親知らずを抜いてが捨てるのがもったいなかったので

つまらない話ですが微グロ注意です

梅雨の頃に親知らずを抜いた。
根っこが深く、苦労して抜いた親知らずなので、捨てるのが勿体無く、
歯ブラシでこびりついた歯茎の肉片を簡単に落として水洗いし、
抜歯後の疼痛が収まったら保存用に処理しようと思って、机に置いてあった。
抜歯した次の日に弟が交通事故で亡くなった。
弔いはなんとか痛み止めで乗りきり、(といってもあまりのことに痛みは忘れていたけど)
机の上に置きっぱなしの親知らずのことを思い出したのは、初七日を過ぎてからだった。

スポンサーリンク

とにかくアルコールに漬けないと、表面が乾燥して割れてしまうと思い、
抜くため半分に割ったまま机に伏せてあった歯を、何気なくつまんで持ち上げたら、
小指の爪の先ほどの大きさの、赤い細長いぶよぶよ太った虫が、ボトリと落ちた。

歯の中には神経が通っていて、神経とは「歯」ではなくて「肉」に属するものなので、
弔いの間に、机上に置いた私の歯の、細すぎて洗い落としきれないまま残っていた肉の部分に、
ハエか何かが卵を産みつけ、それが孵化して、私の肉の残骸を食べて成長していたらしい。

スポンサーリンク

歯髄の空洞を虫眼鏡で覗いたら、肉片など全く見えないほど綺麗に食い尽くされていて、
縫い針でもつつききれないぐらいの細い細い穴の表面は、真珠色につやつや光っていた。

その後、数ヶ月ごとに間をあけて、全部の親知らずを抜き、
ネットで調べた方法で(酢を使ったりなどして)できるだけ丁寧に洗浄してみたけど、
赤い虫に食べられた最初の親知らずよりは綺麗に処理しきれず、細かい汚れがどうしても残ってしまった。

自分の肉の一部分だったものを虫に食べられてしまったということが凄く恥ずかしいことに思えて、
その割には虫に食べてもらって化石みたいに綺麗になった歯を後生大事に持ってるのも我ながら悪趣味だし、
また、弟の四十九日も済んでないのに殺生をしてしまったのも忌まわしい気がして、
過ぎてみればどうでもよいつまらない話だけど、人には話せずにいます

スポンサーリンク