嫁  「新手のナンパかと思いました。でもありがとう。お話してくれて」

出会った時の年齢 俺21歳 嫁22歳
出会い系にハマりまくっていたA男という女遊びの派手なやつがいた
A男とはサークルが同じ
ある祝日、駅前に買い物にいくと
駅近くの橋でA男を見かけた
俺に気付くなりニヤニヤした顔で
「今日面接なんだよ」と一言
バイトかなにかだと思ったら女の子と対面することを
称してそう言っていたらしい
ただの興味本位で聞いてみたら教えてくれた

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女の子とは2時半にタクシー乗り場の前の時計台で待ち合わせ
目印は薄紫のカバン
時計はすでにもうすぐ2時半になろうとしている
A男はこっちの橋でタクシー乗り場を見ていた
俺は買い物行くわと伝えたが「せっかくだから見てて」と付き合わされた

A男が見ているそこには、薄紫といえるかどうか
微妙な色のピンクよりのカバンをもった女の子が
一人携帯を触っている
そしてもう一人、まあ薄紫だろうと思えるカバンをもった女の子が座っていた
しばらくして、携帯を触っていた女の子は誰かと歩いて行ってしまった
それを見届けたとたんA男が「アウト」と笑った

もし前者なら今日デートするつもりだったらしい
いまも座っている薄紫のカバンの子は、
おそらく今日待ち合わせしている子だと思うが
好みじゃないとA男は言った
じゃあまた明後日な、と俺に言ってA男は帰って行ってしまった
くだらない待ち合わせに付き合って損をしたと思った

俺は買い物に行った
エレベーターを待っているとき、
出会い系なんてやっている女の子はやっぱり
軽いんだろうなと考えていた
靴屋やCDショップ、本屋をうろうろして、
出たときにはちょうど一時間ぐらい立っていた
雨が降っていたから傘をさしてビルを出た
時計台の前を通ると、
さっきの薄紫のカバンの子が傘をさして立っていた

気が付いたら俺は彼女に話しかけていた
何だかんだでその子は俺と友達になってくれた
何だかんだで俺にとって必要になったので嫁にきてもらった

交際に至ったまでをぼちぼち投下
何だかんだの部分がややこしいので予めお許しを

結果的には俺のナンパなんだ

俺は、A男にすっぽかされたのを知らずに
嫁がA男を待っているんだと思った
A男にもし「行けなくなった」
と伝えられていたとしたら今でも待ってないんじゃないかなって

わざわざ傘をさしてまで、
現れるはずの男をただ待っているであろうあの女性に
一言伝えておいた方がいいんじゃないかと声をかけたつもり
嫁は派手な感じが全く無くて何かユニクロの人みたいだった(当時)
あんな人もA男みたいなのと遊んだりするものなのかと思った

先にいっておくと、それは俺のはずかしい勘違いに終わった
嫁はA男と待ち合わせていた子ではなかった
俺がそのことに気づいたのは嫁の反応からだ

俺「すみません」
嫁「?」
俺「待ち合わせをされてますよね」
嫁「・・・?(不思議そうな顔)」
俺「あれ、違いますか」
嫁「人と約束はしていますよ?」

俺「A田A男ですか?」
嫁「?(苦笑)」
俺「あれ・・・」
嫁「えーっと、どちらさまですか(;^_^)」
俺「A男のことご存じないですか」
嫁「さ、さあ・・・」

嫁からすれば俺が完全なる不審者だったらしい
そのときの俺は、一つのことしか考えていなかった
あいつたしかに薄紫って言ってたよな、
別人か?この子じゃないのかと嫁のカバンを見ていた
気まずくなって口からでまかせでこんな具合のことを言った
はじめは、恥ずかしくて勘違いをごまかしたかっただけだった

嫁「待ち合わせされてるんですか?」
俺「あーはい。まあ・・・」
俺「友達が、薄紫色のカバンの子と約束しているって
いってたんですが彼来れなくなったんです」
俺「それでそいつの代わりに俺が伝えにきました」

嫁も納得したのかしてないのかよくわからん顔で
「わざわざ大変ですね」と頷いてた
もう嫁がどこかよそ見している間に俺も消えて帰ろうかと思った

嫁「じゃあまだお会いできてないんですね」
嫁「私もまだまだ来ません」
俺「一つ聞いていいですか?」
嫁「はい?」
俺「同じ色だったんで気になったんですがあれから長い間待たれてるんですか」
嫁「見られちゃってましたか、そうです」

嫁はずっとその場に留まっていたわけではなくて
理由があって遅れた待ち合わせの相手が
もうじき着くとわかったのでまた建物から出てきたところだったらしい

俺「それだけ待ってたらお疲れですよね。気が長いんですね」
嫁「長くはないですよ(苦笑)可愛い子のためなら待てるんです」
俺「ははは」
嫁「お友達のために大変ですね。やさしいんですね」

俺知らない人にてきとうなウソついてこんなとこで
何やってるんだと思った
どうせ暇だったんだけど
何十分か話してて気が付けば雨が止んでた
道端の人と話すのも自分にしちゃ珍しかったので
そのまま嫁と、連休ですねだとか電車の中が混んでいたとか
ありきたりなことを話し続けてしまった
学生さんですかというから「そうです」って大学名を答えたら
嫁が「後輩が行ってます」ってことも教えてくれた
今日一緒に待ち合わせの人と映画観るつもりで
上映に間に合わなかったという小言を聞いたりもしていたんだけど
話していて思った

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この人が、A男と約束していた女の子じゃないということは
A男のやつ、この全く関係のない女性を勝手に好みじゃないと
判断して帰っていたわけなんだよなーと
そこに呆れた
A男の好みはどうでもいいが
この人は気さくでおだやかそうな人だと思った

話していたときに立ち上がった嫁が苦笑いしながら「あの子です」と言った
見たら橋のほうから女性が手を振りながら近づいてきてた

嫁「おーい!寝ぼすけ!(笑)」

嫁は叫んでいたが怒りもせずに嬉しそうに笑ってた
嫁のことがいつから好きだったかは正確に覚えてないけど
このとき笑った顔がとにかくかわいかった
俺は人生で初めてのナンパをした
「またお話したいので嫌じゃなかったら連絡先交換してください」

へ?って顔してる嫁に携帯をさし出した
地面に自分の携帯落っことしつつも応じてくれた

別れ際、嫁は笑いながら
「新手のナンパかと思いました。でもありがとう。お話してくれて」
こんな感じのこと言ってた 確実にひかれたなと思った
それから話したくなって電話した
仕事をしているといっていたのを思い出して
週末の夜ぐらいに電話をかけたと思う
文字にすると普通だがかけるのにドキドキしすぎて何度か途中押しで取りやめた
電話ごときでこんなに緊張するのは久しぶりだと思った

お茶に誘ったら、笑われつつも都合が合えばという感じの返事
こりゃ流されそうだと思い、空けますんで教えてと聞いたら教えてくれた

名前や住んでいる場所がそんなに離れていないこと、
好きなもの、俺も嫁も早生まれなこととか色々聞きあってわかった

あとで聞かされたけど嫁から見て初対面の俺はナンパしそうな
雰囲気の人に見えなかったようで最後の最後でびっくりしたらしい
俺の耳らへんが紅潮していたらしくてナンパ慣れしているようにも思えず
「お茶ぐらいだったらいいか」と思ったんだと

それはやさしさだったとして
こっちもチャンスはいかしたかったので、2回目も約束とりつけた
3回目だったか4回目だったかは何故か嫁から映画に誘ってくれた
電話するようになった以後、たまに会ってくれるようになった
付き合ってもいないのに嫁の言動に一喜一憂して勝手に疲れるという痛い俺

卒業旅行の土産をあげたら、嫁が誕生日プレゼントくれたり
嫌いだったらしないよなー望みはあるかもしれないと思える出来事は何度かあったが
友達が「彼氏いるのに居ないふりする子いるよな、酷いわ」
なんて話してるの聞いて自信は崩れ去るし
間接的に、嫁の好きなタイプは俺とは程遠いと知ったりで
なかなか踏み出せなかった
俺が忙しくなって次会うまで間が空いてた
久し振りに会えた日に告白しようと決意した
会話は方言の部分なおしているから読みにくくてすまない

俺「さっき言っていた話そうと思ったことっていうのはですね」
嫁「うん?」
俺「俺の知り合いで、出会い系もやっているチャラい奴がいるんだけど」
俺「俺があの日嫁さんに話しかけたのはそいつが関係してる」
嫁「ん?どういうこと」

俺があの日嫁に話しかけたいきさつを話してみた
(ただしA男がアウトと言った部分は除いてA男が気まぐれで帰ったことにした)

俺「まあその、つまり新手のナンパをするつもりで話しかけたわけじゃないんです」
嫁「待ちぼうけになっているならかわいそうだと思ったってことかな」
俺「うん、だから嫁さんがてっきりその子だと思った」
嫁「へええー」

(略)

俺「なので新手のナンパとかじゃなくて、
誰それ構わずお茶誘ってるわけじゃないよ」
嫁「何回言うの(笑)気にしてたんだ。
ごめんよ、それは前にも言ってくれてたしわかるよ」
俺「まあ嫁さんはナンパしちゃったんだけど」
嫁「ははは」
俺「嫁さんと話してると楽しいしそれに(略)」
俺「えっと、つまり」
嫁「うんうん、がんばれ」
俺「がんばれって・・・w」

結果、嫁さんが好きですまで言い終わる前に
嫁が「やったー」「よろしくお願いします」と言ってた
俺の態度は相当わかりやすかったらしい

付き合うまではそんなんでした
長々と投下してすんません 紫煙ありがとう
あとこれは余談で
A男は俺と別れたあと帰り道にちゃんと断りの電話は入れていたらしい
断りの電話をいれたら女が普通に出てきて
私まだ家だけど、今日雨だしやめにしないかって言われたらしい

(あのあとどうしたって聞いたらA男はなんでそんなこと聞くのって顔してた)

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