私が中学生の時、両親が離婚した。
父の彼女(本気で、何年か“囲って”いた)に
子供が生まれたからだった。
私には15歳下の(異母)弟ができた。
それから25年、父が病気でしんだ。
生前に弁護士を頼んで遺言が作ってあって、
私の相続分は、父の家の土地の、何分の一かだった。
驚いたことに、母に払った慰謝料が、
私に対する生前贈与として算入されていて
(そんなことができるのかと思うだろうけど、
弁護士を入れれば何でもできるさ)
その分と、土地の評価額を足して、
遺留分きっちりの金額だった。
その土地には家が建っていて父家族が暮らしていて、
その一画が私の名義といっても、私には何もできない。
その時私は40歳独身、父の考えとしては
→どうせ私は独身のままだろう
→15も年上の私はどうせ弟より先にしぬ
→その頃には私の母もいってるだろうし、法定相続人は弟1人
→土地はそのまま弟のもの
→俺ってよい父親!
だったと思う。
父は彼女の子が男の子とわかって狂喜して、
母に離婚を突き付けたからね。
その前から、私にもよく
「おまえが男の子だったらなあ」
って言ってたからね。
男の子にすべてを遺してやりたかったんだろうね。
弟には、私の時とは桁違いに、教育にも習い事にも
遊びにもお金をかけてやってたしね。
私は相続税を払わされるだけだし、
土地が細切れになると後々、
弟にとっても面倒なんじゃないか、
現金で相さいした方が
いいんじゃないかと言ってみたのだが、
後妻が「図々しい!」と罵ってきた。
カチンときた私が
「じゃあ老後は、私の土地に掘っ建て小屋でも建てて
住まわしてもらいますわ」
と言った時の、
「そんなことはさせません!」
という般若顔は忘れない。
私はため息をついて
「まあいいですわ、
父は弟くんだけが可愛かったわけだし、
弟くんの一人勝ちってことですねー」
と精一杯の嫌味を言い、
「そんな言い方ないでしょおおお!」
という後妻の叫びと、無言無表情な弟25歳を残して、
弁護士事務所を後にした。
私は父の遺産を法定相続通り、四分の一、欲しかった。
金額ではなく、弟と同じだけ愛していたという
証拠が欲しかった。
でも、父の愛は弟の半分よりさらに少なかった、
いっそ私は要らない子だった、とよくわかった。
それが私の修羅場。
父に関わることは全部忘れようと努力して3年、
弟から連絡があった。
土地を相続したといっても、
分筆はしていなかったので、
その土地の「どこ」というのは決まってなかった。
相続の時にしておこうと思ったのだが、
後妻の「(私には土地の)端っこしかあげませんよ」
というバカ発言があったので、
あきれて、しなかったのだ。
その「どこ」をはっきりさせたい
=分筆したいということだった。
なんで今?私がしぬのを待ってるなら
しなくていいんじゃない?と思い、
問いただしてみると、どうも弟は結婚したいらしく、
その前に私との縁を切っておきたいらしい。
私の「老後は掘立小屋を建てて…」発言を
真に受けて心配になったと見える。
そりゃ楽しい家庭の隣に、
母親違いの意地悪独身姉が住み着いたら嫌だよねwww
分筆したって、私の分は猫の額よりまだ狭い。
それこそ「端っこ」分くらいしかない。
実際には、売れもしないし住めもしない。
どうしようかなと考えていると、
弁護士から内容証明のお手紙が届いた。
相続の時の弁護士とは別の、
県庁所在地の高層ビルの高層階に事務所のある
弁護士からだった。
依頼料が高そうだなーと思った。
分筆のための話し合いに応じなさい、
ごねたって無駄だという内容だった。
いや(まだ)ごねてませんが。
しかも言外に
「土地の切れっ端なんか
持ってたってしょうがないでしょ、
どうせ住めるわけでもないんだし、
権利を放棄しなさいよ、譲りなさいよ」
と匂わせている。
(はっきりとは言わない、言うわけもない。
だから私の被害妄想かもしれない)
ともあれ私はキレた。
「売られた喧嘩は買ったるわ!」
私は自分ちの駅前の、
2階建ての雑居ビルの一室(隣はカラオケ屋)に
事務所を構える弁護士に依頼した。
漫画や映画にあるみたいに、
金持ちのいけ好かない弁護士に、
人情派のビンボー弁護士が勝つ!
みたいになったら楽しいと思って。
もちろん、あっちの弁護士が
いけ好かない奴かどうか知らないし
こちらの弁護士も別にビンボーではないと思うwww
弁護士同士、いたってビジネスライクに
話を進めてくださった結果、
分筆は現実的ではない。
弟は適正価格で私名義の土地を買う。
という結論になった。
当たり前だ。
それでもまだ、
現金を用意するのに時間が~結婚が近いのに~
銀行に担保を設定しなきゃ~
ローンを組むの大変~みたいに
ごにょごにょ(弁護士経由で)匂わせていたが、
知らんわ。
だいたいローンなんか組まなくたって、
現金の相続分があったろうが。
その後も弟は、確定申告に必要な書類を
送ってこないというアホな嫌がらせをしてきて、
「税理士にゴルアしてもらうか!」
と脅さなければならなかった。
初めての相談の時、事情を説明しながら、
父に愛されていなかったことを思い出して、
(いい歳して)泣いてしまった私に、
「ひどい目に遭いましたね」と言ってくれた
雑居ビルの弁護士には感謝している。