空は変わらず昔のままなんだろうな

20年ほど前、まだ嫁も俺も小学生だった頃
俺はそのころ家庭環境が荒れていたので、
ちょっと、他人からするとかなり病んでいた
そんな俺を夕方、嫁が急に連れ出し、犬のポチを連れ、
目的も告げずに嫁の祖父の運転で山奥までドライブをしたことがあった
どんどん人気のない寂れた道に入っていき、
そのうち人工物が見えなくなり
外灯さえなく、道以外周りは森森森

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これはよくある山奥に捨て置かれるやつかと
考えたあたりで、
今度は道の途中で車をとめて、
岩の川?溶岩が固まったような、
軽石に似た岩がゴロゴロと転がっているところを登るという
もはや道じゃない
空は明るいけど右も左も高い杉の木で囲まれて、
足元もそこまで明るくない
そこをポチが先導して歩ける場所を進んでいき、嫁があとに続き、
体力のない俺はヒーヒー言いながらついていった

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30分くらい岩を登ったあたりで道があり、
その道をさらにのぼると急に視界があけ、天文台があらわれた
登ってみると、そこは周りの山より一段高い山の頂上で、
人工的な明かりはなく、さらに空は雲ひとつない快晴
天文台から見上げる空は、筆舌に尽くし難い光景が広がっていた
まさに天の川、銀の龍のごとし
あれが本当に星なのか、
いつも見ている空なのかと疑いたくなるほどの光景だった
人生で見た一番衝撃的な光景だと断言できる

俺のクソみたいな環境の真上にこんな絶景が広がっているなんてと、
悩んでるのが馬鹿らしいような、不思議な感覚に囚われた
「カメラ持ってくれば良かった」とつぶやいたら、
嫁に「カメラじゃ持って帰れないよ?また来たらいいから」と言われた
時間を忘れて空を眺めていたけど、
勝手にそこらを駆け回ってた
ポチがそろそろ帰ろうと急かしてきたので
後ろ髪をひかれる思いで来た道を戻っていった
戻る時、岩の川の隣に登山道があったことを知った
「こっちの方が早かったんじゃ」と突っ込んだら、
「岩の方登るのが楽しいんじゃん!」とにかっと笑って言われた
ポチはご機嫌で帰りも岩の川を駆け回ってた

そしてあれから20年
嫁に「またあの山に行きたい」と告げたところ
「え、場所知らない」と言われて衝撃
また来たらいいって言いましたやん!
検索したら出てきたけど、
なんとあの山奥が観光地だったらしく、
この20年で山道もキレイにされてるような
情報もあってさらに衝撃だった
だけど人の手で登山道が整備されても、
空は変わらず昔のままなんだろうな

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