今年私の友人のお嬢さんが結婚する。
とても親思いの優しい娘さん。
相手も同じ母子家庭の男性だけど、
お母さんを大事にして頑張るお兄ちゃん。
この二人が幸せな家庭を築いてほしいと願って止まない。
私が大学生でアルバイトをしていた飲食店は
個人営業の欧州系専門店だったが、
ランチは小さい子供に300円で食事とドリンクバーが付いていた。
ある平日の午後、ランチ客も途絶えた頃に
若い母親に連れられた4才の女の子が入ってきた。
母親は金髪もまだらになり、
服装や持ち物も質素で疲れた表情をしてた。
女の子も髪が伸び薄汚れたワンピースだったが、
とても陽気な子だった。
二人を案内すると母親は「子供用ランチ一つ」だけ注文した。
私は厨房に注文を伝え子供用ドリンクバーのコップを持って行くと
母に教わり女の子はドリンクバーでオレンジジュースを入れ自席に戻り、
母親に色々話しかけてた。
母親は疲れた顔だがニコニコと女の子と話をしてた。
その時女の子が「これっ!あまい!」とか大きな声で言うと
母親に「おいしいよママ!いいにおいがするよ」と上気した顔で言って、
一口飲んで母親に「ほら、ママ!」と飲ませようとしてた。
私は横のテーブルを片付けに行き見ないようにすると
後ろで女の子の嬉しそうな声が聞こえ、
「おかわりしていいの?もっと飲んでもいいのっ!」
と言い、そのあと何度かドリンクバーと自席を行き来してた。
その内女の子のランチが出来、私が席に持って行くと、
女の子はキラキラした目で
「ママ、ハンバーグだ!〇ちゃんハンバーグ大好きだよっ!」
と嬉しそうに弾む声で言うと、
ニコニコしながら母親と見つめ合ってた。
しばらくして母親が「〇ちゃん、お食べ」と言ったら〇ちゃんは
「ママのがまだだよ?」
と返事したら母親が
「ママはお腹いっぱいだから」
と返事したら、〇ちゃんは下を向いて泣き出した。
私はどうしたものか・と思ってた。
そのうち〇ちゃんは
「ママ、昨日も食べて無かったよ?」
と泣きながら言い、母親も下を向いて動かなくなった。
すると厨房から店長が昼のランチセットを持って親子の席に行き
「ごめんなさいね~おじちゃん、ママのを忘れてたよw」
と言いながら母親の前に置いた。
母親は「すいませんが私は支払えません」と言うと
店長はうちの新規会員カード記入用紙を持って行き
「お母さん、これ書いて」と告げ、
母親が記入するとうちの食事券2000円分を差し出し
「ありがとうございます!うちの新規会員様へのプレゼントです!」
とか言って母親に渡したら、
若い母親は泣きだして「すいません」と小さい声で答えた。
そして店長は
〇ちゃんの方へ向いていつもの怖い顔でにっこり笑い
「さあ、〇ちゃん、美味しく食べてね!」というと厨房へ帰った。
〇ちゃんは大喜びで母親に
「美味しいねっ!ママも一緒のハンバーグだ!」
とはしゃいで賑やかにランチを食べていた。
私は我慢できずに厨房へ行くと
シティハンターに出てくる海坊主に似た店長が涙をぽろぽろ流しながら
二人を見てた。
そして食事が終わった後、私が〇ちゃんの相手をしてるうちに
店長と母親は話をし、親子の境遇を聞いていたが、途中から店長は泣き出し、
私と店長の奥さんが助けに行った。
母親は孤児で就職先で恋仲になった男性と結婚したが
義母から壮絶ないびりを受け、施設出身者というだけで
生まれたばかりの〇ちゃん共々家を追い出された。
必死に働き生きてきたが
病魔に襲われ家賃も滞納し強制退去となり、
避難シェルターに行ったがそこでも色んな問題があり行き詰まって・・・という。
店長も片親でお父さんと二人で一生懸命頑張ってきたが、
店長が19才の時に仕事場でお父さんが無理をし続けた結果
脳内出血で倒れ逝去された過去があり我慢できなくなったとか。
店長奥さんも人生で苦労されたので、
その日のうちに〇ちゃんとお母さんはお店の倉庫で暮らすことになり、
お母さんはお店と他で働き、〇ちゃんは保育園に行くようになった。
そして私と〇ちゃんのお母さんは友人になり、もう20余年。
店長はすっかりお爺ちゃんになり、
ご夫婦共々お元気で、〇ちゃんは二人の孫みたいになってる。
〇ちゃん、おめでとうございます。
Hさん、頑張ったね!!
このお話はフェイクを含む実話です。
どうかコロナ禍の中、頑張る若い二人に明るい未来を!