金に困らない生活を手に入れた その代わりに家族を失った

大学4年の後は卒業を待つだけという時に
金に困らない生活を手に入れた
その代わりに家族を失った
俺は壊れた
就職が決まっていた会社には
仕事ができる状態じゃないと言い頭を下げた
怒られるかと思ったが同情された

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面倒な手続きが終わり俺だけの生活が始まった

生活は退屈
糸がいつ切れてもおかしくない操り人形が
だらんと垂れてる状態
金はあってもやる事がない
壊れた感情は取り戻せない
趣味だった事が楽しくなくなった

出勤する人を見ながら、
「毎日辛いけどやる事があって幸せだな」と思う毎日
様子を見に親戚や友人が来るが会話が続かない
そんな日々が続いた

なんとなくこのままじゃいけないと思うようになった
とりあえず、単車を目的もなく走らせるようになった

適当なPAでツーリング連中を避けて駐輪し、
隅でタバコ吹かしながらボーッと景色を見る
そんな習慣がつくようになった
最終的には地元の近くのPAをよく訪れるようになった

ある日、いつものようにボーッとしてたら
「何か見えるんですか?」と声をかけられた
見知らぬ女性だった
俺は「特になにも」と答えた

女性は
「毎回見かけるたびに
隅っこで同じ方向を見てるから、気になって」
「いつも一人ですけど、ツーリング仲間は?」
「女ライダーが珍しいのか、
よく話しかけられるけど鬱陶しいんですよねぇ」
「普段なにしてるんですか?ご職業は?」など
聞いてもないのに喋り倒し根掘り葉掘り聞いてくる

作業的な会話はしていたが
久しく人と会話をしてなかったため
返答がうまく出来なかった
だが、何がきっかけだったのか
何故か彼女に俺は現状の生活、心境を語っていた

誰でもよかったんだろう
ただ捌け口が欲しかったんだと思う

俺は泣いていた
何故か彼女も泣いていた
少しすると彼女は
「この後、予定ありますか?」と聞いてきた
こんな状態の俺だ予定などない「ない」と答えた
それを聞き彼女は
「じゃあ一緒に回って食事に行きませんか?」と提案
俺は「そちらが良いなら」と答えた

その後、彼女について行く形で走った
日も落ち始め、近くのファミレスで食事をした
食事中まだ彼女の名前を聞いていなかった事を思い出し
互いに自己紹介と他愛もない世間話をした

彼女は今年から近くの大学に通う大学生
単車乗りは父親の趣味が移ったらしい
実家暮らしだが家事は得意
将来の目標は無いけど母親みたいな旦那を
しっかり支えられる人になりたいなど、
教えてもらった

と、ここでふと気になった事があった
最初の会話で毎回俺を見かけていたことだ
俺は
「よくあそこに行くようだけど、
何もないPAになんで?」と聞いた

彼女は俯いて黙った
地雷を踏んだと思った俺は
「嫌なら答えなくて良い」と言おうした時
彼女は口を開いた

「私はお婆ちゃん子で、
家庭の事情で父親が大学に行けなく
せめて孫の私だけは行かせたいと
いつも言われていました
私の大学合格が決まった時は大はしゃぎで喜び
入学式は一緒に行くと息巻いていたんですが、
入学式目前に心筋梗塞で亡くなり一緒に行けなかったんです
その悲しさからか生前祖母とよく行った
あのPAの上のドライブインに行っていたんです。」
と彼女は語った

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俺は
「それは辛かったね。
余程お婆ちゃんが好きだったんだね。
でも、なんで俺に声かけたの?」と同情しつつ、
また疑問を投げかけた

「私もドライブインに行くとボーッと景色を見ていたので
側から見ると俺さんのように見えるのかなって。
声を掛けたのももしかしたら私と似た境遇なのかなと思い
話せば互いの傷を癒せるかと思ったんです。

でも、俺さんの境遇が余りにも壮絶だったので
言い出せなく私のことなんて些細なことと思い
それに俺さんが少しでも揺らいだら
ご家族の後を追うんじゃないかって感じて
少しでも笑顔になるようにと誘ったんです。」
と彼女は語った

俺は彼女も辛いのに
それよりも俺を励ませようとしたことに感謝し、
同時に良い子だなと思ったその時
彼女は
「あ、笑った。やっと笑った!
俺さん、ずっと無表情だったから、
笑えないのかと思ってましたよ。よかったぁ」

俺は「え?」と突然の証言に戸惑った
「笑った?そう言えばあの時から、
笑ったことなんてなかったかも」とポツリと呟いたら
不思議と笑いが込み上げてきた

何がおかしいのか互いに笑い始める二人
それから凍っていた感情が溶けていくかのように
談笑し食事を終えた
帰り際に彼女から
「今度ツーリングしませんか?」と言われ、
その場で連絡先を交換した

それから彼女とは頻繁に会うようになり、
ツーリングを楽しんだ
彼女と会うにつれ俺は感情を取り戻した

そして、俺は彼女と初めて会った日に彼女を呼び出し
「君のおかげで俺は感情を取り戻せた。
心から感謝している。そして、君を好きになった。
彼女さん、こんな俺で良かったら付き合ってください!」
と感謝の言葉と共に告白をした

彼女は「はい。喜んで」と即答したが、
俺たちは付き合い始めた

その後
彼女の帰りを校門前で待ち
彼女の友人たちに良い意味で煽られたり

俺の普段の食生活が気になると言い家に押し寄せ
いきなり料理の作り置きを作り始めたり

収入について一悶着起こし
賃貸収入で普通以上の暮らしはできると伝えたり

友達の家に泊まると嘘をつき俺の家に泊まり
それがバレて呼び出しを食らい
俺が彼女を無理矢理呼んだと勘違いされ
彼女の父親に眼力だけで人を◯しそうな目で睨まれたり

誤解が解けた途端
「結婚を前提に交際して欲しい」と
彼女両親から頭を下げられたり
すごく楽しい日々が過ごせた

家族を失った悲しみは今でもあるが
それをカバーしそれ以上の幸せな日々を過ごせた
やがて彼女は妻になり俺には第二の両親ができ、
同時に義理ではあるが弟と妹ができた
そして、先日家族ができる兆しが訪れた

それが嬉しくて書いた
あまりの嬉しさに書いたが途中から泣いてた
無事に生まれてきてくれ

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