
スポーツ選手じゃないけどゾーンに入った話。
私と元がつく旦那は中学の同級生。
中学の卒業式から付き合い始めて10年目に結婚した。
周りからは10年愛だのなんだの散々盛り上げられ、
憧れられていた。
でも実際は長すぎた春で10年愛でもなんでもなく、
半年間のラブラブ期間と9年半の倦怠期、
ラブラブとはかけ離れた中高年夫婦みたいな状態だった。
私達が25歳の時、それぞれ親に呼び出され、
呼び出された料亭に行くと2家族が揃ってた。
母親同士がとても仲良しだった為、強引に婚約させられたけど、
お互い嫌でもなく、両親に流されるまま無抵抗に結婚した。
スイートルームに泊まれるオプションのついたホテルで
結婚式を挙げたので、ぶっちゃけ式の日の夜だけ1回したけど、
実は23歳くらいからレスだった。
お互い地元の大学を出て地元の企業に就職し、
25で結婚、27で旦那が転勤になり東京に引っ越した。
旦那は仕事が忙しく、東京に友達もいなくて
ヒマを持て余していた私は派遣で働き始めた。
しばらくして旦那に女の影が、それなりに悩んで、
上司に相談するうちに、私も上司と不倫開始。
お互いの不倫にうすうす感づいていたけど、
会話すら減っていたので話し合うこともなかった。
そんなとある木曜日、旦那が泊まりで福岡に出張に行くことになった。
なので私も上司と不倫旅行を計画した。
旦那には木曜日の夜から日曜日まで東海地方の実家に帰ると嘘をついた。
旅行先は上司の生まれ故郷の近くの東北に決まった。
東北の人気の素敵な温泉宿だった。
一緒にお風呂に向かった。
男湯と女湯の入口が分かれている付近に待合ロビーがあり、
冷たいお茶や無料で食べていいアイスが置いてあった。
女の方が一般的に長風呂なので、上司を待たせてはいけないと早目に出た。
待合ロビーを見渡しても上司はいなかったので、
お茶を飲んで、アイスを食べようとアイス用の冷凍庫に近づくと、
なんと冷凍庫の横に 旦 那 が 座 っ て い た。
一瞬で頭の中は真っ白。
座っている男性を凝視。
顔・髪型・体系・どれをとっても、今朝九州出張に送り出した旦那だった。
何かを察して顔を上げる旦那。
そしてマンガみたいにゆっくりと驚いた表情に変わっていった。
オリンピック選手が言ってたゾーンを体験した。
自分と旦那以外の全てがスローモーションで
周りの音もボヤけるというかエコーかかってて、
本当にドラマみたいな時間だった。
遠くから女の高い声が聞こえて、
スローモーションが徐々に溶けて、その女が立ち上がった旦那に
飛びついて甘えたところでゾーンが終わった。
魂が抜けたような顔で、旦那は去って行った。
「私ちゃん♪」
と呼ばれて振り向くと、上司が居た。
いつから居たのかわからなかった。
「秘密の不倫旅行」の楽しいテンションは氷点下。
上司に悟られないようとりつくろうので精一杯だった。
東京駅で上司と別れ、私は自宅ではなく区役所に向かった。
総合案内で案内され、目的のカウンターにつくと、なんと旦那が居た。
「あ」
「あ!」
今度はゾーンに入らなかった
「用紙もらいに来た?」
「うん」
書き損じ用で、結局2人で2枚の緑の紙をもらって帰った。
夕食を作り、無言で食べて用紙に記入した。
旦那の会社の同僚で、仲の良い人が近くに住んでるとのことで、
旦那が保証人欄にサインをもらいに行き、その足で届を出した。
九州に出張に行ったはずの旦那と東海地方の実家に帰ったはずの私が、
東北地方の温泉旅館でバッタリ会って24時間後に離婚した話。
事実は小説より奇なり。