姉が義兄を階段から突き落とした。
姉は美人で利発な人だ。女性らしく、
また身なりにもよく気を使うものだから、昔からモテていた。
そんな姉の妹である私は早々に姉のような生き方を諦め、
女性らしさを捨てた。
姉は大学を卒業してから暫くすると結婚した。
仕事を辞め、家庭に入った後も姉は身なりを整えていた。
家事には手を抜かず、エステに通い、女を磨き続ける。
全部男の為にやっていた事だ。それは子どもが出来ても変わらなかった。
それでも姉はあっさりと裏切られてしまう。
姉の娘、つまり私からしてみれば姪が中学校に
上がってから程なくした頃、義兄の不倫が発覚した。
姉は荒れに荒れて、義兄を殺したいとまで言っていた。
家庭がそんなだから、姪は私を訪ねてきた。
姉に電話すると、「娘を預かって欲しい」と言われた。
男に縋る姉の姿など見たくは無かったのでこの件まで私は姉を避けていた。
だから、私が姪を見たのは本当に久しぶりだった。
姪は最後に私が見たときよりも大きくなっていた。
私が姪を最後に見たのはまだ小学生に入る前だろうか。
姪は姉に似ていた。しかし中身は似ていない。
姪は聡明で自立心の強い子だった。
ただ住まわせるのも癪なので、
少し家事をさせることにした。私は仕事で忙しいからな。
不服そうな顔をしながらも、姪はしっかりと働いた。
私は洗濯くらいしかできないので、大いに助かった。
姪は自分の存在が母親の足枷になっているのを
理解しているらしい。
「私がいなければママは離婚できる」と言っていた。
私は「それは違う。あなたのお母さんは男に縋らねば生きていけない人だ」
と諭した。
姪は怒っていた。
それから程なくして姉が義兄を突き落とした。
幸い義兄は軽い怪我で済んだが、
姉は何故か手首を切ったらしい。
私はそれほどまでに義兄を愛していたのかと驚いた。
馬鹿だとも思った。
夫婦仲良く入院だ。
姪と共に病院へ面会に行き、時間を待っている間、姪と少し話をした。
姪は「なぜ、いつまでも結婚せずに働いてばかりいるのか」
といった様な事を尋ねてきた。
余計なお世話だと思いつつも、「一人で生きていくためだ」と答えた。
何か思うところがあったのか、それからは黙って俯いていた。
姉に会うと、姉は泣き出した。
姪に謝罪し、義兄と離婚する事を告げた。
私もそれに同意した。私のほうが姉さんを幸せに出来ると言ってみたが、
姉には「いつまでも男の真似事をするのはやめなさいな」と笑いながら言われた。
私も曖昧に笑って場を濁した。
姉に姪を無期限で預かって欲しいと言われた。
多感で微妙な時期になんて無責任な、とは思ったが、姪本人も「おばさんと暮らしたい」とか抜かすから、仕方無しに預かっている。
まぁ、大好きな姉の娘なんだ。可愛くない訳が無く、それなりに仲良く暮らしている。
相変わらず家事はやらせているが。 @