死後に嫁の携帯を見たら、「二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい」

癌がみつかってから2年半、入院中は毎日会いに行ったし、
通院日は、仕事の昼休み+αもらって、病院へ連れてった。
動けるうちは色々な所へ一緒に行った。
動けなくなりそうでも、ちょっぴり無茶して旅行に行った。
嫁がずっと行きたがっていた場所だ。

悔いが無いと言えば嘘になるが、自分では精一杯やったつもりだ。
嫁の為と言いつつも、結局は自分の為なのかもしれない。
それでも、できることは全部やってやると思って行動してきた。
余命宣告受けた時に、落ち込むだけ落ち込んだけど、
それから精一杯やりっきったんだ。晴れ晴れしい気持ちだったんだ。

そう思ってた。

死後に嫁の携帯を見たら、メモに吉野弘の祝婚歌って詩が入っていた。
抜粋するが、

二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい
完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと
気付いてるほうがいい

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友人の結婚式に送る時にでもメモしておいたのだろうか。
俺は頭をがーんと殴られた気がした。
余命宣告の後、俺は完璧をめざしたつもりで嫁を傷つけてなかっただろうか?
こいつ本当にわかってんのかよと思って、厳しいことも言ってしまったんだ。
それでもあいつは最後まで笑顔で、ふざけて冗談言ったりしてた。
旅行の写真をみても、全部笑顔なんだよ。
まいったよ。すげえ奴だよ。俺なんかよりものすごく良くできた人だよ。

そんな嫁がいなくなって一人になった俺なんてなぁ。と考えたら
ひきこもりたくなってきた。

部屋の模様替えでもして気分を変えようと、
昨日カーテンを買いに行ったんだけど、
店員さんとのやり取り(サイズとか)もすごく苦痛に感じた。

仕事も徐々に再開しなきゃならないけど、
しばらくは他人と話すのも面倒かな。

書き忘れたけど、子供いないので本当に一人になったんだ。
また書きたくなったら来るよ。後追いすることはないから大丈夫だ。

ゆっくりやってくよ。
しかし、会葬御礼、銀行、保険、自動車、携帯、年金、、、、、
やること一杯だ。

不思議な巡り合わせで、妻と死別するという内容の小説に出会ってしまった。
こういうことが起こるから面白い。

始まりは2年半前、妻の手術中待ってる間に読もうかと文庫本を3冊、
前日お見舞い帰りの夜に本屋に寄って、
取り合えず表紙の装丁画を見て気に入った物を適当に選んだ。
当日は結局1冊しか読まず、1冊は後日読み、
残り1冊は全く読まずに自宅の書斎の床にほったらかしにしていた。
実はその本の表紙の画が一番気に入って買ったのだが、
何故かページをめくることはなかった。

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そのまま月日は流れ、妻との別れ。

葬儀、諸々の手続きを終えた約1月後、
ここにいる皆さんならわかると思うが、
妻との思い出の場所へ行きたいと思った。
思い出のかけらを捜すため?もういないということを再確認するため?
いずれにしてもじっとしていられなかった。

いくつもある思い出の場所のうち、とりあえずの近場「海辺の喫茶店」がある。
妻と2〜3回しか行ったことがないが、またいつか一緒に行こうと約束していた場所だ。
ただしその喫茶店は1年程前に火災で全焼、その後どうなったかはわからない。
早速、ネットで検索してみると、
常連の人々の助けもあって気丈に復活したらしい。しかも最近。
そして、その喫茶店をモデルにした小説があるという。
その作者の名前を見てハッとした。見覚えのある名前。
そう、あの時買って読まずにいた小説と同じ作者だった。
ページもめくらずにいたのに、表紙の画と作者名は記憶に鮮明に残ってたらしい。
面白い。
翌日、雨の中3時間車を走らせて喫茶店へ到着した。

その喫茶店に行くのは1年半ぶりぐらいか。確か妻が闘病中にも一緒に1回来たはずだ。
外見はすっかり変わってしまったが、中の狭さ、雰囲気、そしてなにより女主人の、
何もかも包み込んでしまうような佇まいは変わらなかった。
さすがにモデルになったということで、例の喫茶店の小説が5〜6冊置いてあった。
話を聞くと分けてもらえるそうなので、1冊買って帰ることにした。
すると、この作者の先日出たばかりの新刊があるという。しかも夏に映画化されるそうだ。
へぇ、すごいですねぇ。と、女主人が手渡してくれた新刊の文庫本を見て、
俺は今度はドキッとした。

表の帯には
「洋子、君は私と結婚して、本当に幸せだったのだろうかーーー。」
裏返してみると
「亡き妻からの手紙が愚直な男にもたらした人生の奇跡。」妻の死によって孤独を抱えた〜

思わず「おぉ〜」と声が出そうになったがなんとかこらえた。妻と死別した男の話かよ。。。
俺をここに連れてきたのは○○(妻)、おまえだな。心の中でつぶやいた。
喫茶店からの帰り、早速本屋に寄ってその新刊を手に入れた。

こういうことが起こるから面白い。

妻との思い出の場所へ行こうとしたら、そこにまつわる小説があった。
その小説の著者は、以前、妻の手術日に読もうと買った小説の著者と同じだった。
その思い出の場所に行ったら、その著者の新作を知ったのだが、
それが妻と死別した男の話だった。

まあ、それだけのことなんだがね。俺にとっては「何か」を感じてしまう。

あなたへ/森沢明夫
高倉健主演で映画化8/25公開だそうだ。
映画の脚本/青島武を原案に創作された小説ということなので、
映画はちょっとちがうストーリーなのかな?
ちなみに喫茶店の話は、「虹の岬の喫茶店」
これは、アド街ック天国や、とんねるずのきたなシュラン等
でも紹介されたことがある 音楽喫茶岬/千葉県安房郡 をモデルにした小説だ。
なかなか趣のある喫茶店だよ。
ついでに、最初に表紙買いしたのは「海を抱いたビー玉」
くすんだ黄色がかった夏空の下のボンネットバスの画に惹かれて買ってみた。
ちなみにまだこれは読んでいない(笑)
なんだか宣伝臭くなってしまったが仕方あるまい。

しつこいようですまぬが、後日談がある。
昨日、仕事が半日で終わったので午後から例の喫茶店へ行ってきたんだ。
客は俺一人。今年の始めに妻を亡くしたこと、
前回来た時に文庫本を見せられてドキッとしたこと
その日の帰りに早速本を買ったことなんかを話した。

「奥様が亡くなられたのはいつですか?」
「1月の終わりです」俺は命日までは言うつもりはなかったが、更に
「何日ですか?」と訊かれたので、まあ隠す必要も無いかと
「○○日」ですと答えた。
「え?私の誕生日ですよ」
「え?」二人で顔を見合わせた後、俺は笑ってしまった。

更にその後の話で、店主の親類が俺と同じ町に住んでることも判明。
この不思議で面白い縁に俺は大笑いした。
妻へのいい「みやげ話」ができた^^。これからももっと増やしていきたいと思ってる。

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