俺と嫁さんの出会いは結婚式場だったよ
当時、俺は前妻と結婚式をあげようとしていて
見学に行った先のプランナーさんが現妻だった
当時の俺は前妻にべたぼれで、どうしても結婚したいがために
かなり高額な費用のかかる式をあげようとしていた
なるべく花嫁側の希望を取り入れて
気持ち良くあげられるようにしたい一心だったけど
やっぱお金が足りなくなったんだ
その時にプランナーさんだった現嫁がうまく取りなしてくれて
レンタルなどで安くあげられるところは安くあげたり
前妻が好きそうな演出を考えてくれたりしてくれたこともあり
なんとか自己資金だけで賄えた
でも前妻には
「お色直しがもっとしたかった」
(二回したけど三回が希望だった)
「料理のランクを有名レストランと遜色なくしたかった」
(これは好みがあるだろうけど、列席者には概ね好評をいただいた。ランクはそこで用意できる一番の物だった)
等の不満をずっと言われた
そういうこともあって新婚生活は長く続かなくて
前妻の夜遊びや浮気があり、半年もたずに離婚
ご祝儀を可能な限りの列席者に返還し
心に穴が開いたように、ぼんやりしてたころ、式場から手紙が届いてさ
そこの会社は式を挙げた夫婦とその親に
一年後、ディナーの招待をしていて その案内だった
父は俺が大学生のころの他界して母親だけだったのだが
その母が式当日の食事をとてもおいしかったと何度もほめてくれていたので
せめてもの孝行に二人で出かけることにしたんだ
会場は仲良さそうな夫婦やその両親たちで幸せな雰囲気に包まれていたのだけど
そこに連れ出してしまった母には申し訳ない気持ちでいっぱいだった
それでも料理はおいしくて
母も喜んでくれたり、離婚後気落ちしていた俺を励ましてくれたりして
ずいぶん救われたよ
そんななか、各プランナーがそれぞれの担当した夫婦に
あいさつ回りに来る時間になったんだけど、これが気まずかったw
参加者の集計の段階から母と二人きりの卓なのはわかっていたけど
嫁に関しては具合が悪いのかな?と思っていたそうだ
そこに俺が「実は離婚しまして…」と声を絞り出すと、向こうも絶句
やべー空気読んで嘘ついとくべきだったと思っていると母がこう言ってくれた
「あなたがとても素敵な式を企画してくださったのに
このようなことになって本当に申し訳ありません。
でも息子は気を奮い立たせて今回私を招待してくれたの。
決して気が進むことではないのに、
またあのおいしい料理を食べたいわね、と言っていたのを覚えてくれていたの。
優しい、本当に優しい息子に育ってくれたのをまた実感できたんだもの
ここに来れて嬉しいわ」
って
離婚の回避と離婚の後始末にも何くれとなく手助けしてくれた母親の隣で
ただ下を向いて涙をごまかすのは難しかった
愛されていることの実感をこれほど感じたことはなかった
それを聞いた現嫁は
「誠に失礼いたしました。
私も、皆さんの御式を担当できたことを嬉しく思います。
優しい息子さんですもの、今後良き縁に巡り合わないはずがございません」
と泣き笑いの表情で母親と笑いあっていた
そのあと何度も俺達のテーブルに足を運んでくれ
帰り際も、今後もなにかありましたらなんでもご連絡くださいと
深々と頭を下げられた
その後、彼女と母親が共通の趣味で共に出かける様になり
そこに俺も呼んでもらえるようになった
三人で出かけるのが当たり前になったころ、母が席を立った時に彼女が
「また結婚するの怖い?」
と聞いてきた
そのころには、四つ年上だった彼女に強い恋心を抱いていた俺は勢いで
「貴女となら怖くない」
と言い切った
その後は恋人として交際を経たのち、現妻として今も隣にいてくれてる