幼馴染の女の子が、「相談がある」ともちかけてきた。どうしたのかと 聞くと、「気持ちが知りたい」

俺が高校生の時の話。

幼馴染の女の子が、「相談がある」ともちかけてきた。
改まってそんな話する間柄でもなく、どうしたのかと
聞くと、「気持ちが知りたい」とか「どう思ってるのか
知りたい」とか。

ああこれが恋の悩み相談てやつか、としみじみ思い、
彼女の付き添いって形でその相手のいるとこへ向かった。

「ここなんだけど」
着いたところはただの道路脇。
誰もいねーじゃん、と半笑いで彼女に聞くと

「いるよ?○○君には見えないかもしれないけど」

ま  た  か  !

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中学時代に、妙な心霊体験に付き合わされて以来、
しばらくそっち系の話なんてしてなかった(意識的に
避けてた)から、油断していた。
ノコノコついてきたことを後悔しつつ、恐る恐る
「じゃあ、気持ちが知りたいって・・・?」

「ああ、この人?の気持ちが知りたいの。なんでココに
ずっといるのかな、って。」

じゃあ俺じゃなくてもいいじゃん。

そう言い掛けると、彼女はにぃっと笑って
「ほら、○○君は『聞こえる人』じゃん?私、『見える人』だけど
聞こえないの。」

つまり俺にその見えない相手の声を聞いてくれということですかそうですか。
しかも俺が「聞こえる人」だと決め付けている。何を根拠に。

何もない空間をぼんやり見つめながら「その人ってどんなカッコ?」
と彼女に聞いてみた。

「うーん。言わないほうがいいかな」聞くんじゃなかった。

「一言で言うとね、カタチとして、ありえない。」どんなだよ!

「人の身体のパーツがめちゃくちゃについてる感じかな」あああ・・・

「だいたいこの辺にいるから、何か言ってるかどうか、聞いてみて」

嫌だ!とは言えない男子高校生。はいはいわかりましたよ。

彼女が指し示すあたりに(嫌々ながら)近づく。
特に何も聞こえない。見えないし聞こえない。

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「悪いけど、なんもきこえねーwだって俺、聞こえる人とかじゃねーしww」
そういうと彼女は残念そうに
「そーかぁ、○○君ならイケると思ったんだけど・・・かえろっか」
「帰るべ、どっか寄ってく・・・・・・ぅ!?」

ふと、視線をさっきの道路脇に移した途端、凄まじい寒気と、全身の感覚が
研ぎ澄まされたような、針でつつかれたような、痛みにも似た感覚が走った。

何かいる。さっき彼女から聞いたそのものがいる。
人だった、ということが辛うじてわかる程度に、パーツは確かについているが
どこが顔で、どこが胴体で、どこが四肢で、なんてわからない。
人の残骸、とでも言えばいいのか、とにかくそいつがふらふらと動いている。

「○○君、見えちゃった?もしかして」彼女が驚いたような、嬉しそうな顔で
俺を見る。それに答える余裕もなく、俺はただそいつを見ていた。

いや、正確には、俺が見られていた。そいつの「目」が、俺をはっきりと
視界に捉えたのがわかった。だんだんと、そいつの目は俺の足元から上へ上へ
目線を上げてくる。目を逸らしたいが、俺は固まってしまったかのように
身動きひとつ取れずにいた。

そして、とうとうそいつと目が合ってしまった。高速で震えてブレている感じで
ぼんやりと見えるそいつの目。濁っているのか、空洞なのか、黒目だけなのか。
とにかく真っ黒だった。ただ、目が合った、という感覚が確かにあった。

その瞬間、そいつの「声」が脳に飛び込んできた。

「見るな。殺すぞ」

声が聞こえてすぐ、そいつは消えた。俺はその場にへたり込む。

「いなくなっちゃったね。あいつ、何か言ってた?聞いたんでしょ?あいつの声」
彼女が嬉々として俺に聞いてくる。

「見るな。殺すぞ。だってさ・・・」呆然としながら呟く俺に、彼女は笑って、

「あ、でもいなくなっちゃったから、これはただの警告だね。そっか、見られなくないのか、あいつ。」

こっちは睨まれて、目が合って、大変だったんだぞ。彼女に愚痴ると、彼女は
急に真面目な顔をして言った。

「あいつ、目なんかついてたっけ?」

え。見えてなかったんですか。驚く俺を横目に彼女はため息をつきながら

「○○君には見えたのに、私には見えなかった。なんか嫌だなぁ。私、負けてるなぁ。」

こんな調子で、彼女に付き合わされる機会が徐々に多くなっていく俺だった。

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