あなたにお願いがあります。花嫁が式当日いなくなったのでダミーになってください

もう20年ぐらい前のことだけど、
友人の結婚披露宴出席のために某結婚式場にいた。
早目に着きすぎてロビーのソファに座って
顔見知りがいないかキョロキョロしていたら
スタッフらしき男性に
「少しお時間頂けますか?」とか言われて
ワケがわからず「はぁ」と答えたら
初老の女性が横に現れて一緒に来て下さいと言われた。

なんとなく断りずらい空気があって、
怪しい感じでもなかったから付いて行ったら
親族控室みたいな所に連れていかれ、
そこには10人ぐらい集まってて
私を見た途端にそれぞれが「おー」と
歓声のようなワケの分からない声を上げた。

スポンサーリンク

中に新郎の恰好をした男性も交じっていて、
なんかオロオロしてた。
スタッフの男性もそのままいて、
さっきまで一緒についてきた初老の女性が
「あなたにお願いがあります。どうか私たちを助けてください」
と言うようなことを言われた。

そのお願いというのが、早い話が
花嫁のダミーになってくれと。
花嫁さんが式当日いなくなっちゃったらしい。
どういう事情でいないのかは説明されなかったし、
こちらも聞かなかったけど
花婿さんのオロオロした様子からして、
逃げられたのかなーと思った。わかんないけど。

で、ロビーにいる私を先程の初老の女性が見つけて
花嫁に物凄く似てるらしいんだ。私が。
披露宴はどうしても中止にできない事情があるらしくて
ただ黙って座ってるだけでいいから、
花嫁に成りすましてもらえないかと。

もちろん最初は断った。
なんとなくバチ当たりな気がしたし、
友達の披露宴に出席しなきゃいけないし。
それに絶対バレるって!って思ったし。

でも自分の母親よりずっと年配の女性に
土下座せんばかりに頭を下げられて
他の人たちからも涙目で頼まれて、
なんかその場の雰囲気で断れなくなってしまった。
それで、スタッフの人が友人に
事情を説明して来てくれることになって
私はそれからめまぐるしく大忙し。

顔から首筋、それに手まで真っ白に塗られて、
色打掛を着せられた。
写真を見せてくれたんだけど、
似てると言われれば似てるような気もするけど
花嫁さんには唇の上に割と大き目の
黒子があるけど私にはない。
というワケで、黒子描かれたw

会場に入ってぐるっと歩いて回る間、
心臓の音がバックンバックン聞こえるし
ひな壇に上がって座ってからは眠気と闘うのに必死だった。
眠気が去ったと思うとお腹が空いてきて、
目の前の御馳走が食べたくて食べたくて
やっぱり断れば良かった~と大後悔。

スポンサーリンク

こんなの絶対新婦の友人にはバレてるよなぁと思ったけど
お色直しの時に新婦のお母さんに聞いたら、
友人たちは事情を分かってるらしい。
なんかよく分かんないけど、
絶対バレてはいけない人が何人かいるらしいんだよね。

だからキャンドルサービスの時は
このテーブルは早めに終わらせて・・・とか指示があった。

彼氏でもない男と一緒で気持ち悪いし、イラッとするし
早く終わってくれーとそればっかり考えてた。
3時間強かかってたと思う。

なんとか終わって一室に案内されて
新郎と新郎の両親、新婦の両親それぞれから
クドイぐらいお礼言われてルームサービスをとったので、
食べてからお帰り下さいって言われてやっと解放された。
今日のお礼だと渡された封筒には30万入ってた。

あの新郎はその後どうなったんだろう。
披露宴を誤魔化したって、花嫁が戻ってこないと
新婚生活は送れないだろうし
ここから先は誤魔化しようがないと思うけど。
成田離婚したことにでもするのかなぁ。

これが私の今迄生きてきて凄く衝撃的だった体験。

ちなみに披露宴を欠席してしまった友人の新居に
後日お詫びを兼ねて訪問した時、
友人は「私より面白そうなことやっててずるいと思ったw」
って許してくれた。

便宜上、名前は聞かれたけど
連絡先は聞かれなかったよ。

でもこちらは披露宴で新郎新婦のプロフとか流れるし
名前や勤め先も知ってしまうんだよね。
(もう忘れたけどw)
これってもし私がとんでもない黒い人間だったら
あの人たちにとってヤバイことになってたかも知れないのに
そういう事に頭が回らないぐらい必死だったんだろうな。

スポンサーリンク