通勤途中で見覚えのある女性「ゆうべここに停めた自転車が見つからないんです」その後、1男2女が生まれました。

当時働いていた職場と取引先の中間あたりに
レディースマンションがあった。
オフィス街の外れにあるのだが、
治安は良いとも悪いとも言えない地域だった。

ある日、そのマンションの自転車置き場の前を
何度も往復している女性がいた。
何をしているのかは推察できたが、
女性の顔に見覚えがあったので声をかけてみた。

「ゆうべここに停めた自転車が見つからないんです」
(見つからないって、それはあんた・・・)

「さっきからずっと探してるんですが、どこにも無いんです」

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それはきっと盗まれたんだろう?

「えっ?ちゃんと鍵をかけたんですよ?」

いや、鍵なんてその気になれば簡単に壊せるよ

「え〜〜信じられない!!(涙目)」
(いやいや、この娘、いったいどんな田舎から出てきたんだろう?)

会話をしているうちに、女性は俺のことを思い出したらしい。

「あの、○○によく来られている方ですよね?」

ああ、そうですが・・・

「この前、あそこの飲み会に参加していたんです」

おお!どうりで見覚えがあったわけだ

「わたし、これからどうしたら良いでしょう?」
(知らんがな)

取引先に向かう途中だったので、
とりあえず自分の名刺の裏に自宅電話番号を書き、
もしも手に余るようだったら、
会社か自宅に連絡するように言ってその場を去った。

その後、1男2女が生まれました。
来年で結婚25周年です。

その後は特別な出来事もなかったけど
とりあえず思い出したまま書いてみます。

嫁は俺の思った通り、隣県の一番端っこの市の出身で、田舎者だった。
高校の求人で俺の地元に就職してずっと寮暮らしだったのが、
この頃に転職してマンションで一人暮らしを始めたところだった。
前職場の仲間から転職祝と餞別代わりに貰った自転車だったので、
それを盗られたショックと通勤の足が無くなって途方にくれたため、
その日の夜に俺の自宅に連絡があった。

それから、引っ越したばっかりだったので
住民票の手続きもしておらず、
電話でそれらをいちいち説明していたのだが
途中で面倒くさくなり、

「あのぉ、もしよかったら付いてきて貰えませんか?」

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と、頼まれてしまった。
嫁はこっちには頼る身内が全くいなかったので、
仕方なしに引き受けた。

翌日、会社には尤もらしい言い訳をして、
嫁と一緒に交番と役所に行った。
家具類や食器も揃っていなかったので、
その週末には買い物にも付き合わされた。
それからは、毎日お互いその日の出来事を
電話で訊いたり話したりするようになり、
週末には必ず一緒に食事をするようになった。

3ヶ月くらいすると毎週嫁の部屋に泊りこみようになり、
半年後には嫁が俺の家にも遊びに来るようになった。
当然、俺の両親にも紹介して
一緒に食事をするようにもなった。

何度か俺の家に来るようになってから、
俺の母親がこう言い出した。

「あんた、あの娘を離したらもう結婚なんかできないよ」って。

まぁ、嫁を両親に合わせた時点で結婚のことを意識してたのだが、
両親が気に入ってくれたことはかなり大きかった。
その次にあった時にはハッキリ

「結婚してください」

と伝えた。
俺が23、嫁が21だった。

プロポーズした翌年には結納を交わし、
その次の年に入籍して結婚式を挙げた。

嫁は今でも何か困ったことがあれば、
誰かに聞いたりするよりも先に俺に頼みに来る。
ひどい時には、重大ニュースの犯人や
ドラマの次回の展開まで俺に訊いてくる。

“ちったぁ自分で考えるなり、ググるなりしろよ”

といっても、

「あなたに訊いた方が早いモン」

と開き直る。
まぁ、困っている田舎娘を世話しているうち
に気がつけば嫁に迎えていたから、
これはこれで正しい結果になっているのだが。

ところで、嫁とは知り合ったころから
毎晩寝る前に電話で話をしていたが、
俺の声が低音なので寝るのにちょうどよい子守唄に聴こえるらしい。

実際、電話の途中で何度も寝ていることがあった。
結婚して一緒に住むようになっても、
やはり寝る前には何か話すよう求められた。
子供が生まれてからは、子供を寝かせる寝物語をする時も
嫁は一緒に聴いていた。

俺が「嫁を口説いた」と言うよりは、
寝る前の子守唄のようなものが
催眠術として未だに効いているのかもしれない。

自転車は盗難届を出しましたが、結局見つかりませんでした。
仕方ないから私がプレゼントしました。

嫁はかなり恩に着てましたが、当時はバブル最盛期。
ブランド品をねだられることを思えば安いもんでした。

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