそっくりだった。
ウトの母は女の子に恵まれなかったので、
コトメは蝶よ花よと育てられたらしい。
一族でも待望の女の子を産んだトメはトメで、
コトメ自慢がまぁウザイことウザイこと。
「コトメちゃんは、私が仕込まなくても、
いつの間にか家事をやってたのに…ね~ぇ?(といいながら私をニヤニヤ見る)」
「コトメちゃんは、世界的大企業の役員の妻なのに、
旦那さんに頼りきらないで、しっかり働いてるのに、ねry」
やめたんじゃなくて産休だと何度言えばry
というわけで、ろくに話したこともないコトメのイメージは最悪だった。
そんなコトメが、地元の友人の結婚式に参列するので帰省するとかで、
トメは大張り切りで、身重の私をこき使う。
「私が作ったのじゃないと食べない」
らしい茶碗蒸しの下ごしらえを、なぜか嫁がしていると、
台所にひょっこり顔を出す、顔が旦那の女性が。
コトメだとすぐ分かった。
「おかーさーん、誰かお客さん来てるの?」
台所にいる女性=母と思ったのか、私とトメを間違えるコトメ。
ふっと目が合って、私のお腹と、下ごしらえ中の鶏肉とを見比べて、
見る見るうちにコトメの顔が青くなる。
「ちょっと!○○(トメの名前)さん!」
コトメの声に、のんびり2階から降りてきたトメ。
「ごめんねぇコトメちゃん。茶碗蒸し、私のじゃないと嫌でしょう?
でも、嫁子さんがどうしてもって~」
「言うわけないでしょ?何で身重の義姉さんが、
うちの台所で一人仕事してんの?」
トメ、ここでコトメが自分の味方でないことに気づく。
「え、だ、だって」
「嫁いびりのために、孫も殺せるんだ、すごいね」
うろたえるトメに、トメそっくりの嫌味を冷たく言い放つと、
そのままリビングへ進軍するコトメ。
そこには、のほほんとテレビを見てる旦那とウトが。
「何テレビ見てんだ!このマザコン!
義姉さんに無理させて!誰のせいで義姉さんが苦労してんだ!」
「え?な、なに…」
「誰が義姉さんのお腹大きくしたんだ!答えろ! 」
キレてる口調が旦那そっくりのコトメ。仲裁しようとするウトには
「お父さん、私が嫁ぐとき、旦那君に言ったよね?
『結婚したら、親より妻を優先しろ。妻が君の家族なんだから』
って。目の前に、女房ないがしろにしてる息子がいるんだけど?無視ですか?」
「え、いや、その…」
「ハイかイイエで答えろっ!」
コトメ無双は留まることを知らず、最終的には
「頭冷やして来い!」
とウトメと旦那を追い出してしまった。
静まり返る義実家。
そこでふと我に返ったのか、途端に私にペコペコと謝り始めるコトメ。
両親と兄が無礼をしていたこと、
妊婦さんの前で汚い言葉で怒鳴り散らしたこと
今まで何も気づかず、助けてあげられなかったこと等々。
コトメさんをなだめて、二人で仲良く茶碗蒸し作りを再開。二人で食べた。ウマー。
アドレス交換をする際に、ちょっと恥ずかしそうに
「あの…『ねえさん』って呼んでも良いですか?」
って聞いてきたコトメちゃんが超可愛かった。顔は旦那だけど。
私はそのまま家に送ってもらったけど、その後さらにコトメちゃんは
〆あげたらしく、ジャイアンだった旦那が、
ベンゾウさんみたいになって帰ってきた。
トメさんも、憑き物が落ちたかのようで、後日家に来て
「私も同居で苦労したのにねぇ…本当にごめんなさい」
と、謝罪された。以後関係は良好。
コトメさんには、一生付いていこうと思った。