旦那との出会いが偶然が重なった運命的な出会いではなく
作られた演出だったこと
旦那の存在を知ったキッカケはA子
A子は職場の同僚で見た目が派手なギャル系
休憩中はいつも他のギャル系女子社員たちと男の話をしていた
私は地味だったのでA子たちのグループには加わらず、
遠くからA子たちの話を
聞くともなしに聞きながらボーっと休憩時間を過ごしていた
ある日、A子が
「見た目そこそこ、有名企業の研究職で高収入
リストラの心配も少ない好条件な男を紹介してもらったが
真面目で面白味がない。とりあえずキープして他を探す」
と話しているのが聞こえてきた
面食いのA子が『そこそこ』と言うのだから
なかなかのイケメンなんだと思った
彼は私の理想の男性像そのものだった
なぜかその日から見たこともない
有名企業の彼が気になって仕方がなくなった
でも、他人が欲しがる物を欲しがるタイプのA子に
彼を紹介してとお願いするのは、
自分で自分の首を絞める行為にしかならない
私は結局、A子の口から時々出てくる彼の話を
こっそり盗み聞きすることしか出来なかった
A子は彼からのアプローチを上手く交わし、生かさず殺さずの
絶妙なサジ加減でキープしつつ、他の男と不倫しながら婚活にも精を出していた
彼を雑に扱うくらいなら私に頂戴!と言いたくなるのをグッと我慢して
諦めるしかない、私にはどうにも出来ないと自分に言い聞かせること半年
ついに我慢の限界が来た私は思い切ってA子に
「彼は私の理想の男性像そのもの。A子さえ良ければ彼を紹介して欲しい」
と言ってみた
A子は最初驚いた様子だったが、すぐに
「彼に聞いてみる」
と言った
翌日A子は
「彼に紹介したい子がいると言ったら前向きな返事が返ってきた。
とりあえず写メを送ることになったから撮らせて」
と言って私の写メを撮った
最初の心配が嘘のようにA子は協力的で
「写メを見せたら彼が可愛いって言ってたよ!彼も是非会いたいって」
と、A子に相談してから数日で彼と会う日が決まった
A子は
「彼はギャル系が好きらしいよ」
と服装のアドバイスもしてくれた
約束の当日、A子は申し訳なさそうに
「彼、急な出張で今日来られなくなったんだって」
と言ってきた
A子は
「仕方がないとはいえドタキャンなんてあり得ないよね!
今度埋め合わせしてもらおう!!」
と怒っていた
私は怒りよりガッカリ感の方が大きかったが仕事ならば仕方がないと受け入れた
A子経由で彼と会う約束をする→当日ドタキャンが3回続いた
さすがに私もおかしいと思い始め、A子に
「直接彼と連絡を取るので彼の連絡先を教えて欲しい」
と言うと
「彼の許可なく勝手に教えるわけにはいかない」
と断られた
「ならば彼に確認して欲しい。なんなら私の連絡先を彼に教えてもらっても良い」
と食い下がると
「わかった」
と応えた数時間後に
「彼は私(A子)のことが好きだからあなたと連絡取る気は無いって」
と言われた
A子は私に彼を紹介する気なんて無かったんだと悟った
私と彼との繋がりはA子だけだった
なのに、そのA子が大きな壁となって邪魔をしてくる
これはもう縁が無かったと諦めるしかないと思った
でも、A子の嘘によって膨れ上がった期待はどうにも抑えられなかった
私は何とかして彼と知り合う方法はないかと考えた
私が知っているのは彼の職業、年齢、名字(珍しい名字だった)
乗っている車(【国産の高級車】に乗っているのはポイントが高いとA子が話していた)
おおよその住所(最近開発が進んでいる【地名】にマンションを購入して
一人暮らしなのはポイントry)
これだけだった
あらゆるSNSに知っている限りの情報を入力して検索したけど
彼らしい人は見付からなかった
これはもうプロに頼むしか無いと思った
探偵を探しているうちに別れさせ屋とは逆の復縁屋というものがあると知った
ここまでやるのはストーカーじみてると悩んだが、このまま諦めたら
一生引きずると思ったので思い切って依頼することにした
何軒かに話を聞き、金額が明確で
きちんと事務所を構えている所に頼むことにした
私の少ない情報で顔も知らない彼を突き止められるか不安だったが、
驚いたことに1ヵ月ほどで特定したと報告がきた
どうやったのか聞いたが企業秘密だと教えてもらえなかった
復縁屋が撮った隠し撮り写真で初めて彼の顔を知った
復縁屋は彼の行動パターンを割り出し、
よく利用するスーパー、よく買う商品、
よく行く本屋、好きな本のジャンルが判明した
私は復縁屋と相談して出会いのストーリーを考えた
でも、今まで演技なんてしたことない人間がいきなり絶対にバレてはいけない
人生をかけた演技をしなきゃいけないわけで
複雑な演出はやめて単純にしようと、復縁屋が私を押す→彼にぶつかる→
私、彼の目を見て「ごめんなさい」→立ち去る
今度は本屋で別の復縁屋が私を押す→彼にぶつかる→
私、彼の目を見て「ごめんなさい…あれ?この前もぶつかりましたよね。
何度もすみません」と少しだけ会話して印象付ける
あとは何度かスーパーや本屋で『偶然』の鉢合わせを演出して
連絡先を交換したところで復縁屋の仕事は終了
その後は普通に交際して普通に結婚した
旦那は私たちの出会いを運命だと思っている
好きな食べ物や好きな本のジャンルが一緒なのも
2人が出会うべくして出会った証拠だとロマンチックに語っていた
復縁屋がリサーチしてくれたおかげだとは死んでも言えない
全部墓場まで持って行く