足を骨折して電車に乗ると、いつも彼女が席を譲ってくれた「毎日この時間のこの車両に座っているので声を掛けてください。」

嫁にキッッッモ!と言われた馴れ初めです
いつもより15分早い電車で仕事に行くことにした日に
電車に乗ると可愛らしい女の人が派手なブックカバーで
本を読んでいて、とりあえず左手の薬指を確認すると指輪はなし、
心の中でガッツポーズ
別の日にもその電車に乗ると同じように乗っていたから、
俺が元気な日はその電車に乗るようにしていた
まるで高校生の初恋みたいだと思いながらも、
朝のちょっとした癒しだった
その子は複数のブックカバーを持っていて、

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ブックカバーが替わると
本が一冊読み終わったのだろうと勝手に観察していた
時々漫画も読んでいて、
少年漫画を読み続けていたときは彼氏が出来たのだと思ったりもした
徐々に自分のことをストーカーだと思い始め、
この行動がキモいのは自覚していたので、
いつも座っている女の子から離れた位置に立つようにしていた
へたれなので行動に起こすことは出来ずに見て満足していた

俺が足を骨折して電車に乗ると、その子が席を譲ってくれて、
大体毎日この時間のこの車両に座っているので
席を替わるから声を掛けてください。と言われた
優先席でもないし悪いからと断ったけど、
それなりに満員になる電車では
その状態で乗ってるのは気になるからと言われて、
言われた通りにした
足を折ってるとはいえ、元々早めに会社に着いていたのを
更に早くしていたので始業には充分間に合っていた

毎日甘えるのも申し訳ないと思ったのと
電車に間に合わず違う電車で通勤した翌日に、
強引で引きました?
と聞かれたのでラッシュ帯での立ちっぱなしは
辛かったのでその後もお言葉に甘えさせてもらうことにした
挨拶をして二言三言話したりしていたし、
明日仕事休むので電車に乗ってませんと事前に告知してくれたり、
ちょっと舞い上がっていて、足が治らなきゃいいとさえ思っていた
ギプスが取れた翌日、お礼にお菓子を持って行き、
何とか受け取ってもらえた
それからは同じ電車に乗るのを躊躇い、
以前と同じ遅い電車に乗るようにしていた

いつも通りに電車に乗ると、
彼女が今日は寝坊してギリギリです。
と言っていて、吊革もないところに
立っていたから本を読んでなかったので、
話しながら通勤したけど、それだけでお互いの名前も知らないまま
彼女はギプスが外れたから通勤時間を遅らせたのだと思っているようだった
その後は、彼女が乗ってる電車にも乗り、
気付かれると会釈をするくらいの関係だった

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金曜日に仕事が終わって座りながら帰ると、
ターミナル駅から飲み会帰りっぽい彼女が乗ってきて、
俺の顔を見ると、お兄さんだ。と笑っていた
酔っ払っていたし眠そうだったので、席を譲るとすぐに眠り、
寝顔をみてるのも気持ち悪いだろうと離れた位置に移動した
その電車は途中で乗り換えないと彼女の最寄り駅の方に行かない電車だったけど、
乗換駅になっても起きる様子がないから、
声を掛けて起こして乗り換えさせることにした

起きたばかりの彼女はふわふわしてて、
乗り換えた電車では座れなかったんだけど、
迷惑掛けてごめんなさい、最近は帰りが遅くて
疲れていたところに自分がメインの送別会で飲みすぎた。と言っていた
俺の最寄りになる前に、彼女いますか?奥さんは?と聞かれ、
両方いないと答えると、迷惑を掛けないから一杯だけ付き合って欲しいと言われ、
行くことにした
終電まで一時間飲んで終電に乗せ、
この時に初めて名前を知って、連絡先を聞いた

年度末の日、彼女の乗っている電車に乗ると
大きい紙袋を持っていて、この前付き合ってくれたお礼だと
お菓子をくれた
仕事が落ち着いたらまた飲みに行きたいと言って、
それから毎日のように連絡を取って、
異動に伴って電車の時間が変わった彼女に合わせて通勤するようになった
通勤で俺と話すから本が進まなくなったと言われたので、
話すのやめる?と聞くと嫌だと言ってGWに初めて昼から出掛けて、
付き合ってもらえて、その約一年後には結婚式を挙げていた
周りには早いと言われたけど、
付き合ってから自然とトントン拍子に話が進んだし、
毎日30分くらい顔を合わせていたのも大きかった

嫁は俺のギプスが外れる報告をされたときに寂しいと思ったのがキッカケ、
俺は困ってたときに声を掛けてくれたのがキッカケだと言っていた
実はその二年くらい前から見かけていて気になってたと言ったら、
キッッッモ!と言われたけど、転職してあの電車に乗るようになって良かった、
俺がヘタレじゃなかったらもう少し早く
結婚出来たはずとも言っていたので結果オーライだと思いたい
今は嫁の地元に住んで、毎日一緒に座りながら通勤していて、
嫁は相変わらず読書をして、俺は新聞を読んでいる

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