居酒屋で知り合った刑務官に聞いた刑務所のはなし

少し前の池袋のひき殺し事件は
まだ風化していないよね。あの飯塚ね。

ある日居酒屋に1人で飲みに行ったら
たまたま同じ1人客の人が居て、結構飲んでいたみたいで
すぐに酒飲み友達的な感じになって話をした。
というか話を聞いた。
何でも拘置所の職員さんで

「本当はこういう話を外でしちゃまずいんですけどね」

と言いながら話し始めた。

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「ああいう偉そうな人を入れるのは面倒くさいから
こっちも本当は入れて欲しく無いんですよ」

「何かあったらすぐに逆切れして弁護士呼ぶし」

「気持ち的には被害者遺族の感情って分かりますよ」

「でも、うーん、なんて言ったららいいかなあ」

「例えば何人かと一緒に部屋で飲んでたとするじゃないですか」

「そこにゴキブリが現れて、誰かが始末してくれたら良いのにな、
って皆が思うじゃないですか、でも誰も自分ではしたくない」

俺はふと

「事故か自殺に見せかけて始末しちゃえば?」

言ってしまった。

彼はかなり長い時間無言でいたんだけど、
ぽつぽつ話し出した。

「聞いた話なんですけど」
(こういう場合に「聞いた話」って言うのは大抵自分の事だよな)
と思ったけど口には出さなかった。

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「前にイカれた老人が幼女を監禁して暴行して殺した事件があって」

「それで、当然逮捕されたんですけど」

「年齢が年齢なんで、犯罪者扱いというより
むしろ手厚い保護を受けてるような状態になってしまって」

「変な話ですよねえ」

「何の犯罪もしていない同年齢の老人が
公園でダンボールと新聞紙で寝起きしてるってのもあるのに、
3食世話してもらって、医者にもかかれるし、変な話ですよねえ」

それでね、と言った後またしばらく黙り込んで

「その同僚の知り合いが、いわゆる義憤に駆られて、
さっきあなたが言ったような事をやっちゃたらしいんです」

「まあ具体的にどんな事をしたのかは知りませんけど、
完全な密室ですし、立場的には絶対的に上ですし、
やろうと思えばいくらでも手段はあるわけです」

そしたらね、と言った後でまた少し黙り込んで

「夢に女の子が出てくるって言うんです」

「目が覚めて、あ、あの被害者の女の子だって思ったんですけど」

「おかしいって言うんです」

「感謝されるのなら分かるんだけど、
なんでか凄く怒ってる」

目が覚めてしばらくぼんやりしていたんだけど、
だんだん彼女がどんな事を言っていたのか
思い出してきた。と

「呪って呪って、あたしが死ぬより苦しい目にあわせてやるつもりだったのに、
お前が台無しにした」

って

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