実父の妹夫婦に引き取られて育った。
経済問題でなく、どうも俺が育てにくいガキでそうなったらしい。
実父には数年に一度会う程度、
実母のことはおぼろげにしか覚えてなかった。
んで、思い切って会ってみた。
まず、向こうの情のなさげな態度に出鼻をくじかれ、
それから俺の学歴とか職業とかを話すと
不快そうな態度にこっちも不愉快になった。
どうも、実母が愛して手元で育てた「ちゃんとした子供」な実弟より見栄えのいいもんを
背負ってるのが気にいらないらしかった。
「お前は弟より下であるべき」って態度にげんなりして、
「んじゃ。お元気で」って喫茶店だけで別れた。
アパートに帰りたくなくて実家に寄ったら、
養母が俺の好物ばっかの夕飯作って食わせてくれた。
実母の話題はどっちも出さずに、
普通に俺の会社とか養母の趣味の話とかしながら食った。
少しうるさいとこも含めて、間違いなくこっちが俺の母親、ってそう思った。
実の母親ってのは女神か天使みたいなモンに違いない、と何となく思ってた、
何日か前までの自分を蹴り飛ばしてやりたい。
女神や天使がてめえの子供捨ててくか、金に困ってもいねえのに。
アパートに戻ったら、泣きたくなった。
畜生。
養母は普通の母親だ。
学校で友達と喋って「お袋ってそーなんだよな」てなった話からも、
いかにも普通の、少し煩くて居ないと困る、つか居て当たり前の母親だった。
養父も養母も、妹(養父母の実子)と区別も差別もしてなかったと思う。
普通に誉めて叱って相談に乗って、兄妹ゲンカには両成敗で、普通に育てられた。
……自分で産んだんでもない子供にそうするのって結構すごいんじゃないか、と
今は思うが。
実母には、あれっきりで情も興味も執着も全部失せた。
仲良くない興味もない親戚のオバちゃん、としか思えない。
弟がいるってのもピンとはこないことに、やっと気づいた。
妹は現実だけどな(彼氏できて色気づいたり親父にプリン食われてキレたりで忙しい女子大生w)
実父母はどーでもいー存在だってことと、俺の家はどこかってことが解ったことが
収穫だったと今は思う。