黒い黒い黒い私の今の心。
夫は昔から女を一段下に見てると言うか、
女房の言うことなんて~って感じの人だった。
でも借金と女にだけは手を出さない
生真面目なところもあったから、
なんとかここまでこれた。
その夫、よくティッシュに痰を吐いて
そのまま丸めてテーブルに置いてたりするのが嫌で嫌で
何度も何度もゴミ箱に捨てて!って言ってもその時だけで、
また同じことしてた。
見つけるたびに注意するんだけど、
注意した時に機嫌が悪かったりすると怒鳴り返されたりする。
で、ある時、そのティッシュがフワッと広がってて
中の痰が見えてたんだけど、
なんか褐色のものが混じってた。
汚いけどよく見たら多分間違いない。
それで夫に見せて
「こんなの混じってるってヤバくない?
病院行った方がいいよ」
って言ったのね。
そしたら「煙草の吸い過ぎで喉がきれたんだよ」
って言ってのんびりしてる。
「だったら煙草止めなさいよ。身体に良いわけないんだし」
って言っても「うるさい」って。
こうなるともう、何を言っても聞かない人だから
気になりながらもその時は黙ったんだ。
でも頭の隅でずっと気になって、
そういえば最近風邪でもなさそうなのに変に咳してるし
なんか嫌な予感がして
その後病院行ってこいって何度も勧めたの。
怒鳴られても怒鳴られても。
夫の会社は毎年11月~12月あたりに健診があるんだけど、
前回(一昨年)はなんともなくて、
褐色の痰が出たのは翌年の夏頃。
夫は自分ではあまり自覚症状的なものが無いらしく、
次の健診で十分だって言い
もうどうなっても知らないからね!って言って、
それ以降は本当に放っておいた。
そしたら暮れの健診、
結果が出たのは今年に入ってすぐだけど、要精検とでた。
大学病院に連れて行ってあれこれ検査してる間、
「俺大丈夫だよな?大丈夫だよな?」
ってぶるぶる震えてんの。
結果、まだ40代、ものすごく進行が早いらしくて
終末期の肺がんだって。
夏の時点で検査受けてたらどうだったかは分からないけど、
今よりは望みはあったはず。
震えてる夫を見て、
ものすごく冷ややかな自分の心に驚いている。
夫がしぬかもしれない、いや近々しぬ・・・
でもちっともショックじゃないんだ。
それみたことか、って思ってしまった。
そして頭の中で、夫がしんだあとの生活、
娘を大学に行くまでの費用はどうしよう、
家のローンはチャラになるし、
生命保険は確かこれぐらい出るはず、・・・なんとかなるか。
そんなことばかり考えてる。
もっと恐ろしいことに、
今の私は夫がしんだあとの生活を楽しみにしてる。
やっとあの男尊女卑野郎から解放される。
離婚せずに我慢して良かったって。
なにも言ってないよ。
さすがに余命宣告されてる夫相手に
「だから言ったでしょう」みたいなことは言えないし。
心の中では思っててもね。