社内で私はS先輩を退職に追い込んだ女、 として扱われる様になり憧れだった会社を退職することになった

兄の行いが原因で仕事を辞める羽目になったのが修羅場だった

私の兄は小学校高学年ぐらいから徐々にグレ始め、
中二になる頃には完全に不良やヤンキーと呼ばれる人間になっていた
学校の内外でケンカは日常茶飯事だったし、家では喫煙は当たり前、
外でもカツアゲや万引きチャリパクなど色んな悪さをしていたらしい

でも私や弟には少し怖い所はあっても、よくお菓子やゲームを買ってくれたり、
ファミレスなんかに連れてってくれたり、
共働きで放置気味の両親に代わって
私達の面倒をよく見てくれた優しい兄だった

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また、兄の友達もよくウチに遊びに来て、
タバコなんかをプカプカ更かしたり夜まで騒いだりしていたが、
私や弟が兄の部屋に遊びに行くと、
私達が知らない事を色々と教えてくれたり、一緒にゲームをしたり
ビデオで映画を観たり、
時には深夜に一緒に外に遊びに出かけたりしてくれて、
皆優しく面倒を見てくれて、
年上の友達、若しくはお兄さんお姉さんみたいな人達だった

兄は高校を卒業してからもしばらくヤンチャしていたが、
当時付き合っていた彼女(今の義姉)が妊娠したのを機に
ヤンチャ族を引退して就職し、そこでしばらく真面目に働いた後、
友人達数人と共に独立した
今では数十人規模の零細企業とはいえ社長をやっている

弟は何故か両親と同じ教職の道に進み、
私は憧れだった職業の、更に憧れていた会社に就職した
兄の事は色々あったものの、皆それなりに大人になって
それぞれの生活を送っていたのだが、
私が某県の支社に転勤となった時、そこでS先輩という人に出会った

S先輩は役職には就いていなかったものの、
穏やかな人柄で仕事も良くでき、社内の皆に慕われていた
私の教育係でもあったので私はS先輩を慕っていたし
S先輩も初めは優しかったのだけど、
いつの頃からかS先輩は段々と私に対しよそよそしい態度を取る様になり、
その原因が分からず私は人知れずずっと悩んでいた

ある日の仕事終わり、S先輩に食事に誘われた際、
「◯◯さん(私)にはひょっとして、××という兄がいませんか?」と聞かれた
私はどうして兄の事を知っているんですか、と言った

するとS先輩は「やっぱり…」と、
まるでこの世の終わりの様な表情を浮かべた後、
ぽつりぽつりと語り始めた

S先輩は、中学から高校の途中までは私の地元の県にいたらしく、
兄とも中学高校が一緒だった
中学から高校にかけて、S先輩は兄に殴られたり金を巻き上げれたり、
仲が良かった幼馴染の同級生(女子)まで色々と酷い扱いをされたりと、
とにかく兄と兄のグループにイジメられていたという
高校までは何とか我慢したが、幼馴染の女子にまで手を出されたり、
土手から何度も突き落とされたり、
根性試しと称して根性焼きやライターで炙られたり、
などのちょっかいを出されるにあたって
(実際にその跡を見せられた、結構深い傷跡だった…)
ついに学校に通えなくなり、祖父母がいる他県に逃げる様に転校し、
そこで進学、就職して今に至る、と話した

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「君の名字がアイツ(兄)と同じだと知った時、
初めはただの偶然だと思ったけど、
横顔や注意をした時に見せる表情がアイツそっくりだった。
それから段々と、君がアイツの妹か、
身内なんじゃないかと疑う様になった。
今日はそれを確認する為に君を誘った。
君には罪の無い事は分かってるけど…でも、
どうしても態度に出てしまう…」と言って、
万札を置いて逃げる様にお店を出て行ってしまった

それからS先輩は、ますますあからさまに私を避ける様になり、
仕事上でもミスが増え、
やがて遅刻や無断欠勤をする様になった挙句、
「一身上の都合により」退職した

S先輩と仲が良かった人達が退職の理由を聞きに行き、
渋るS先輩から聞き出した事によると、
S先輩は兄と似ている私の姿を見るだけで当時を思い出し、
どんどんノイローゼに陥り、
最後には鬱になってしまってどうしようも無くなってしまったらしい

結果的にはS先輩が自滅してしまった話なんだけど、
社内ではすっかり私はS先輩を退職に追い込んだ女、
として扱われる様になり、居場所が無くなった私は
泣く泣く憧れだった会社を退職する羽目になった

失意のまま地元に帰った私から事情を聞いた兄は、
私に何度も、頭から血を流すぐらい土下座して泣きながら謝ってくれた
それからすぐに必死で私の再就職先を探してくれ、
何とか同業種の会社の世話になる事が出来た

そこで今の夫と出会い結婚したのだけれど、
今でも兄には「あの時は済まなかった…」と謝られ、
色んな便宜を図ってくれる様になり、正直申し訳無いと思っている

確かに兄がS先輩にした事は悪い事ではあるけど、
私や弟にとっては兄はあくまでも良い兄だったし、
兄の友人達もお世話になったお兄さん・お姉さん達だった
憧れの職は失ってしまったけど、
それでも私にはどうしても兄達を憎む気にはなれなかった

決して誰が悪いという訳でも無いのに、偶然の巡り合わせで、
私・兄・S先輩、それぞれの修羅場になった話でした

最近は弟にも「そろそろ兄ちゃんを許してやってくれよ」と言われています
さすがに退職に追い込まれた当時は怒りの気持ちもあったのですが、
兄の誠心誠意の謝罪を受けてその思いも消えてしまいました

今では本当に憎んで無いし、その事を兄や弟に何度も伝えているのに、
どうも上手く伝わってはいない様で、
それもまたちょっとした修羅場かもしれませんね…

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