院卒ニートが店を始めた。物欲しげな少年が店の前にいた。余り物をあげた後日にギャルママが来た。

院卒ニートだ
飛び級したとは言え大学院までいかせてもらって
ニートとか親不孝なのは自覚してた
実家でゴロゴロゴロゴロ

夏、ばあちゃん家へフラッと行くと
ちょうど神社祭かなにかをやっていた
祭りに言ってそのへんのおっさんらと話してみた

すると彼らは
「このへんは飯食う店がねーんだよな」
と口々に言う
聞けば、老夫婦がやっていた店があったんだが
奥さんが倒れて締めざるを得なくなったらしい

ばあちゃん家へ帰り、ばあちゃんにその話をした
その店は味はそこそこで安価、
それなりにいいお店だったらしい

「あんたどうせ働いとらんなら店やんなさいよw」
と冗談を言われたけど
ふと、いいかもしれないと思ってしまった

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翌日、その店に行ってみると
なんやかんやあって俺が従業員って形で
店を再開するのも良さそうだってことになった

奥さんの世話があるから、
おっちゃんは今まで通り働けるわけじゃなかったが
その分、俺が頑張ることで話がついた

お店をやっていただけあって
仕入れとかパイプは問題なかった

おっちゃんに色々教えてもらいつつ
資格も取りつつ
何回目かの夏になった

飲食店の厨房は灼熱地獄
汗だくになりながらも店をやっている日々
その頃にはおっちゃんが出られない時は
1人でやるようにもなってた

俺が1人の日
客足も落ち着いた頃
少し涼もうと外に出てタバコを吸ってた

すると1人の少年が店の前で立ち止まった
その時の少年は物欲しげな顔をしてた

「よっ」
「…」ペコ
小さくお辞儀をすると少年は走って行った
数日後、また俺が1人の日
またタバコを吸いに外に出ようと
扉を開けるとまた少年がいた

「おぉ」
「…」
「どうした」
「…」
申し訳なさげな顔をしてじっとしてる

別に子供が好きとかそんな性格はしてないけど
さすがにそんな表情をしてる子供をほっとけなかった

「あー…余りもんで良ければ食うか?」
「っ!」
少年の顔が一瞬明るくなった
お?っと思う間にまた申し訳なさげな顔になる少年

当然、余りものなんかあるわけはないんだけど
つい口をついて出た

まさか虐待されてるわけじゃないよな、とか
いやな考えが頭をよぎった

のびてヨレヨレのTシャツに暗い表情
話しかけても反応は薄い

俺じゃなくても、
この少年が恵まれた家庭の子ではないだろうってことは
すぐに想像できたと思う

「とりあえず入んな、ほら」
「…」
少年は躊躇してる

「余りもんで金は取らないから安心しなよ」
「…ごめんなさい」
心底申し訳なさそうな顔をして、
戸惑いながらも店に入った

「嫌いなもんある?」
「…」
「…なんでも食える?」
「…」コク
なかなかめんどくさい子供だと思った

とりあえずカツ丼を作った
作ってる間、少年はずっとソワソワしていて
やっぱり帰るって言い出しそうだから
目を合わせないようにしてた

作ってから気づいたけど
子供用に少し少なめに作れば良かったと思った
余ったら俺が食うか、と思ってそのまま出した

少年は唾を飲みながら
まじまじとカツ丼と睨めっこをしていた
なかなか食べようとしない

「早く食べないと冷めちゃうよ」
「ごめんなさい…」

ようやく食べ始めた

「食いきれなかったら残していいからな」
とは言ったものの、
少年はものすごい勢いでカツ丼を平らげた

見た限り、食べ方も汚くないし
箸だって正しく使えてた
普通、虐待されてるような子なら
箸の持ち方とか教わらないんじゃないのかなぁ
とか思ってたから意外だった

食べ終わった少年は少し明るい表情になってた

「腹一杯か?」
「…うん」
「いっつも昼飯食わないの?」
「…お母さん仕事だから」
「そうか、またいつでもおいで」
「…でも」
「余ったら捨てちゃうんだし、
食べてもらった方が助かるんだ」

店の外に少年を送り出すと
しっかりお辞儀して歩いて行った

その夜、おっちゃんに少年のことを聞いてみた

「このへんに男の子いるよね?」
「男の子?」
「小学低学年くらいの」
「いやぁ、よっちゃんとこのマサキしか知らねーや」
「痩せてて大人しい?」
「いや、デブだなwwもう高校生だしなwww」

おっちゃんひでぇ
しかもなんで高校生の話してんだよ

どうやら、マサキがこのへんじゃ最年少らしい
あとは赤ん坊しかいないらしい
つまり、おっちゃんネットワークには
あの少年の情報はなかった
虐待があれば田舎ネットワークは
一瞬で広がるはずなのに

翌日、少年はこなかった
仕事も終わって、おっちゃん夫婦と飯食ってると

「あ、俺たち明日からいないから、店頼むぞ」
「え?どっか行くの?」
「かみさんとハワイ行ってくるww」
「明日!?急すぎだから!」
「まぁ、お前だって大丈夫だろ?」
「いや、まぁ多分」
「じゃ頼んだ」

2週間1人ぼっち確定
翌日、またタバコを吸いに外に出ると少年がいた

「もしかして昨日も来てた?」
「あ…」
気まずそうにしてるとこをみると
昨日も来ていたようだ
「まぁ、入んなよ」

戸惑いつつも店に入ってくる
やっぱり食べるつもりで来てるらしい

さすがに一回食べてると
少し会話もできるようになった

「母さん仕事の日は毎日昼抜き?」
「夏休みだから…」
「普段は給食だな」
「うん」
「朝と夜は?」
「お母さんいる時は食べてる」
「いない時は抜きか」
「家はお金ないから…」

そんな感じで
ほぼ毎日のように食べにくるようになった

「どこに住んでんの?」
「〇〇、この前引っ越してきた」
「はーなるほど、親の仕事でか」
「うん」

「父さん?」
「お父さんいないから、お母さん」
「そっか、母さん好き?」
「好きだけど、ちょっとうるさいかも…」
「うるさいかwww母親ってのはそういうもんだww」

割とよく喋る子だってことがわかった

お互いにカンチョーとかする程仲良くなったある日
混んでいてクソ忙しい時に
珍しくギャルギャルしい女が店にきた

「すみませーん!」
「はい、いらっしゃーい」

チラッと見ると、
金髪ロングに色白で目鼻立ちがくっきりしてる
見る人が見れば美人と言うかも知れないが
一目見てわかった

こいつは嫌いなタイプだ
だってギャルギャルしいんだもん

ギャルギャルしいのは席にも着かず
「ユウタ(少年)の母ですが!」
一瞬ドキッとした
モンペきたー

確かにギャルギャルしいのの横には少年がいる
会ったばかりの頃みたいな
申し訳なさそうな顔をしてる

「あー、今忙しいから食べないなら後にして下さーい」
「わかりました。カツ丼2つお願いします」

食うのかよ
忙しいんだよ空気読めよ
少年が来たのはいいけど親が来やがった

ほかの客も大半が知った顔だし
極力大人しくしてたかったが
「おいおい!お前どこで
こんな綺麗な姉ちゃん引っ掛けたんだよww」
とか言ってくるドカタのオヤジ

「タケちゃんだって若いんだからいいじゃないのww」
とのたまうおばちゃん

頼むから黙っててくれ
ちなみにタケちゃんってのは俺だ

カツ丼が出来て持って行くと
「ユウタがいつもお世話になってるみたいで」
とか言ってきた
「まだ忙しいんで」
と断り、少年とも目を合わせずに対応した

で、間もなく客も減り余裕が出来ると
ギャルギャルしいのが寄ってきた

「この子が今まで食べた分も
まとめとお支払いします」

少年は俯いている
おそらく、うちのことを話して怒られたのだろう

「カツ丼2つで1700円です」
「今までの分はこれで足りますか」
3万出してきた

「今までも何もお客さん、
今日が初めてじゃないですか」
「ユウタがお邪魔していましたよね」

「ユウタ…さぁ、マサキしか知りませんが」
「で、でも、いつもこの子がこちらで!」
「来てません、大声出すなら早くお帰りください」

ギャルギャルしいのはぐぬぬと言いそうな顔で
少年の手を引いて帰って行った
少年はとても驚いた顔をしてた
少し悲しそうでもあったかも

見た目はさておき、
割とちゃんとした人かもしれないが
俺はそんなことどうでもよくて
ギャルギャルしいだけで
同じ空気を吸うのがイヤなほどギャルが嫌いだ

だいたい、ギャルって響きからして不潔っぽいし
ギャルってケバいし臭いしうるさいし
言い出せばきりがないほど嫌いだ

まぁそこはいいか
数日後、なんと少年がきた

ギャルギャルしいのと少年が帰った後
ギャルギャルしいのざまぁwwwww
メシウマwwwwww
とか少しテンション上がってた

追加するなら
ギャルと関わってプラスになったことがない

「お、どうした」
「お金…」
「いらんよ、余りものだし」
「でも、お金払わないのは泥棒だってお母さんが」

貯金箱をそのまま持ってきたようで
リュックからドカッと貯金箱を出した
「何円ですか?」
泣きそうな声で言われても困る

「これで足りますか」
とか、タメ口でケラケラしてたのに
また敬語になってるし
財布と貯金箱丸ごと差し出されても困るし

「多分それじゃ多すぎるかな」
「お詫びの分も…」
「だからいらないって」
「でもそれじゃ泥棒って」

少年は泣き出してしまった
「わかったよ、じゃ50円」
少年の出した財布から50円貰ってあとは返した

「それで、今日も食べるだろ?」
「でもお金…」
「今日も入れて50円貰ったんだけど」
「…」
「食っとけ、母さんにはお金払ったって言っとけ」

俺イケメンすぎワロエナイ

食い終わって帰り際
「また来いよ」
「いいの?」
「母さんには内緒にするか、
お金払ったって言っとけよww」

それでまたバレた時
少年が叱られるのは可哀想だけど
飯食えない方がキツいよな
なんて正当化してる俺は
きっとダメな大人なんだと思う

休みの日
前日に仕事終わってから
常連たちと朝まで麻雀をやったから
起きるともう夕暮れ時だった

タバコを買いにコンビニまで行った帰り
自転車に乗ったギャルギャルしいのがいた
仕事帰りだったのか化粧は薄めだった
でも金髪だったからカスktkr状態
顔をよけてすれ違うことにした

「あ!●●(店名)の方ですよね!」
声かけんなよドグサレカス!
なんて言葉を飲み込んだ

「えぇ、まぁ」
「あの子がまたご馳走になったみたいで、
お金払ったって言うんですが…」
「ちゃんともらいましたんで、それじゃ」

「あの子、ここでうまくやっていけると思いますか?」
「さぁ、僕も元々ここの人間じゃないんで。それじゃ」
「あの!私たち最近こっちに引っ越したばかりで…」
「聞いてます、頑張って下さい。それじゃ」

ここまで行って逃げた
というか、無理やり切り上げて歩き始めた
困った顔したギャルカスざまぁwww
今夜のネタにしてやるぜひゃっはーww
くらいに思った

そういえば、
少年は8月になってから引っ越したって言ってたし
夏休み明けから登校するとか
前は広島にいたとか
野球したいけどきっと道具高いしとか言ってた

確かに、夏休み中に引っ越してきて
学校にもまだ行ってないとなれば
遊ぶ友達もいないだろう
母親も仕事で不在ならなおさら寂しいだろうなぁ
うちの常連に学校関係者いなかったかなぁ

なんて考えてるうちにギャルカスの困り顔を
ネタにするのを忘れてた

俺は実家に連絡して、
もう使ってないグローブやバットを送って貰うよう頼んだ
少年野球やってた頃のグローブなら
少年でもサイズ的に問題ないだろう

やたらと思い出だから、と
物を取っておく両親にやや感謝
グローブボロいけど

数日後にまた少年が店に来た

「今日暇か?」
「うん!」
なんかあるのかと少年は少しキラついた顔をした

「じゃ食ったら公園に行こう」
「うん!でもお店は?」
「おっちゃん、少し外れていいよね?」
「おう、夕方までには戻れよ」
「親かww」

で、飯食い終わってから2人で公園に向かった

「ほら、ボロいけど良かったら使いな」
「あ!グローブ!」
「キャッチボールすっぞー!」
「おー!」

いざはじめてみると見事なオカマ投げ
多分初めてなんだろう
投げ方を簡単に教えると、
若いだけあってそれなりに見れるようになった

一時間くらいしてやめた

「それやるから持って帰れ」
「いいの?」
「俺もう手入んないし」
「やった!」

「学校始まったらそれで友達作りな。
学校いつから?」
「明後日から…」
「不安?」
「うん…」
「3日も通えば慣れるww」

翌日、はいきましたギャル
少年を引き連れて
開店時間きっちりのご来店
営業中の札かけにいったら
店の前に張り込んでやがりました

「昨日グローブを頂いたみたいで…」
「俺もう使えないんで」
「凄く喜んでるんです、本当にありがとうございます」
「いえいえ」

ギャルギャルしいのはそれだけ言いに来たらしい
「今日もキャッチボールしようね!」
「うい、じゃ3時に公園な」
「うん!」

その日、キャッチボール中に
ギャルギャルしいのの職業が看護婦だと聞いた
看護婦で金髪とかダメだろjk
夜勤とかあって1人の夜もあるらしい
前までは学童保育のとこに泊まっていたらしいが
こっちに来てそういうのがないから1人らしい

「じいちゃんばあちゃんいないの?」
「いるよ」
「こっちにいんの?」
「ううん、カナダ」
「は?」
「カナダ」
「マジか」

なんでも、じいちゃんがカナダ人
ばあちゃんはカナダと日本のハーフ
しかもギャルカスの金髪は地毛らしい
とんでもねぇ一家だった

父親のことはさすがに聞けなかったが
ギャルギャルしいのは概ねカナダ人だった
四分の三がカナダ人
父親が日本人だとしたら少年は八分の三カナダ人
やけに目鼻立ちくっきりだと思ったらそういうことか

「カナダには戻らないの?」
「え?英語わかんないよ?」

カナダに行くつもりはないらしい

俺も韓国人の友達いないから
韓国なんて国は存在しなかったんだね!
平和だね!

翌日、少年は学校で仲良くやれてるかなぁ
とか考えながら時間がたち、夕方になった

店の扉が開いたと思うと少年だった
しかもめっちゃ笑顔

「よう」
「今みんなでキャッチボールしてたの!」
「友達できたかww」
「うん!でもみんな家遠いんだ…」
「このへんは街から離れてるからな、
まぁでも学校楽しくなりそうだろ」
「うん!ありがとう!」
「あいよ、またそのうち来いよー」

それからは、たまに少年が店に顔を出し
遊んできただの宿題たくさん出ただの話したり
キャッチボールしに行ったり飯食わせたりしてた

昼間でも涼しくなってきた頃
休みだったのでばあちゃんと飯食いに行くことにした
「孫にご飯食べさせてもらうなんて初めてだよww」
なんて言いながらしわくちゃになるばあちゃん

何回か飯食いに行ってんのにボケ始めたんだろうか

飯食って、その辺プラプラして図書館で休憩して
帰るかなって頃には3時半頃だった
たまたま通り道だった小学生の前を通り過ぎると
「タケちゃーーん!!」
声の方を見ると少年だった
隣りにはギャルギャルしいのがいる


「今日参観日でお母さんと帰るんだ!」

「そりゃ良かったな」

「タケちゃんのおばあちゃん?」

「そう、家のボス」

「お人形さんみたいな男の子だねぇ、綺麗なお顔してw」

「いつも息子がお世話になってます」

みたいな、ごちゃ混ぜなやり取りがあって
「タケちゃんも一緒に帰ろよ!」
と、少年親子と途中まで一緒に帰ることになった

道中、ばあちゃんとギャル
俺と少年
ってな具合に自然と並んでた
というか少年が俺の横に来て勝手にそうなった

俺が少年の話を聞いている後ろでは
我が家のボスによる人生相談室が開催されていた
そして
「なんかあったら家を頼りなさい」
「いえそんな、でもありがとうございます」
「まぁ家にはこんな老いぼれと
彼女いない残念なやつしかいないけどwww」

おいババア嘘吹き込むなよ
ギャルギャルしいのも笑ってんじゃねぇ

そのうち、家と少年宅との分かれ道に着いた


「それじゃ、私たちはこっちなんで」

「あらそうかい、じゃあんた送ってやんな」

「いやいや、ばあちゃん1人じゃん」

「女性と子どもだけにする方が危ないんだから」

「いやいやいやいや」

「ほら行った行った」

結局、ギャルギャルしいのと少年を送ることになった

3人の帰り道

「いいお婆さんですね」
「ただのお調子者ですよ」
「でも羨ましいです、
あの、タケちゃんみたいな家庭」

「…はぁ」

「すみません、タケちゃんとしか知らなくて、
お名前聞いてもいいですか?」
「ノリタケです」
「あ、ノリちゃんじゃないんですねww」
「タケの方を取られるのはこっち来て初めてで」
「でもそういうの良いですねww」

ケラケラ笑うとこは少年の母親だなって感じだ
一応言っとくけど名前は偽名だからな

なんやかんや少年宅に着いた


「今日はありがとうございました」

「いえいえ、ばあちゃんも言ってたし、
なんかあればいつでもどうぞ」

「ありがとうございます、助かります」

「タケちゃんバイバーイ!」

「じゃあなー。あ、あと一応言っとくと
彼女いたことあるんで」

「え…あっははwwwwわかりましたwwwwww」

ほんまやで

それ以来、ばあちゃんも
少年親子を気にかけるようになって
親戚からなんか送られてきたら
お裾分けと言って俺をパシりに使ってた

それで冬が近づいてきた頃
夜、少年から電話があった

「タケちゃん、お願いがあるんだけど…」
「おう、どうした」
「今日、お母さん夜勤なの」
「そうか、じゃ一人か」

「うん、あの…今からタケちゃん家いってもいい?」
「あーなるほど、いいよ」
「本当に!?」
「うん、泊まってけ。1人だと寂しいだろ」
「やった!じゃ今から行くから!」
「いや、俺迎えに行くから待っとけ」

「え、でも…」
「待っとけ」
「わかった、待ってる」

少年宅へ着くと、玄関に座って待ってた
とりあえず明日の準備をさせて、
母親に連絡を入れさせた

飯は済ませたようだが風呂はまだみたいだった
道中、少年はやけにテンション高かった
俺も、お泊まり会とかは
やけにテンション上がった記憶がある
子どもってのはそんなもんなんだれう

家に着くと、ばあちゃんも歓迎モード
お腹減ってないかとかなにかと質問責め

風呂で少年はやたらにはしゃいだ
広い広いと言ってずっとニコニコしてた
そんな広い風呂ではなかったけど
アパートに比べりゃ幾ばくか広いかもしれない

布団に入ってからも、
突然小さく笑い出したりととにかく騒がしかった
無意味に俺をよんでは、何でもないと言う
ムーミンのAAみたく

翌朝、少年を自宅まで送って
学校へ向かうのを見送ってから店に向かった

店を開けて間もなくギャルギャルしいのがきた
夜勤明けだからか疲れた顔をしてた
仕事メイクなのに目元がクマで暗い

「昨日、あの子がお世話になりました」
「いえいえ、お仕事お疲れ様です」
「なんとお礼を言っていいか」
「お礼はいいけど、なんか食べます?」
「あ、そうですよね、じゃ生姜焼き定食を」
「はーい」

夜勤明けなのに割とガッツリ食うんだな
とか思いながら厨房に下がって作り始めた
おっちゃんは新聞読んでる、働け

完成したものを持って行くと
ギャルギャルしいのはテーブルに突っ伏して寝てた

夜勤ってのはキツいだろうから起こすのも忍びない
まだこむ時間でもないし
そのまま寝かせておくことにした
カウンター席だし客が来ても邪魔にならんだろうし

ある程度混んでくるとギャルも目が覚めた
モゴモゴとすみませんとかなんとか言ってるけど
それでも目は開ききってない感じ

帰ると言うのでそのまま送り出して厨房に戻った

次の客がきた時
「おーいタケ!!姉ちゃん寝てるぞ!」

店に入るなり声をはった常連
呼べれて言ってみると、
入り口のすぐ横に座り込んで
ギャルギャルしいのが寝てた

肩を揺すって起こそうとすると
「んぁ…すみません大丈夫です大丈夫です」
と繰り返す

仕方ないから常連に手伝わせて
店の奥に運んで寝かせた
背が高いからか、細い割に重かった気がする

その日はひどかった
伝言ゲームみたく話が広がって
俺がギャルギャルしいのとできてるだの
薬を盛っただの

冗談とは言え田舎の人間はえげつない噂話が大好物だ
生きる糧と言ってもいい

こんな田舎に金髪ギャルが引っ越してきたわけだし
数ヶ月経ってみんなギャルギャルしいのを知っていて
何者なんだと気にしていた

その日はひどかった
伝言ゲームみたく話が広がって
俺がギャルギャルしいのとできてるだの
薬を盛っただの

冗談とは言え田舎の人間はえげつない噂話が大好物だ
生きる糧と言ってもいい

こんな田舎に金髪ギャルが引っ越してきたわけだし
数ヶ月経ってみんなギャルギャルしいのを知っていて
何者なんだと気にしていた

ギャルギャルしいのが起きないまま夕方になった
少年が友達と遊んでから帰宅する時間は大体いつも同じなので
その時間に店に顔を出さなければ直帰してるだろう
ましてや今日は母さんが夜勤明けで家にいるはずだから

その時間を見計らって電話をかけた

やっぱり少年は家に帰ってた
店に母親がいることを伝え、少年を店に呼ぶ

「今日、いると思ったのにいなくて
まだ仕事してるのかと思ったw」
「職場から真っ直ぐここ来たみたいだな、そんで寝た」
「もう起こしていいよね」
「いんじゃないか?」

少年が声をかけると
ギャルギャルしいのはすぐに起きた

「あ、ユウタおかえり…」
「お母さん、ここタケちゃんのお店だよww」
「え、あ!ごめんなさい!私寝ちゃって!」
「いいよいいよ、夜勤って大変そうですし」
「本当にごめんなさい」

なんやかんやで、少し早いけど
せっかくだからと、
親子揃って飯を食って行くことになった

食い終わってそのまま2人仲良く帰った
帰り際にギャルギャルしいのから
昨日のお礼と、今日のお詫びをされた

それからは、
ほぼ夜勤のたびに少年は家に泊まりに来た
ムーミンのAAみたいのも、最初の頃で落ち着き
普通に来てくつろいで寝て

なかなか平穏な日が続いていた
クリスマスイブ、ちょっとそれが揺らいだ

「タケ、お前いい歳なんだから
クリスマスくらい彼女と出かけろ」
「彼女なんかいねーよ、こんちき」

「今日はもう店閉めるから帰れ、な?」
「まぁ、今日は客も来ないか」
「だろ、たまには早上がりもいいだろ」

おっちゃんもこう言ってるから
いつもより早く帰ってゴロゴロしてた

リア充なばあちゃんも
ババ友とクリスマスパーティーらしい
帰ってきた頃にはもう居なかった

一人遊びでもするか、と思ってるとベルが鳴った
俺を訪ねてくる人は稀なので、
ばあちゃんの客だなと思い玄関へ向かう

玄関を開けると少年が立っていた
しかも泣きながら

「どうした?」
「今日泊まっていい?」
「いいけど、なんで泣いてんの?」
「だって…」
と、さらにしゃくりあげる少年

「母さんいないのか?」
「お母さん、は、いる」
「そうか、まぁ上がりな」

家にあがると
居間で正座してまたシクシクと泣き始めた

どうせ親か友達とケンカでもしたんだろうな
と思ったから
とりあえず泣き止むまでほっとくことにした

案の定、間もなく
ギャルギャルしいのからメールがきた
やっぱり少年とケンカしたらしい
理由までは聞かなかったけど

なんか静かになったなぁ、と思ったら
泣き疲れて寝たらしい
ストーブ付いてるから寒くないと思うけど
一応タオルケットをかくておいた

日も沈んだ頃、少年が目を覚ました

「ケンカしたんだって?」
「…」
「まぁ、よくあることだからな」

「タケちゃんもお母さんとケンカするの?」
「ケンカどころか刺されたからな」
「え…」

「刺されなかったろ?」
「う、うん」
「じゃあ、なんて言われた?」

まぁ聞き出すと
今日は一緒にケーキを食べる予定だったと
でも急に仕事が入ってしまう
少年がゴネて、親子で揉めて
なんやかんやで
「タケちゃん家に生まれたかった」と
そしたら「じゃ出ていけ、もう知らない」
ということらしい

事の顛末をなんとなく言い終わると
少年は泣きながら
「お母さん泣いてた」
「お互い様だな」
「うん、でもお母さん泣いてるの2回目」
「へぇ、一回目は?」
「多分、お父さんがいなくなった時」

正直言って、聞かなきゃ良かったと思った

「僕小さかったからわかんないけど、
お父さんいなくなってからお母さんずっと泣いてた」
「それ覚えてたから、
お母さんのこと大事にするって決めたのに」

「お母さん怒ってるかな?」
「明日謝れば許してくれるだろ」

「本当に?」
「本当に」

「タケちゃんも一緒に行ってくれる?」
「家の前までな」

「一緒に謝ってくれない?」
「お母さん泣かせたのユウタだろ?
ちゃんと1人で謝りな」
「わかった…じゃ家の前までね」
「家の前までな」

その日は帰ってきたばあちゃんと3人で
普通に飯食って、普通に寝た

翌朝、少年に起こされた
「タケちゃん、携帯鳴ってるよ」
「あ゙~…」

「朝早くにすみません」
朝っぱらからギャルギャルしい声だ
「ユウタ、そっちに居ますよね?」
「あー、はい」
「今から迎えに行きますんで」
「あー、はい」

冬の朝6時とか眠すぎるんですけどー

「母さん迎えに来るって」
「え、謝るのに?」
「あー…じゃ来たときに謝れば?」
「タケちゃんも居てくれる?」
「居てあげない」
「ケチ」

ほどなくしてベルが鳴った
玄関にはギャルギャルしいの
「ご迷惑おかけしちゃって」
「まぁとりあえず中にどうぞ」
「え?あ、お邪魔します」

とりあえず居間に通す
居間が一番暖かいから
で、少年に居間へ行くように促す
渋々居間に入って行く少年

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俺はとりあえず台所で
ばあちゃんと一緒に朝飯を作ることにした

30分も経たないくらいで、2人揃って台所にきた
2人の表情を見ると無事解決した様子

とりあえず朝飯を食べさせると2人で帰って行った

年末、30日
正月は店も休みだからたまに帰省するかなぁ
と荷物をまとめてたら少年から電話がきた

「一緒に初詣行こう!」
「母さんと行っとけ」
「タケちゃんも一緒に行こうよ」
「家、ばあちゃんいるからなぁ」
「じゃ、ばあちゃんも!」
と、ここで電話がギャルギャルしいのにかわった

「ワガママ言ってごめんなさい」
「元気そうでいいと思うけど」
「お正月は親戚で集まったりする予定?」
「予定はないけど、
こっちに人が来るのは2日以降だろうなぁ」
「もし良ければ、みんなで年越しでもと思って」
「あー、ちょっとばあちゃんに聞いてみる」

久しぶりにお節でも作ろうか、と
乗り気なばあちゃん

「いいって、お節作るって張り切ってるから
適当な時間に家に来たらいいよ」
「やった、お節作るの手伝いに早めに行きまーす」

翌日、昼前に2人がきた
お節やら年越しそばの材料を
4人で買いに行くことになった
俺は荷物持ち要因

ばあちゃんは、賑やかな年越しは久しぶりだよ
といつもより嬉しそうだった

手早く物を選んで会計へ
ギャルギャルしいのが払おうとしていたけど
ばあちゃんが
「皆様から頂いた年金だから還元しないと罰が当たる」
と言ってばあちゃんが払った

帰宅すると女2人は早速台所に入った
曰わく、今日の台所は男立ち入り禁止
とのこと

暇だから少年とプロレスやったり、
冬休みの宿題を見てやったり
少年は国語も算数も得意らしい
しかも勉強が楽しいとか言う宇宙人だ
試しに、英語教えてやるかと聞くと
目をキラキラさせてた

夕飯はちょっとしたオードブル、お節は元日
大人は酒を、少年はジュースを

ばあちゃんは早々に
「久しぶりに働いたら疲れた」
と言って自室へ向かった
「ばあちゃんも初詣行くだろ?」
「朝に友達と行くから、夜は若いのでいっといで」

まぁ、年寄りに夜更かしはキツいだろう

9時を過ぎた辺りで少年も電池が切れてきたようで
急に大人しくなった

「眠いか?」
「ん~大丈夫…」
「初詣の時間になったら起こしてやるから少し寝ときな」
「絶対?」
「絶対起こすから」
「わかった」

と、居間の片隅にタオルケットで寝かした

俺とギャルギャルしいのの2人になった
酒を飲みながらなんやかんやと話して、
少年の話になった

「あの子、こっち来るまで
すっごく大人しい子だったんだ」
「へぇ~、確かに最初は喋んなかったなぁ」

「それが今では友達もいるし、家でもよく喋るし」
「いい事じゃん」
「悔しいなぁって」
「何が?」
「私、タケちゃんに嫉妬してるんだ」

離婚した時、
絶対に子どもは真っ当な人間に育てるって決めて
片親だからって絶対周りは悪く言うから
そんなの関係ないってくらい大事にして
私は何言われてもいいけど、
子どもだけはしっかりさせようってやってきたのに

タケちゃんに会ってからだよ
内向的だったのに急に明るくなって
友達だってすぐに作っちゃうし
勉強だってするようになっちゃったし

やっぱり片親ってダメなんだなぁって思っちゃった
子どもじゃなくて、親がダメなんだって
多分、ユウタはタケちゃんを
無意識に父親に見立ててるんだよ
それでタケちゃんと会ってから
急に中身が成長したんだと思う

だからタケちゃんに嫉妬してる

ってことを止まらずに喋ってた

ギャルギャルしいのだって
ギャルギャルしいのなりのプライドがあって
いつもキリッとしてバリバリ働くぜ
みたいな感じだと思ってたら、
弱音吐きまくってるし
金髪で気強そうでも、
やっぱりそういう不安あるんだなぁ

って感心というか納得というか
なんか安堵感みたいなものをおぼえた

「母親の私より、
近所の兄ちゃんの方があの子を成長させてるんだよ」
「たまたまそういうタイミングだっただけだって」

「それでも、それ親からしたらちょっと寂しいよ」
「気にしすぎだろ」

「なんか自信なくなっちゃった、
私ってあの子にとって本当に必要なのかぁって」
「そういうのはキリがないから考えない方がいいよ」

「私はちゃんと母親やれてるのかな」
「立派な母親だって」

飲むと良くない方に向かうらしい

結局、初詣に出る時間までギャルギャルしいのは
弱音吐きまくりでかなり弱々しかった

「そろそろ時間か」
「あ、本当だ、ユウタ起こさなきゃ」
パシパシと自分の顔を叩いて気合い入れてる

「ユウター、初詣行くよー」
「ん~…」
「起きないとタケちゃんと
お母さん2人で行っちゃうよー」
「んー、起きるー」

寝ぼけ眼の少年を連れて外に出ると
さすがに寒くて目が覚めたよう

神社には、田舎だけあってまばらに人がいる程度
出くわした常連にはかなりいじられたが適当に受け流した

おみくじを引いてお神酒をもらって
雰囲気を楽しんだところで帰路についた

途中、少年宅によって着替えとかを用意

家に着いて、風呂に入るだの入らないだの
綺麗な身体で新年を迎えよう
ってことで結局入ることになった

少年が母親と入るとか俺と入るとか言って
みんなで入るとか言い出した時は
さすがにお断りした
色々とえらいこっちゃ

最終的に俺と少年で入ることになった

もう何度か一緒に入っているので
ちゃちゃっと上がった

次にギャルギャルしいのが風呂に向かった
女の人ってのは風呂が長い
待ってる間に少年は寝落ち

そろそろ起きてるのキツいなぁって頃に
ギャルギャルしいのがあがってきた
濡れた髪が色っぽい

「あ、待っててくれたんだ」
「一応ね」

「ちゃっかりくつろいじゃってすみません」
「くつろいでもらえて何より。ユウタは寝たよ」
「あ、もう3時かぁ」

「俺も寝るわ、客間に布団敷いてあるから」
「ありがとー」

なんで同じシャンプーと石鹸なのに
いい匂いがするのか

翌朝、そこそこに起きてお節を突っついた
ユウタにはお年玉をあげた
5円玉をぽち袋パンパンに入れてやったら
飛び跳ねてた
まだ金の価値がよくわからない子供は楽

適当にグダグダ過ごして夕方、2人は帰って行った
ギャルギャルしいのは翌日、早番らしい
少年は残ると言っていたけど帰らせた
なんかあんま家にいさせると
ギャルギャルしいのがまた無駄に悩みそうだったし

うちと、少年親子が集まったところで
4人だからやかましくもならないし
かえってちょうどいいくらいになるから
何かと集まって過ごすようになった

店のおっちゃんとか常連からは
本格的に嫁とか息子ってからかわれるようになった

ある日、ドカタの兄ちゃんな常連がいた

「タケ、今日合コンあんだけど行かない?」
「どこで?」
「街、車出すから、急に1人増えたんだよ」
「店終わってからなら」
「よし、じゃ7時に迎えに来るから」

こっち来て初合コン
どきむねわくてか

おっちゃんの厚意で早上がりして
おしゃんてぃに着替えて臨んだ
男の顔ぶれはドカタ3、公務員1、飯屋1

会場となる店にはもう女性陣が待機してた
顔ぶれはゴスロリ1、バグベア4
どーもならん

でもそこはドカタ連中のノリの良さで
まぁ、久しぶりに
若い雰囲気を味わったような気がする

特に繋がりもできなかったので内容省略

一つ言えるとすれば、
腕の産毛を剃らない人は嫌いじゃないが
ガチ毛はあかん

反省会

「みんな、正直すまんかった」←設定者
「なんか臭かった」
「ゴスロリ足臭かった」
「バグベアAのフケやべぇ」
「腕毛がエスキモー並」

みんな思うところがあったよう

後日、ギャルギャルしいのたちが家に来て
ばあちゃんと少年が寝てからその話をした

「へぇ~、楽しそうだね」
「相手には申し訳ないけどしんどかった」
「へぇ~」
「…」
「へぇ~」
「なに?」
「べっっっつにぃ」

書いてたら気づくけど、これもうあれですやん

翌朝、2人が帰る時
ギャルギャルしいのは、それじゃっと
力強く言って帰ってった

まぁ、ちょっとした余談でした

4月、まだ寒いけど日差しが心地いい日
少年の学校は始業式

昼過ぎのまだ忙しい頃、やたらと携帯が鳴ってる
発信元は知らない番号
最初は無視してたけどあんまりしつこいから出た

「はい?」
「あ!ユウタ!ユウタがぁ!」
なんか泣きながら叫んでるけど
ギャルギャルしいのだった

取り乱してて何を言ってるか
よくわからなかったけど
どういうわけか少年が病院にいるらしい
それも状態がよろしくない

電話を聞いてたおっちゃんが
気を利かせてくれたから
とりあえず病院に急いだ

病院について受付で
少年とギャルギャルしいののいるとこを聞いた
病室にいるみたいで、そこに行くと
ベッドに寝た少年と
傍らで俯いてるギャルギャルしいナース

ギャルギャルしいのが俺に気づいて立ち上がった
目は真っ赤でまだ泣いているよう

今にも倒れそうなギャルギャルしいのが
弱々しく状況を話した

始業式の帰り、車にはねられたらしい
頭を打っていて意識不明
CTを見る限り、脳に損傷はないようだけど
脚を大怪我、打撲擦り傷多数

喋ってる最中、泣き崩れるギャルギャルしいの
結局、どうしようもなくある程度そこにいると
「ご近所さんってだけど呼んじゃってごめん」
と言われ、今日はもう帰っていいよと促された

ギャルギャルしいのは病院に泊まったらしい
翌日、病院に行くと病室には2人

「このまま目覚まさなかったらどうしよう」
「脳は大丈夫なんだし起きるよ」
「この子がいないと私生きていけないよ」
「大丈夫。それより寝てないんじゃないの?」
「私どうしたらいい?どうしたら目覚ますの?」
「ひとまず休みな、俺が見てるから」

それでもどうしようどうしようと呟いてた

2人で少年のベッドの横で並んでた
すると、ギャルギャルしいのは
少年との思い出を話し始めた
どこへ旅行に行ったとか何を食べたとか
それでも少しすると、どうしたらいいの?と言う

トイレに行きたくなって立ち上がると
「どこ行くの?」
「ちょっとトイレ」
「帰らないでね、1人にしないで」
「すぐ戻るから」
「絶対?何分?」

気が動転してて少し危ない感じになってた

面会時間も終わる頃、医者がきた
ギャルギャルしいのの病棟の医者なようだ

「鈴木さん、今日は帰った方がいい」
「大丈夫です」
「帰りなさい、身体壊す前に」

結局、帰されることになった

「今日泊まりに行っていい?」
「いいよ」
「ありがと、ちょっと1人にはなりたくなくて」
「明日には目覚ますよ」

夜、風呂も1人が嫌だとか言い出した
さすがに脱衣所にいるってことで勘弁してもらった

交互に風呂に入り、
部屋に戻るまでずっと話してた
「この子がいないと生きていけない」
ってのが大袈裟じゃなく、
それだけ心のより所だったよう

寝る時まで一緒だった

なかなか寝付かなくてずっと喋ってた
数時間しか寝られずに朝

おっちゃんに無理言ってその日も休んで
ギャルギャルしいのと病院へ行った
状況は相変わらず
返事はなくとも何度も少年に話しかけてた

昼過ぎ頃、眠くてウトウトしていると
「ユウター!!!!」
ものすごい声がした
少年が目覚めたよう
因みに俺の目も覚めた

目は覚ましたものの、
放心状態な少年を目の当たりにして
ギャルギャルしいのはまた泣き崩れた

俺もどうしていいかわからず、
2人にかける言葉も見つからなくて
棒立ちになってた

何分そうしてたかわからないが、少年が喋った

「お母さん…脚痛い」

ギャルギャルしいのも俺も驚いた
ギャルギャルしいのはまたさらに泣く

少年が俺に気づいた
「タケちゃん、全部痛い」
「お、おぉ」

俺も動転しててまともに返事できなかった

意識を取り戻してからは早かった
見る見る元気になって、いつもみたく笑顔
ただ、入院生活はつまらなくて嫌そうだった

少年が起きて、ギャルギャルしいのも落ち着いた
取り乱しちゃって、と謝られたけど
むしろいいネタをたくさん頂きありがとうございます

少年も無事退院したから
快気祝いとお裾分けを兼ねて
ハムを少年宅へ持って行った
酒をもらってしまい、
ついつい泊まることになった
少年は早いうちに寝た

ギャルギャルしいのが
早速ハムを軽く料理して酒のつまみにした
程よく飲んでつまみもなくなった

「自分で持ってきといてなんだけどうまかった」
「わ、私はもっとおいしいよ」
「え」
「冗談冗談ww」

なにかがアップを始めた

食器片付けるかぁってことを言うと
自分がやるから風呂どうぞと勧められた
それも悪かったから、
俺が洗っとくから先に入るように言うと
「え、一緒?」
「そうそう、一緒一緒。嘘だけど」
「一緒でもいいよ」
「いや、入んないよ」
「一緒の方が節約なるし」

結局一緒に入ることになった

もちろん、
期待してなかったと言えば嘘になる
大いに期待していた

一緒に食器を洗っている時といったら
初めてそういうお店に行った時のようなドキドキ感
さらになんか無言

真横に立って見る
ギャルギャルしいのの顔はかなり整ってた
化粧も落としていて、それでも濃いめの洋風顔

俺は元々、
夏帆みたいなのがドストライクなんだけど
どうやらギャルギャルしいのに毒されたよう

片付けも終わって、お互いぎこちなく
「じ、じゃぁ」
とか言う

さすがになんか、ただの仲良いめのご近所さん
ってだけで一緒に風呂は良くないよなぁと思って
それとなくなかったことにしようとした

そして、なんやかんやで付き合うことになった
なんやかんやは本当になんやかんやあって
めんどくさいし書いても賛否両論ありそうだから省略

この日は結果的に風呂は別々
寝る時も少年を挟むような形で就寝

残念ですが開店休業

翌朝、少年に起こされると
向こう側のギャルギャルしいのと目があった
むずがゆいような感じ
でもなんか嫌な気持ちじゃなかった

っていうかなんでこんなに暑いわけ
くっそあちぃなこの野郎

朝、少年と一緒に出発しようとしていると
ギャルギャルしいのに呼び止められた
まぁつまり、
付き合ってるんだからちょっと待ちなってことらしい

「付き合ってるってことでいんだよね?」
「うん、多分」
「煮え切らないなぁ、キスとかさ」
「マジか」

で、まぁキスをして少す話して俺も店に向かった

それからはどこかに出かける頻度も増えたし
少年が寝た、もしくは不在の時はイチャイチャもした

そんな感じでしばらくたつと、
大体3人でいることが多くなった
というか、大体どちらかの家に集まってた

ある日、珍しく家にばあちゃんと2人の時
また珍しく真剣な顔をしたばあちゃんがいた

「あんた、リエちゃんとはどうするのさ」
「どうって、何が」
「リエちゃんだってもう若くないんだから」
「?」

「早く結婚してやんなさい」
「は?」

「結婚して、家に住まわせた方が何かといいでしょ」
「いや、ちょっとそれはまた今度」

突然の話でかなり焦った

そんなことがあってややしばらく

店のおっちゃんが経営会議だと言ってきた

「うちの息子がな、こっちに来いって言うんだ」
「やったじゃん」
「タケ、お前店やれ」
「え」
「どうせ店なくなったら仕事ねぇだろ」
「そうだけど」
「よし決定、来月から息子とこ行くからよろしく」

息子にやらせろよ
と言いたいのを飲み込んだ
仕事なくなるよりいいかなぁ
くらいのノリで半ば無理やり承諾

最初は大変だったが、常連にも助けられて
何となくやり方がわかってきた

精神的な面に関しては
少年親子にかなり助けられた
どんなに凹んでもギャルギャルしいのに
できるよ、大丈夫
って言われたら不思議と本当に事が進む

店も落ち着いた頃
いつものようにギャルギャルしいのといた
少年はすでに寝ていて、
俺たちも別室で横になってた

ギャルギャルしいのが俺に乗っかってきた
「何難しい顔してんの?」
「ちょっと悩みというか迷いというか」
「話してみて?」
と言ってキスしてくる

「いや~…んー…」
「そんな悩んでるなら今日はやめる?」
「あ~…結婚する?」
「え、ちょ、今言うの?」
「ダメ?」

「私恥ずかしいじゃん!
プロポーズされるってのに1人だけやる気まんまんで」
「そこも好きw」

連れ子がいる、バツイチetc
色々と、こんなんだけどいいの?
と質問攻めにされたが
そんなことは全部考えた上での答えなわけで
なんと言われようと気持ちは変わらなかった

再婚だから一応披露宴とかはやらず
俺の身内がちょろって家に来て顔見せくらいにした
ギャルギャルしいのの身内はカナダだから
さすがに無理だった

結婚してからも特に生活は変わった感じはせず
少年もギャルギャルしいのも相変わらず
タケちゃんって呼ぶし、
ギャルギャルしいのは看護婦辞めないし
変わったと言えば2人の名前くらいだった

そのうちで娘も授かった

少し歳の離れた兄妹になったが
少年は妹を猫可愛がり

娘が生まれた翌年
ギャルギャルしいののガンが発覚
発見は遅く、転移しているようだった
薬の副作用もあって日に日に痩けていく
肌は白を通り越して青白い

発見から10ヶ月後、俺は独身になった
今度は子持ち

しばらく店を開ける気にもならず
毎日ボーっとしてた

でも、子どもたちは元気だ
笑顔で妹の世話をする少年
少年に満面の笑みを向ける娘
2人を見守るばあちゃん
俺は置いて行かれたみたいだった

毎日に元気な子どもたちを見ていると
さすがにこれじゃダメだと思ってしまう

「明日から店開けるかな」
「本当に!?僕最初のお客さんになる!」
「ユウタは学校あるだろ」
「じゃ朝早くお店しよ!
僕とマリが最初のお客さんね!」

なんだが少年は俺が店を開けるのを
待ってたかのように反応した

それからはすぐに立ち直った
たまにギャルギャルしいのの写真や
手紙を見て泣いたりしたけど

そして、
ギャルギャルしいのが亡くなってから20余年
今度は俺がガンになった
肺ガン、タバコを吸ってなければ
もっと子どもたちと一緒にいられたのに
娘の花嫁姿を見られないのは残念

はい、というわけでおしまいです

俺=タケちゃん
って設定で書いてはみたものの
最後めっちゃ駆け足でスレタイ無視で
ちょっとめちゃくちゃですね

話の大筋は、
ギャルギャルしいのとタケちゃんの日記、手記からです
細かいとこは、ユウタの記憶や私の想像・妄想です

今更ながら、半分くらい釣りでした

私はタケちゃんの娘です
ユウタの父親違いの妹です

まさかこんなに伸びると思ってなくて
適当に書いて適当に終わろうと思ってたんで
なんかすみません

半分釣りっていうのは
会話や細かい部分が嘘っぱちです

大まかな流れは、
2人の日記や手記に嘘がなければ本当です

つまり、タケちゃんの娘である私が
両親の日記・手記を見て、
それに想像妄想を混ぜ込んでここに書きました

因みに、ユウタは結婚してお店やってます
定食屋というより、喫茶店というか、
その中間というか
詳しく書かないけど、それなりに人が来るようです

2人が結婚した辺りで適当にねじ曲げて
さっぱり終わらそうかなぁ
と思ってスレ立てました
でも意外と伸びちゃったし
なんか勢いでスレタイ無視しちゃいました

 

429: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:35:33.80 ID:omrXJ57Y0
マサキが気になって寝れない

445: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:42:40.38 ID:Ee/BhgdKO
>>429
想像上の人物です

431: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:35:59.47 ID:MLw4d10/0
30年前に院卒ニートだと?

445: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:42:40.38 ID:Ee/BhgdKO
>>431
無気力人間だったっぽいです
本当は、実家も追い出されたようです

452: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:45:09.97 ID:pK23iGfGP
そうかw

たけちゃんがイケメンなのは
娘さん視点だから余計に

465: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:49:05.30 ID:Ee/BhgdKO
>>452
実際の父はグータラでしたけどねww

467: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:49:14.16 ID:5SVofFEe0
寡黙な昭和の親父って感じだったんだろうなタケは

506: 名も無き被検体774号+ 2012/09/06(木) 00:00:30.50 ID:z4NwFighO
>>467
晩年の父は、さながらテキトー男でした

441: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:40:51.12 ID:pK23iGfGP
ユウタが事故にあった時に
携帯に鬼電かかって来たとか

でも22じゃ携帯が無い時代なんか知らないから
当時を想像しながら書いたらそうなるか・・・
どこまで信じたらいいかわからんくなったがw
混乱するはw

456: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:45:52.37 ID:Ee/BhgdKO
>>441
あー、やらかしました
ちゃんと練ってからやるべきでした

416: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 2012/09/05(水) 23:33:39.59 ID:NDuvbdmB0
今いくつでなにしてるの?

433: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:36:18.40 ID:Ee/BhgdKO
>>416
22でOLしてます

434: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:37:35.73 ID:xnE12gHhI
>>433
そこは看護師設定にしとけよ

445: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:42:40.38 ID:Ee/BhgdKO
>>434
看護婦です(キリッ

439: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:40:09.36 ID:8xV3DUsR0
22歳って事は
タケちゃんが亡くなったのは最近って事?

456: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:45:52.37 ID:Ee/BhgdKO
>>439
そう、喪中です

466: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:49:08.37 ID:DrJ4X3Wo0
ということはギャルギャルしいのは30代前半、
タケちゃんは50ちょい位で亡くなったのか
いい人ぽいのは早く逝ってしまうのもだな・・・

464: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:48:53.80 ID:ulmgLbKm0
じゃあお母さんとの記憶はほとんどないのか??

484: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:55:53.20 ID:Ee/BhgdKO
>>464
ないです
残念なことに

461: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:48:01.44 ID:rmQq3Ees0
たけちゃんとギャルギャルしい>>1のかあちゃんは
大恋愛だったんだね。
>>1から見てこの2人は自慢の両親でしょ?

484: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:55:53.20 ID:Ee/BhgdKO
>>461
あえて自慢する程でもないですが、
両親大好きです

490: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:58:09.80 ID:HhyFblvK0
ギャルギャルしいのって呼び方も
日記に書いてあったの?

511: 名も無き被検体774号+ 2012/09/06(木) 00:02:47.96 ID:z4NwFighO
>>490
最初は、あの女で
途中からリエになってましたね
因みに母も兄も私も
父をタケちゃんと呼んでました

432: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:36:04.50 ID:PaNetzCiO
ユウタ兄ちゃんは元気か?
10歳くらい離れた兄か
今でも仲いいの?

ご両親の冥福を祈る
でもいい兄が残って良かった

445: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:42:40.38 ID:Ee/BhgdKO
>>432
ありがとうございます
兄も仲良いですが、姪が可愛すぎて可愛すぎて

448: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:44:01.68 ID:gWhhEWxW0
>>1は今、幸せなのか?

465: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:49:05.30 ID:Ee/BhgdKO
>>448
不幸じゃないけど幸せでもないです

460: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:47:45.22 ID:k9G+41p50
もしかして結婚の予定があるの?

484: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:55:53.20 ID:Ee/BhgdKO
>>460
その漢字読めないです
いやぁ、難解ですねー

468: 名も無き被検体774号+ 2012/09/05(水) 23:49:21.78 ID:Kw5ppt26I
1の顔はハーフっぽい?

506: 名も無き被検体774号+ 2012/09/06(木) 00:00:30.50 ID:z4NwFighO
>>468
まぁそうですね

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