世の中には生きていてもしょうがない奴がいるんだなと思った

ある日、中学の時の同級生から電話があった。

『一昨日Tが交通事故で死んだけど、一緒に葬式に行かないか』

中学を卒業して五年。
俺と友人は地元の大学に通っていたので時々会っていたが、
Tのことは一度も話題にならなかった。

「確かに同じクラスだったけど、あいつとは口きいたことほとんどない。
ていうか、誰って感じだよ」

俺はTが死んだと聞いても何も感じなかったし、
友人もそうだろうと思った。

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『あいつ影が薄いっていうか、地味な奴だったからなあ。
 高校中退してニートやってたみたいだから、全然友達がいないらしいんだ。
 そんで、Tの母親が俺の親に、親戚の手前みっともないから、
友人として葬式に来てくれとか頼んできてさ。
 香典は向こうで出すそうだし、ちょっとバイトだと思って行こうぜ』

「Tが死んで家族もせいせいしているのか、面白そうだな、ちょっと行ってみようか」

そんなノリで葬式に参加すると、祭儀場で晩飯を振舞われた。
俺と友人が寿司をつまんでいると、Tの親の知人が話しかけてきた。

「君らはT君の友人か?」
「友人というか、同級生でした」

俺がそう答えると、

「じゃあ最近のTのことはしらないんだ」

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とオッサンが言った。

「何年も一人で部屋に籠もってたらしいが、
親が注意するとバットを振り回して大変だったんだ」

俺はTがヘタレでいつもビクビクしていたことを思い出し、
意外な気がした。

「信じられないっすね。中学の頃は大人しくて、
ケンカとか一度もしたことなかったっすよ」

友人がオッサンに言うと、

「家族が寝てる最中にバットで襲ったらしい。
 親父さんは意識不明で病院に運ばれて、大変だったんだ」

俺らはそれっきり黙りこんだが、親を殴り殺そうとしたTにびびった。

「どうして引きこもりのTが事故にあったんですか?」

友人が興味深そうにオッサンに尋ねると、

「それを知りたくて君らに話しかけたんだけどね」と言われた。

結局、引きこもりのTがなぜ外出したのか謎だったが、
「まっ、どうでもいいか」という感じだった。
その時、世の中には生きていてもしょうがない奴がいるんだなと思った。
2ちゃんもそういう奴がいっぱいいる感じだが、多分原因不明で謎の死を遂げるような気がする。

 

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