母親が台湾に旅行に行って帰ってきたら暗い顔してんの。「財布落とした」

オレじゃなくて、いやね、
ウチの母親なんですよ。
母親が台湾に旅行するってんで、お守り持たせた訳ですわ。
母親の入ってる団体の慰安旅行だから
別にそんな危ないわけじゃないんですけど、
ウチの母親飛行機乗ったことないイナカモンなんで、
怖がったから持たせたんです。
お守りっていっても、
翡翠の玉(漏れが山で拾ってきて磨いて
キーホルダーに加工したやつ)なんですけどね。

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で、無事帰ってきたおかんがなんか暗い顔してんの。
どうしたの、楽しくなかったのか?
ってきくと

「財布落とした」

って。
台北かどっかのタクシーの車内に
うっかり忘れてきたみたいだ、って言うんですよ。
財布はともかく、漏れに貰った翡翠の玉を入れてたのが
申し訳ない、ってなんかもう死にそうな顔で。

あほだなあ、おかんが無事で
帰ってきたんだからじゅうぶんなんだっつーの、

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って言ってもまだ立ち直れないの。
んで、そんなことがあって
帰国から10日くらいたった日にね、
国際郵便が届いたんですわ。
差出人は台湾のヒト。なんじゃこりゃ、
とおもって母親が開けると
そこには落とした財布が入ってたのね。

ついてた手紙には
「私はタクシーの運転手だが、台北の駅であなたたちを
降ろしたあとに財布を見つけた。
追いかけて返そうと思ったが、
もう見つからなかったので失礼と思ったが
財布の中身を見させてもらった。
運転免許証を見つけたのでその住所にこの財布を送ります。
私は日本語が読めないが、
祖父が日本語の読み書きが出来るので代筆してもらいました」

とかあったんですよ。
もうね、アホかと。
行きずりの外国人のサイフですよ?
ネコババしてもばれないのに、律儀に送り返すって、
どういう人たちなのかと。おまけに、
入れてたNT$も全額そのまま。
で、封筒には別の包みも入ってて、それには

「財布を落としてしまってはお土産が買えなかったのではないか。
とても美しい翡翠の玉が入っていたので
あなたは石が好きな人なのだろう。お土産代わりにこれを贈ります。
どうか台湾にまたいらしてください」

とかいう手紙と翡翠のブレスレットが入ってたんですよ。
もうね、なんつー人かと。
ちょっと書いてて涙出てきちゃうくらい、イイ人じゃないかと。
こんないい香具師がいる国だったら
こんどは漏れも行ってみたいなと思ったわけでした。

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