健康診断で白血病が見つかった「しぬから離婚しよう」

8年前、当時20歳の大学生だった妻と結婚した。俺は当時28歳。
普通に卒業してから、と思っていたが、
妻はちょっとばかり苦労人で保護者的な人とうまくいっておらず
「早くうちとけた気持ちになれる家族が欲しい」という希望だったので。

1年たって、会社の健康診断→精密検査で、
俺が白血病の一種にかかっていることが発覚した。
かなり衝撃をうけたが、悩んだ後で妻に正直に打ち明けた。
場合によっては離婚も視野にいれていた。

「絶対、(離婚は)いやです。結婚して大学で珍しがられてるのに、
そのうえあっと言う間の離婚なんてできません」

「しかし、俺と一緒にいてもこの先の長期的な展望は描けんのだけど?」

「○○さん(=俺)・・・・・死ぬんですか?」

「すぐには死なんw 薬で抑えて、一応普通の生活はできるし、薬で治った例もある」

「ならいいじゃないですか」

「よくはない。悪化する可能性だって同じくらいあるそうだ。先は全然分からない」

「可能性で別れる話はしないで下さいよ・・・わたしをキズモノにしたくせにw」

なんだか、妻には余裕があるように見えた。

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俺の白血球は異常な数値で高め安定し、
たまに倦怠感や眩暈はしたが、体重が増えたり
病人とは自分でも思えない良好な体調を維持した。
その間に妻は卒業して、OLになっていた。

4年間が過ぎて、俺の白血球がまた増え始めた。
洒落にならない数値を叩き出し始めた。
もう一度、妻と話をした。
「これで、赤血球や血小板の数値が崩れ始めたら、それなりの覚悟がいる」
「また、別れようとか言い出しませんよね?」
「いや、この際、きみには頼ることにする。しかし、申し訳ないな・・・」
結局、「2人で前向きな人生をおくれるよう考えてみよう」という、
恐ろしく健全な結論がでた。

妻の提案で、自然環境のいい田舎に引っ越すことにした。
「転地療養ですよ」
「いや、結核とか脊椎カリエスじゃないんだからさw」
「脊椎カリエスってどこかで読みました・・・誰でしたっけ?」
「志賀直哉。それくらいすぐ思い出せw」
馬鹿な会話をして笑った。

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俺は「田舎に引っ越してそれでどうなる?」と思っていたが、
妻は東京での会社勤めが
俺の身体に負担を強いていると考えている節があって、
積極的にことを進めた。
血液内科のあるそれなりに大きな病院の近くの田舎町を見つけた。
夫婦で住むには広すぎるそこそこ綺麗な一軒家を購入できるらしかった(中古だが)。
物件は東京の感覚からするとひどく安いのだが、
当地では高価なのだそうだ。

仕事をあたってみると、なんと俺の収入は3分の1に、
妻の収入は3分の2に激減することがわかったw
これにはびびって、俺は引越に大反対したが、話し合いの結果、
それでも並みの暮らしはできるし貯金もできると
妻に言い負かされ、さらに「自分の身体を大切に考えないのか」と追い討ちされて、
しぶしぶ転職に同意した。

それまでの仕事を辞めて田舎に引っ込むのは正直、無念だった。
忙しかったが、別に命を削って仕事をしているほどではなかったし。
「そんなに収入が減ったら、貧乏臭い生活になるかなあ」と思った。
体力的にも時間的にも余裕ができる仕事になるのは確かだったけれど。
俺の体調が安定するのを見計らって、ついに都落ちした。

で、今現在。
こうして俺は(自分の感覚では)元気で暮らしている。
年に1回くらい、お医者さんの顔が曇るけれど
「今すぐは死なない。この先は予断を許さない」という状況は変わらない。
たまに突然、死ぬことへの恐怖と不安で夜中に叫びだしたくなったりして困るがw、
普段は病気のことは忘れている。
むしろ、毎日欠かさず俺の体調を確認する妻の気苦労を考えると、
そっちの方が気が重い。
妻が服もろくに買わないで、いざという時のために
貯金にまわしているのも面目なくて気が重い。
金はそこそこあるんだぞ!とたまに叫びたくなる。(が、八つ当たりなので言わない)。
近所に友人もできたし、最初の予定より収入はあるし、
病気さえなければ快適に暮らせるのに。

都会が便利で懐かしい、とはさすがにもう思わなくなった。
最初、俺は田舎へ引っ越したのが面白くなくて、
友人に過剰なくらい「田舎の自然の素晴らしさ」をネットや手紙で宣伝した。
真に受けた連中が彼氏・彼女や配偶者を連れて何人も遊びに来た。
中には子供の昆虫採集や釣りのために何回もやってくるリピーターもできた。
ひどいのになると、「自然の中で遊ばせてやってくれ」と、
東京から小学生の息子1人だけで飛行機に乗せて送りつけてくる
友人までいて、そういう厚かましいのは大抵、
妻の友人ではなく俺の友人だったりするw
今年も2組、予約がはいっていて、
妻は「夏休みはにぎやかになりますね」と笑っている。

妻はあいかわらず俺に敬語をつかっていて、
やめろといってもなぜか意地を張ってやめない。
引っ越した当時は、植物図鑑を持って
田舎道を夫婦で散歩するのが楽しみだったが、
最近では鳥に興味を覚えたらしく
「庭にキツツキがきました!」とか「フクロウが鳴いてます!」とか、報告をしてくる。
バードウォッチング用の双眼鏡くらい買おうよ、
と水を向けると嬉しそうにネットで検索していた。

結局のところ、もしも妻の卒業まで結婚を待っていたら、
俺の病気が先に発覚したわけで、そうなったら
はたしてどうだったろうかとも考える。
8歳年下の妻に支えられる夫というのはけっこう情けないけれど、
とにかく今のうちに仕事だけはしっかりして
せめて経済面だけでも、妻の不安を取り除いてやるしかない。

まとまらないけれど、さっき、
ちょっと恐怖で胸を締め付けられる思いがしたので、
落ち着く目的もあって思い出を書いてみた。
もし、暗い印象を与えたらすまん。
実は、普段の俺はいい年してけっこう明るくて、
B級パニック映画と魚釣りが好きな
外見だけはけっこう若いつもりの田舎のおっさんだ。
田舎のおっさんになってしまったのは無念でもあるが、
家庭菜園と釣りを覚えたおかげで食卓はけっこう豪華だし
悪いことばかりではない。

その節は妻を褒めてくれたり励ましの
レスつけてもらったのに何の反応もしなくて申し訳なかった。
体調は非常にいい。これだけ体調がいいと
もう死ぬ死ぬ詐欺に近いね、実際。
8月は医者も機嫌がよくて、
俺の病状じゃなくて釣りの話しかしなかった。
白血球値は17000だから正常値の倍近いが慣れるとこれくらいじゃ誰も驚かなくなるw
白血球の中身のバランスに問題ありだが、
少なくとも出ちゃいけない細胞は今のところ消えたまま。

それでまあ、追加で書くんだが。
夫婦で長いこと顔をそむけてきた問題に向かい合いましょうということになった。
子供作ることにした。

今までは本意ではないけど避妊してた。
そりゃやっぱり、俺としては悪い可能性考えるから。
いざという時は子供いない方が身軽だろうとか何とか。
でも妻がリスク承知で一緒に頑張りましょうよと言うのに「嫌だよ」とは言えないし。
よくよく考えて言い出したことには違いないから、
それならば冒険だけど俺もめったなことはあるまいから
頑張ってみようという結論になった。
毎年遊びに来る友人の子供見てうらやましかったんだろうなと
またしても引け目を感じた。

まあ頑張るよ。なんとかなるだろう。

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