高校時代に母親が浮気した

高校時代に母親が浮気した
日曜日部活から帰宅すると
見知らぬ男と母とテーブルを挟んで座る父に
謝りながらも結婚したいから別れてくれと訴えていた
俺はその光景を見てしばし呆然としたが、
その男に殴りかかると父に止められた
男も母も俺に向かって土下座をしだしそのまま帰っていった
寡黙な父は「もう母ちゃんはいない、すまんな」
と一言言ったきり何も言わなかった
俺は泣いた

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俺は部屋に閉じこもったが夜になり今のテーブルの上に
男が置いていった名刺があった
俺はそれを握り締めて親友の家に行った
親友の家には俺たちの兄貴分でもある先輩もいて俺の話を聞いてくれた
先輩は、それでお前はどうしたいんだ?と聞いてきた
俺は、あいつらぶっ殺したい、と言った
先輩は、殺すのはいかんけどお前なりのケリはつけなきゃいかんよな
と言ってくれた
先輩の家も母親が浮気をして逃げていたせいか俺の話を朝まで聞いてくれた

翌朝、俺と親友と先輩は三人で名刺に書いてある会社に乗り込んだ
地方都市だが一等地にあるビル1棟を持ってる立派な会社だった
乗り込んだ俺たちは浮気したババアと浮気野郎を出せ!!と喚き散らした
すぐに警備員に取り押さえられ警察も来た
俺たちはビルの詰所に連れて行かれ事情を聞かれていると
男の上司とやらが浮気男を連れて事情を聞きに来た

男の顔を見てブチギレる俺を止める先輩たちと
土下座する浮気男で詰所はカオスだったと思う
落ち着いた俺に浮気男の上司が話しかけてきた
うちの社員が申し訳ないことをした、君はどうしたい?と
俺は即座に、そいつと母を殺したい!と叫んだ
悲しそうな顔をしたその上司は俺に
君のような将来ある子に殺人はさせることはできない
君のような子をこういう行為には知らせてしまった社員をおいていることを
私は君にお詫びする、できる限りのことはするから信じて欲しい、と言った
そして浮気男には
君の軽率な行為が一つの家庭を壊し、前途ある若者の将来も壊そうとしている
この状況を見てどう思うんだ?みたいなことを言った

後に知ったがその上司はその会社の支店長さんだったそうだ
そしてその人が警察に事情を説明してくれて俺たちは無罪放免となった
そして帰りにやけを起こして何かあったらいけないと
俺たちを社用車でそれぞれ家に送り返してくれた
そしてその夜、その連絡が行ったであろう父親にボコボコに殴られた
俺は納得が行かずに殴り返そうとしたら父が泣きながら俺を殴ってるのに気づいて
俺は父に泣いて謝った

お互いが落ち着くと父は俺に説明し始めた
悪いのはバツイチ独身と嘘をついて男を騙した母であって
あの男は母の被害者でもある、だからお前も許してやれ、とのことだった
もちろん俺は納得できなかったけれど、父のこの時の悲しそうな顔を見て
それ以上何も言わないしやらないことにした

それからしばらくして学校から家に帰ると母がいた
すっかりやつれた見た目になっていたが俺は構わず罵倒した
シネだのバイタだのさんざん言ったと思う
母は笑っていた、そしてカバンから包丁を取り出して俺に切りかかってきた
俺は抵抗したが手と腕と肩に軽くはない傷を受けた
苦し紛れの蹴りが母に入り吹っ飛ぶと
急に母は逃げ出した
俺は父に連絡をした
憎くても警察に電話してはいけないという一心だった
だが、電話で父は俺にこう怒鳴った
バカ野郎、すぐに救急車を呼べ!今から俺もすぐに帰る
父が俺を心配してると感じて電話口で泣いて救急車を呼んだ

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父が呼んだのか、病院が呼んだのか手当が終わると警察に事情を聞かれた
となりでは父が全て正直に話せ、と優しく諭してくれた
みっともないが俺は父がいる安心感で泣きながら警察に全て話した
話が終わると俺を事情聴取していた警官が
辛いことをすまなかった、でも君のお母さんはさっき自首してきたそうだ
お母さんも悪いと感じているんだ、お母さんを恨んではいけない
というようなことを言われた

父と相談して俺は被害届は出さなかった
警察も家族喧嘩と処理すると言ってくれて母親は牢屋に入ることにはならなかった
その数日後に浮気した男があの上司と改めて謝罪に来た
上司は男を首にしますか?と聞いてきたが俺と父はもうどうでもいい、と答えた
浮気男と上司は、寛大なお心に感謝します、と言い
男は泣いて土下座していた
上司は、いくら寛大に許していただけても会社としてはそうはいかない
部署を移動して死ぬ気で働いてお詫びしなさい
と金の入ってるであろう包を父に渡した
おそらく数百万は入ってたと思う
父は断ったが、その上司がなんとしてでも受け取ってくれ、と父は押し切られた
浮気男が働いて会社に返すということだったので父も受け取った

それから数ヵ月、俺は大学に合格した
父とささやかな食事会をした、個室の料理屋だった
食事が進み半分位出た時だっただろうか、やおら父がスマンと俺に謝った
そして戸が開くと母が入ってきた
母はやせ細っていて泣いていた
そんな母を見たら俺は食べたものを吐いてしまった
母は泣いてごめんなさいごめんなさいと喚きながら逃げてしまった
食事会はそこで終了し、家に帰ると父は再度俺に謝り倒した
騙すようなことをしてすまない、どうしてもアレがお前に一言謝りたいと
言ってきたから良かれと思ってやったがお前を苦しめた、と

それから数年後、母方の祖母から母が死んだと連絡があった
俺は悲しくなかった、でもこれでやっと終わったと思った
そして父と飲みに行った、父はやはり泣いていた
祖母からは娘がひどいことをしたという詫び状と、葬儀への出席は
やめてくれていう旨の手紙が来た
その後俺も結婚し、子供も出来た
そして3年前に父が死んだ
最後まで痛いと一言も言わずに末期ガンだった
強い男だった

父の遺品を整理していて、父のネクタイを入れている箱の中に
俺へ、と書かれた箱が入っていた
そこにはあの時浮気男から受け取ったであろう金が入った通帳と
俺への手紙、そしてもう一通の通帳と母からの手紙が入っていた
父の手紙には、俺は母を許すことができなかった、お前にとっても母がいたほうがよかっただろう
情けない父親ですまない、というようなことが書いてあり
通帳は母から振り込まれ続けていたものであり、母が死ぬ間際に
お前に送ってきた手紙も入れておくとのことだった

母からの手紙は懺悔の手紙だった
父と俺、そして一人の若い男の人生を狂わせてしまってすまない、と
だが、その手紙の最後に、浮気男に申し訳ないと伝えてくれと書かれていて
俺は怒りを感じてその手紙を燃やした
もう死んでしまったが最後まで浮気男を気にし、それを
俺に投げてくるその精神が信じられなかった
後日聞いた話だが母は狂っていたらしい

もうすぐ父の命日がやって来る
手に残る傷をみてつい思い出したので長々と書いてしまった
親友たちはこのことを知っているが、大学以降知り合った人にはこの話はしていない
でも何故か吐き出したくなったので長々と書いてしまった
縁もゆかりもない皆さんに不快な思いをさせて申し訳ないと思う
でも、浮気はやめておいたほうがいい
一時の気の迷いが家庭も本人も他人すらにも一生消えない傷を作る

親がいなくても立派な人間はたくさんいる
物心つくまで両親が揃っていたが
俺は母親を許せない心がカタワな人間になってしまった
せめて子供たちは真っ当に育てたいとおもってる
それでは失礼

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