私は都電荒川線を良く利用する。
そう、東京都内に唯一残った路面電車だ。
勝手な決め付けかもしれないが、
私の中で都電は「お年寄の乗り物」だ。
だから、私は、けっして都電で座ることはない。
その日、始発に近い都電に乗ると、
私しかいなかった。
そのこともあり、私は、自分のルールを破って、
座った。都電で座るのははじめてである。
路面電車の為か、心地好いゆれがある。
それが私の睡魔を呼び起こした。
目がさめると乗客が増えている。
しかし座席が埋まっているわけではない。
誰一人たっていない。
降りるべき駅までまだまだ時間がある。
もっとも乗降の多い駅は既に通過した。
このまま眠っても問題あるまい・・・
しかし、一人居たのだ、DQNが。
私のとなりで、女子高校生が、
鞄を座席におき、立膝(!)をし、化粧をしている。
ここで、もう忍耐力への挑戦がはじまった。
次ぎの駅で全ての座席が埋まった。
この女子高生は鞄 自分の膝 体で三人分とってはいるが。
私は、私以上に眠りこけているサラリーマンと、
彼女の鞄に挟まれる格好となった。
次ぎの駅でそれは起こった。
杖をついたおばあさんが乗って来たのだ。
私の前に彼女はたった。
当然、私が起ちたいと思ったのだが、
「ちょとまて、この鞄さえうごけば、
このおばあさんはすわれるぞ。。。注意しようかな」
と思っている最中に
おばあさんが、女子高生に
「すいません。鞄をすこし・・・」
と。女子高生「はぁ?」
もうぶちきれた。しかし、
紳士であることは辞めたくない。
「いや、はぁ?ではなく、鞄どければ?」
と嗜めてみた。女子高生
「はぁ? なんで? 私がわかいから?
若いなら あんたも
そのとなりの伯父さんもわかいよ。
もううざい。」
もう、だめだ。この娘は確信犯(誤用)だ。
所詮似而非紳士なんだろう、
忍耐力の限界が訪れた。関西弁がでてしまった。
「ええかげんにせえよ、おどれがその鞄どけて、
おとなしいいすわったら
あと二人座れんのじゃ、はよ鞄どけんかい。」
とまくしたててしまった。終ったとたん
彼女が泣きだした。しまった。
やはり私は似而非紳士だ。
これではおばあさんの面目もたつまい。
なんということを。。。。 と戸惑っている時、
車輛の前のほうから、老紳士がやってきた。
「いや、この若い兄さんのおっしゃるとおりだ。
あたしゃ泣く猿というのをはじめてみたね。」
もう、女子高生は、パニック状態である。
しかし、老紳士の機転で、おばあさんは
老紳士が元座っていた席に座ることで、
難局はまぬがれた。
そのとき、次ぎの駅についた。
運転手がマイクで案内する。
「◯◯高校は次ぎの駅ですが、
そこの女の子、この駅で降りて下さい。
歩いて学校まで行って、歩きながら、
如何に自分が恥しいか見つめて下さい。」
「皆様、おさがわせしました。
車内美化にご協力、ありがとうございました」
車内から、拍手が起こった。