隣のベッドに記憶喪失のじいさんと毎日付き添いをする奥さんが居た

高校生の頃、入院したときに同室になった老夫婦。

じいさん(旦那さん)のほうが
他県から出張中に脳卒中で倒れ、
俺の地元の大学病院に運び込まれた。
(定年後に農業指導とかをしてたらしい)
意識を回復するまで1ヶ月以上、
奥さんは病院近くのビジネスホテルに泊まって
毎日付き添いをしてたらしい。

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俺が入院したときにはもう旦那さんの意識は
回復していたが、後遺症で軽度のまひと
言語障害と記憶障害(記憶喪失)になってた。
じいさんはいつもふがふが喋っているのだが、
先生も看護婦も良く聞き取れないので
奥さんが通訳していた。
が、旦那さんは奥さんのことが誰だかわからないらしく、
決して名前を呼ぶことはなかった。

そのくせこのじいさん、若い女の子は大好きだった。
看護婦の研修機関になっているからか、
2~3週間ごとに変わる若い看護婦さんのことはすぐ覚えて、
「今日は違う人だね。新しい人?かわいいね」
とか言ってた(これも奥さんの通訳経由)。

じいさんは性格的には気さくな人で、
ふがふが言いながら隣のベッドの俺にも
必死で話しかけようとして、
奥さんが通訳し、俺が返答すると、
奥さんが耳元でゆっくり言いなおす、
ということで会話したりしていた。

そうこうしてるうちに、
俺が2週間ぐらい入院している間にも、
じいさんの言葉は目に見えて回復していった。

ある日の午後、看護婦さんが
誰も部屋にいない時間帯にふとじいさんが
奥さんに向かって

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「あんたは、新しい人(看護婦さん)かね?
ずっと俺のそばにいてくれるようだが…」

と言った。
俺はそれを聞いて

「じいさん、2ヶ月近くも付き添いしてもらっててそれは酷いだろw」

と思ったが、奥さんは

「何を言ってるんですかwやーねぇwwもう40年もお側にいるじゃないですかw」

と言ってニコニコ笑ってた。
奥さんは俺にも「ねえ?ww」と言ってきたが、
俺はなぜか涙がこみ上げてきてうまく答えられなかった。
なんかこんな夫婦になりたいと思った。

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