俺は実の子を養子にしたことになる

俺が亡き恩人から受け継いだ会社を経営して
なんとか潰さずに堪えていた頃
小規模企業経営者の集まりで、ある女性と出会った(Aさんとする)
Aさんは、男尊女卑の残る企業経営者のおっちゃんたちにすら
一目置かれる凄腕で、信者みたいなメンバーもいるほどだった
俺より年上で、そこそこいい歳だったが
独身で女性ばかりの会社を切り盛りして
売り上げを出す辣腕経営者だった

Aさんに企業経営のノウハウを学びたいと思う経営者は少なくなく、
俺もその一人だった
何度かAさんの会社や自宅でセミナーのようなことをやってもらっていた

ただ、相手が女性ということで下心や物珍しさで集まっていた人も多く
回を重ねる度に次第に参加人数も減っていき、最終的に女性ばかりになってしまった
そんな中、俺は自分の会社の経営難のためになりふり構っていられなかったこともあり
最後まで残った唯一の男だった

そこで学んだノウハウはもちろん
Aさん自身の紹介による人脈作りが功を奏して、
俺の会社の業績は次第に上向きになっていった

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参加人数が減ってからはセミナーのあとAさん宅で食事会のようなことがよくあった

あるとき俺とAさんと何度か見かけたことのある女性と3人だけの時があった
その女性がのちに俺の嫁となる
Aさんは「この子どう?」という軽い感じで勧めてきた

そのころの俺は婚期も逃しつつあり
そういった機会にも恵まれていなかったこともあって
紹介をされてから急に相手を意識し始めてドキドキしたのを覚えている

それまでの嫁に対しては、センスのいいクリエイターで、事務仕事も得意
ときどきAさんの料理を手伝っている
話すとおとなしいがしっかりした考えの持ち主
というくらいしか知識が無かった
Aさんが抱えるクリエイターの一人だったので、身元もしっかりしていた

嫁からの積極的なアプローチは皆無だったが、
Aさんがどんどんセッティングして
デートや小旅行なども一緒に行くようになり、早く子供が生みたいという嫁のために
紹介されてからわずか半年で結婚となり
お互い忙しいので籍だけ入れてあとはホームパーティー、という結婚式だった

それまで体の関係は無かったのだが、とにかく嫁は子供が生みたいという
俺やAさんに比べて嫁は若かったので
そこまで焦ることもないと思ったのだが、嫁の意見は全面的に受け入れ
排卵日を計算して月に一度だけ挑戦していた

回数的には少ないとも思ったが
俺も歳だったし逆に何度も求められても困ったかもしれないので
それで良しとした

ベッドでの嫁はマグロに近く
部屋は絶対に暗くしていたし、目も閉じているようだった
若いころの◯俗通いでプロ慣れしていた俺は物足りなく感じたが
結婚なんてこんなものかもしれない、と特に疑問にも思わなかった

1年ほどそれを続けたが嫁は懐妊せず、早々に人工授精に切り替えることになった
今は高齢出産リスクを減らすためなどで産婦人科からは
早めに人工授精を勧められるということは知識として知っていたので違和感はなかった

ただ、そこからは完全にセッ◯スレス
月に一度人工授精のために一人で精子をプラスチック容器に出し
それを嫁に渡すだけ、というありさまだった
嫁はお店(◯俗)で遊んできてもいいよ、と言っていたが、なんとなくできなかった
裏切りになるんじゃないかと考えたし
病気でももらってきたら、などととにかくチキってできなかった

そこから3か月ほどで嫁が妊娠
説明を聞くと、人工授精の確率は30%ほどなので
3回目までに当たるのは当然だったかもしれない

あまりはしゃいだりしないタイプの嫁が泣いて喜んでいた
俺も泣きそうなほど感動してしまった
安定期に入るまではビクビクしながら生活していたものだったが
その後は母子ともに順調で、無事出産
立ち会った俺の次にお見舞いに来たAさんが子供を抱っこしてくれた
本当はこの時に泣くべきだったかもしれないが
タイミングを逃してしまっていた

ちなみに妊娠から出産までも、やっぱりセッ◯スレス
これは嫁が嫌がるとかよりも、俺が怖がってできなかった

子供が1歳の誕生日を迎え、嫁も次の子が産みたいと言い始めた
で、予想通り初っ端から人工授精
これを半年ほど繰り返したころ、Aさんが休職することになった
そして事業を縮小し、なんと経営は俺にまかせると言い出した
病気休養だと思っていたので、お見舞いに行こうかと言ったのだが
Aさんにも嫁にもそれは止められた

そのころには俺の会社もAさんの会社も似た業務をやっていたので、
引継ぎはスムーズにいった
Aさんの会社が仕事を減らした分、
俺の会社へ仕事を回してくれたりして
売り上げは倍増、信用もでき、忙しくて子供と遊ぶ時間も取れないほどだった

嫁は在宅でもできる仕事の人だったので子守はほとんどまかせっきりで
週末は俺が子供と遊ぶ、というローテーションだった
また、近所に住む嫁の親戚(嫁の叔母)宅に出かけて
息抜きや子育てを手伝ってもらったりしていたので
育児ストレスはあまり無いようだった

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その頃には二人目を産む話があまり出なくなっていた
俺も仕事が忙しく、毎月決まった日に行う採精が
変にストレスに感じていたこともあってちょっとありがたかった

そうこうするうちに今度はAさんが出産
仲間内ではちょっとした激震が走った
Aさんはまだ独身だったのだ
若い燕の子だとか、元夫(Aさんはバツイチ)の子、だとか
根も葉もない噂も漏れ聞こえてきた

出産後ようやく、Aさんが休職してからはじめて会ったが、元気そうだった
休職の理由は高齢なので慎重に出産準備をした、ということだった
理由を聞かされなかったのも、たしかにAさんは未婚だったので
変な噂が立たないようにとの配慮だと解釈した

俺に会社を譲ってくれた恩人に続き、恩師を二人も失うのだけは避けたかったので
Aさんの休職の理由が病気ではないと知ったこの時、俺は心底ホっとした

俺の子供も一緒に会いに行き、赤ちゃん赤ちゃん、と大騒ぎしていた
やっぱり弟か妹がほしいのかな、と考えた

Aさんはなんと出産後半年で職場に復帰
それまでも電話やメールでの仕事の指示は飛んできていたので
カンは鈍っていないようだった
俺は二つの会社の経営を行うという重荷から解放された
Aさんの子供は、昼間は俺の嫁がベビーシッターのようなこともやっており
俺の子供と一緒に面倒をみていた
子供同士も仲は良く、ここは問題がなかった

その頃には俺の仕事とAさんの仕事がいろいろ混ざり合っており
話し合って共同経営者として会社を合併することになった
かといって忙しさも責任も変わることはなかったが
Aさんという後ろ盾を得たことで俺が精神的に楽になったし
交互に責任を持つのでお互いが家族との時間も取れるようになってきた

あるとき嫁が、Aさんの子供を養子にとろう、と言い出した
たしかに片親であるAさんの子をうちが引き取るのは良いことにように思えた

それならまず近所に住もうと提案してみた
Aさんのすごいところは、良いと思ったら即行動するところで
これは俺にはいまだに真似できない
Aさん宅の近所に事務所としての家を買い、俺たち家族がそこに住むことになった
保育代?養育費?代わりとして家賃は請求されなかった

ただ、養子の件はうまくいかなかった
いろいろあったわけだが、要するにまだ日本に
養子の文化が根付いてないということだろう
残念だったがそれでも、俺の子もAさんの子も、嫁の保育の元
兄弟のように育っていることだし特に問題はないかと思っていた

が、嫁は妙な使命感を持っており、今度は俺に離婚を迫ってきた
理由を聞くと、嫁と別れて、俺にAさんと再婚してほしいとのことだった
確かにそうすれば俺とAさんの子の養子縁組は格段にしやくすくなる
すごいアイディアだと思った
嫁のクリエイターとしての発想のセンスに脱帽した

Aさんには了承済みだったので、あっさり俺と嫁は離婚し、俺とAさんが再婚
ただし、住処はそのままなので、俺と(元)嫁、俺の子、Aさんの子が
元の家に住み、週の半分くらいAさんの家に行って過ごすという生活スタイルだった

ただ、俺にとって嫁は『嫁』だけだったので、
再婚後にAさんにベッドに誘われたときは断った
Aさんも断られることがわかっていて
一応礼儀として誘ったようだったのでここも問題はなかった

養子縁組が終わると、今度は再び離婚、そしてまた嫁と再婚
結果嫁バツイチ、俺とAさんはバツニ
変則的ではあったが、一つの新しい家族の形だ!と思って幸せだった

俺もうすうすは感づいていたのだが、気づかないふりをしていた
だけど、一応俺の役目も果たし終えたし、
そろそろいいかな、と思って別居を申し出た

籍を抜くつもりは無いので、別居という形にした
嫁もAさんも驚いてはいたが、ちゃんと納得して受け入れてくれた
元の家には俺が住み続け、嫁は子供を連れてAさんの家に引っ越すことになった

Aさんは持ち家を増築して部屋数を増やしてそれを受け入れた
近距離別居なので俺も夕食はAさん宅、
週末はお泊りと称して子供たちに会いに行く変則生活

嫁とAさんの二人は女性同士のパートナーで、
いわゆるレズビアンカップルだった
と言ってもAさんはバイ寄りだが、嫁は真正に近く
ビジネス以外での男性との接触はかなりストレスだったようだ

最初に男性不信であることは気づいていたのだが
俺のようなおっさんに対しては大丈夫なのかな?と楽天的にとらえていた

二人のなかでどんな葛藤があったのかは知らない
ただ推測するに、どうしても子供がほしかった嫁とAさんは
信用できそうな男として俺に的を絞り
出産リスクの少ない若い嫁がその任を受けて
望んで俺の子を産んだということになる

他の男をAさんに触れさせたくなかったのかもしれない
種馬と言ってしまえばそれまでだが
それでも二人からはいろんなものを貰ったので、感謝こそすれ恨むことは無い

で、なんでこういうことを書く気になったかと言うと
Aさんの子が、最近どうも俺に似ている気がするから
もしそれだった場合、俺は実の子を養子にしたことになる

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