芸能関係の仕事をしていた時に出会った俳優の話し

もう転職しちゃったけど、
私は数年前まで芸能関係の仕事をしていた。
そこで出会った俳優Aの話。

Aは正統派のイケメン。演技も悪くなくて表面上は使いやすい人材だった。
舞台を中心に活躍していて雑誌にも出ていたし、
ファンも一定数いた

ただ、性格に難ありだったのね。とにかく横柄だし、
共演者の悪口も好き放題。権力者には超媚びる典型的な小物。
鮮明に覚えてる嫌がらせは、お酒の席で財布の中身を漁られて、
ビールジョッキに免許証とクレカをいれられたこと。

でもまあ、芸能人と関わっていて、
いちいち傷ついてらんないから、
Aからどんなことをされてもスルーできた。
Aが芸能界を志した理由は某シリーズで主役をやること。

ただ、実はこの主役、公にはされていないけど
オーディションには厳密な年齢制限と芸能事務所との兼ね合いがある。
Aは毎年受けていて、毎回いいところまでいくんだけど、
諸々の事情で最終的には落ちていた。
サブの役すら不幸にも漏れていた。
年齢制限最後の年になったときに、ついにAにチャンスがまわってきた。
最後の2人まで残ったのだ。

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事務所の都合も問題なくて、今回はAが主役をとるだろうとみんな思っていた。
そのとき、私の仕事は奇しくもAがオーディションを受けている
シリーズの担当だった。

で、制作の飲み会のときに、選考委員に言ってやったよ。

「私は何度もAと仕事をしていますけど、Aがいると現場の雰囲気が悪くなりますよ」と。
その後は、淡々と今までAにされたことを説明した。
選考委員はずっと難しい顔をしていた。

結局、Aはオーディションに落ちた。本人は合格したと思っていたから、
抜け殻みたいになってたよ。
マネージャーからも受かったことを前提でスケジュールを組まれていたみたいだし。
当時、私にはキャストの人事権なんて大層なものはなかった。
ただ、人事権がある人間に「個人的に意見をできる立場」ではあった。
今、Aがどんな仕事をしてるか知らないし興味もない。
ただ、Aくん、君の俳優生命はもうおわったんだよ。

デビューしたばかりのときに女の子たちからちやほやされて勘違いしちゃったかな?
もしかしたら私が選考委員に言ったことは、Aが主役に落ちたこととはまったく
関係なかったかもしれない。
でも、周囲の人間に振る舞ってきた言動が、
最終的に役を勝ち取る上で重要なファクターになった例を私は何度も見ている。

上からの評判は悪くなかったんだよね。
彼が下っ端だと認識した人間には酷い行動してたけど。
まさか私が彼の一番やりたかった仕事に関わってたなんて、
その時は思いもしなかったんじゃないかな。
 
でも、それこそ彼が見下してた技術職って、
下っ端がそのまま持ち上がって偉くなるから、
いつか復讐めいたことされるかもって想像できなかったんだろうか。
そこまで頭回んなかったのかねえ。
 

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