私の父が体験した衝撃的なこと。
かなり昔、父が高校を出て就職したばかりの頃、
職場にとても物静かで真面目な、父より5歳上の女性社員がいた。
他の社員は5時でさっさと帰ってしまうのに、その人だけは
いつも遅くまで残って残務整理や道具の手入れをし、
時には他人のやり残した修繕まで引き受けていた。
父はその女性社員のことを偉いなと思うと共に、
彼女一人に仕事を押し付けている他の社員に
憤りを感じていたが
さすがに先輩相手では言いづらい。
さらに自分が手伝うにしても
まだ新人でできる仕事が少ないので、
ほとんど手伝えなかった。
ある日、父が倉庫を片づけた後で
大分遅くなってから職場に戻ると
例の女性社員がまだ残っていて、
一人で重そうな荷物を運んでいた。
か細い身体で一生懸命に働いている姿を見て、
父は居たたまれない気持ちになった。
翌日、父は意を決して朝礼の場で
「彼女にばかり仕事をさせすぎだ、もっと皆で分担するべきだ、
昨日もたった一人で荷物運びをしていて可哀相だった」
ということを発言した。
まだ18歳の父にとっては、
これだけでもかなり勇気を振り絞った行動だった。
それでも課長をはじめ皆は神妙な顔で聞いてくれていたので、
「思い切って言って良かった」
と父もホッとした。
数日後、その女性社員は会社の資材を持ち帰って
横流ししていたことが発覚して解雇された。
あの重そうな荷物もその一部だったらしい。