親友を自主退学に追いやった

高1の時、俺はクラスメートのKを自主退学に追いやった。
男子校で、中高とエスカレーター式に進学する学校だが、
高校進学時、外部からも編入する。

Kも俺も中学からこの学校に入学していたが、
同じクラスになったのは高1のときが初めて。

Kとは共通の友達を介して何度か軽く雑談をしたことがある程度の
距離関係だったので、校内で偶然出くわしたりなんかしても

「おぅ」

と声をかけるだけだった。

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しかし、絡む機会がほとんどなかったが
Kが俺に対して好意的だったことはなんとなく察してた。(※アッー!的なものではない)

同じクラスになり、当然Kと絡む機会が急激に増えた。
お互い共通の趣味(格闘技や漫画、バイク、ゲスな下ネタ話)
なんかもあったりして、打ち解けるのにそれほど時間はかからなかった。
そんな中、誰言うとなく

「Kと俺はHOMOw出来てんじゃね?w」

などという噂がチラホラ沸き始めた。
最初はクラス内に、徐々に学年全体に。
休み時間も昼飯も小便を垂らしにいくのも一緒。
ほとんどの行動を共にしてた。
たまたま偶然体調不良で学校休んだ日まで同じときた。
ムリもないか…。

ともかく俺は愕然とした。焦った。狼狽した。

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この類のレッテルを貼られることは、
繊細な青っちょろいガキ、少なくとも俺にとっては死活問題だった。
散々悩み抜いたあげく、俺は保身の道を選んだ。
徹底してKを突き放すことにした。

この苦悩は間違いなくKも同じだったろうに…。

Kはその後も俺や周囲に対して変わらない姿勢を貫き通してたが、
俺はそんなKを完全にシカトした。
挙げ句の果てには、Kと俺を誹謗中傷してた奴らに同調してKを叩く始末。

10年ほど前のちょうど今頃かな、Kは学校から姿を消した…。
つい最近、偶然、10年ぶりくらいに
Kを仕事帰りの最終電車で見かけた。間違いなくK。

先に気づいたのは俺。チラチラ視線を送る俺に、
Kも反応した。

わずか3秒足らずほどだったと思うが、
なんとも言えない不思議な表情でお互いを凝視した。

しばらくして、Kが静かに降車した。
電車はゆっくりと動き出す。

去っていくKを窓越しに目で追っていたら、
振り返って笑顔でパクパクと俺に何か言った。

何を言ったのかはわからないが、
中学時代に不意にすれ違ったときに俺が「おぅ」と話しかけたときに
彼が返してくれてた笑顔と何も変わってなかった。

10年を経て、やっと大切な親友を失ったことに気づいた。

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