当時大学生。
その日は部活のメンバーと飲み会があった。
飲み会もお開きになり、俺は仲の良い友人7、8人くらいと駅に向かった。
時間は10時半くらい、人はまばらだった。
切符を買ってホームに行こうとしたとき、エスカレーターの前に立ち止まっている二人がいた。
ホスト風の男(蟹の甲羅のような顔をしている。以下蟹男)と、
ケバイ女(限りなくウンコに近い。以下ウン子)
エスカレーターの前にも関わらず、二人は濃厚なキスを繰り広げていた。
しかも長い。二人の世界に入りきっている。
位置的にエスカレーターを塞ぐ感じになっていて完全に邪魔。
友人の一人、Aがスッと動いた。
キスをしている蟹男とウン子に近寄り、至近距離からガン見。
他のメンバーも無言でAの後ろに一列に並び、全員でガン見。
最初は無視してキスを続けていた蟹男とウン子も、あまりのガン見についにキレた。
蟹男「何やコラ」
A&他「…………」
蟹男「何や文句あんのかオイ!?」
ウン子「てかキモイんやけど!」
A&他「…………」
蟹男「何か言えやゴラァ!!!」
ここで唯一列に並んでなかった俺が動いた。
俺「(Aに近寄り)すみませ~ん」
A「はい?」
俺「このエスカレーターの前で
『道を塞ぎながらキスしまくってる気持ち悪いバカップル』が見れるって聞いたんですけど」
A「はいそうですよ!今ちょうど休憩中みたいです」
俺「ああそうですか。じゃあちょっと待ちましょうかね」
この辺で蟹男キョドりだす。
ウン子は顔真っ赤。更にウンコに近づいた。
周りには既に結構なギャラリーが集まっていた。
携帯を取り出すA。
俺「あ、写メ撮るんですか?じゃあ俺ムービー撮ろ」
携帯を取り出す俺。
そして一斉に携帯を取り出し構えるメンバー。
蟹男プルプルしながら「ナメんなボケェ!」とか叫んだ。
周りで見てたギャラリーから
「世の中ナメとんのはお前らやろが!」
「公共の場で汚いモン見せんな!」
との声が上がる。
もうこれ以上ないほど真っ赤っ赤になった蟹男とウン子は、
人混みを掻き分けて逃げて行った。
Aは何故か一緒になって並んでいた綺麗なお姉さんとハイタッチを交わし、
何事も無かったかのように階段でホームへ向かった。
俺達の
「いや階段で行くんかい!」
というハモリツッコミで、周りのギャラリーからは爆笑と拍手が巻き起こった。
世の中にはそう言う人もおるんやなー