あぁ、あの時助けてくれたのはお婆ちゃんだったんだ

母が幼い頃に体験した、ちょっと不思議な話。

母(70代)は東北の田舎の集落の出身で、
母が幼い頃はまだ各家に電話がなく、
母実家はそこそこ裕福だったため、
村で唯一の電話がある家だった。
だから、誰某さんに電話があると、
父親に言われて誰某さんを呼びにいくのが、
子供たちの役目だった。

ある日、夜遅くに電話があり、
少し離れたところに住む医師を呼びにいくよう
母が言い付かった。
当時はまだ街灯もほとんど無く、
母は提灯片手に医師を呼びに行った。
普段知っている道のはずなのに、
気付いたら墓場に迷い込んでいた。

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当時の墓場は今のように立派な墓石のあるものだけじゃなく、
貧乏な家では単に土を盛り、そこに石を置いて目印にする程度のものもあり、
うっかり焦った母は、そういう墓に足をとられて転んでしまった。
立ち上がろうとしても、足首が重くて立ち上がれない。
提灯を近づけてみたら、土の柔らかい部分からにょっきり白い手がでていて、
自分の足首を掴んでいた。
パニックを起こし思わず提灯を放り投げ、必死で立ち上がろうとしても、
手ががっしり足首をつかんで離してくれない。

泣き喚いていると、向こうのほうから一人の老女がやってきて、
「どうしたの?大丈夫?」と優しい声をかけてくれた。
「足が…手が…」と説明しようとすると、
自分を掴んでいた手首がするっと消えて、土に穴も残ってなかった。
「もう大丈夫」といって、その女性は抱き起こしてくれて、
泣きじゃくる母を連れて、そのまま医師の家の近くまで一緒にいってくれた。
医師の家の灯りが見える場所で、「それじゃあ私はもう行くから」と、
そのまま帰ってしまった。
薄灯りのなかだったので、
かなり年老いた女性であることと、
左手に酷い火傷の痕があることしかわからなかった。

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この後、母は人を通じてこの老女を探してもらったけれど、
該当する女性は村にはおらず、
もしかしたら自分の守護霊だったのかも?と思い込むようになった。

今から20年ほど前、祖母が危篤という知らせを受けて叔父の家にいった。
祖母は60過ぎてから祖父と離婚して、
同じように妻と子に逃げられて一人になった叔父の元へ身を寄せて生活をしていた。
うちで一時同居していた時期もあったけれど、
子供が3人もおり迷惑はかけられないと、
叔父のところへいったというのもあって、
なかなか顔を見ることができず、この時祖母と母が顔をあわせたのは5年ぶりだった。
既に意識もほとんど無く痩せ細った祖母をみて、
母はその腕をそっと握り締めたとき、
ふと以前にはなかった火傷の痕に気付いた。
叔父に聞いてみたところ、2年ほど前に火傷をしてしまい、
痕が残ってしまったということらしい。
それを見て「あぁ、あの時助けてくれたのはお婆ちゃんだったんだ」と、
妙に納得してしまったとか。

この祖母は少し不思議な力があって、
幽霊を見るとかそういうのではないのだけど、
例えば、私が小さい頃に遊びにいったら、
顔をみるなりある眼病の祈祷で有名なお寺に行こうと言い出した。
その後、私に毎年のようにそのお寺のお守りを送ってくれた。
残念ながら、祖母が存命のうちに目に何か問題をもつことはなかったんだけど、
10年ほど前に左目に違和感を感じ、病院にいって手術をうけ、その後2度の手術を受けた。
今も左目は物が歪んで見えるし、低くなった視力は一生治らないと医者に言われている。
(見えないわけじゃないんだけど)
また、弟を連れて行ったときは、一目見て「この子は絶対海に近づけちゃいかん」と言った。
ただ父方が漁師で、海に行かないなんてわけにもいかないし、年寄りの戯言と思っていたら、
実際弟は海の事故で死亡した。

婆ちゃんに何が見えるのか?と聞いてみたら、
「何も見えない。ただたまにわかるんだ」と答えた。
何がわかるのか?と聞いたら、困ったように、
「おにぎりを見た時に、『これはおにぎりだ』
とわかるようなものだからねぇ…」と答えた。

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