以前自分は、病院の通院介助ボランティアというのをやっていた。
病気や障害で体が不自由な人が受診するのを助けるという内容。
利用者は高齢者が多くて、
大変なこともあったけど感謝されることも多くて楽しかった。
でも、利用者さんの中で一人だけ、どうしても馴染めない人がいた。
その人、仮にKさんとするけど、ま
だ40代なのに不摂生が祟って両足を切断した男性
若い頃は相当やんちゃをしてて、
今は生保だけど昔は羽振もよかったらしい。
Kさんの車椅子押して病院内歩いている間、
昔の武勇伝を延々上から目線で語られた
すべて命令口調だし、車椅子押してても
「もたもたすんじゃねえバカ!」とか言われて嫌だった
ある時、病院内でKさんの介助をしていたら
突然Kさんが通りすがった家族連れのお父さんに向かって、
「おい!お前○○だろ!」と叫んだ
ぎょっとして立ち止まる家族連れ。
呼びかけられたお父さんは固まってる
そしたらKさんはニヤニヤしながら、
「○○、お前生意気に結婚してるんだ?
なんだよべっぴんの嫁さんじゃん俺に貸せよ」
とか言い出して
こんどは子供達(中学ぐらいの男の子と小学5、6年くらいの女の子)に
「俺、お前たちのお父さんの同級生だったんだぜ」などと言い出し
学生時代のお父さんが弱虫で格好悪くて、
しょっちゅう殴ってパシリさせてやったとか言い出した
自分は車椅子を押して立ち去ろうとしてたんだけど
Kさんはがっちりブレーキかけて動こうとしない
焦ってたら、そのお父さんが急にすごい良い笑顔になって、
家族に
「うん、この人の言ってること、だいたい本当。
だからお父さん、一生懸命勉強して、いろいろ頑張ったの。
頑張ったらお母さんみたいな人と結婚できて、
君たちみたいな良い子が生まれたの~
やっぱり真面目に頑張るのが一番だね~ 今最高に幸せだもんね~」
そのとたん奥さんも子供達もほっとした顔になって、
そのまま皆で立ち去っていった
Kさんはまだ「おい!」「おい!」とか言ってたけど
家族はもう完全にスルーって感じだった
でもお父さんだけが、数歩先で振り返った
ぞっとするような、すごい嘲笑だった。
蔑みの目で、Kさんを上から下までじろ~っと眺めて
また前を向いて家族と一緒に去っていっちゃった
Kさんは「ぐっ」とか言って
それから妙におとなしくなった。でも自分にはまだ偉そうに指図するので
その日の別れ際、「Kさん今日最高にかっこわるかったっすね」
と言ってやった。