姪はそのまま、維持装置が外された

高校生だった姪が亡くなった、交通事故だった
姪の友人が移植の順番を待ちながら、
病気で亡くなった事から
姪は本人の強い希望で、死後提供の登録をしていた
この事は両親である姉夫婦とも良く話し合った結果で
登録証には姉夫婦の署名もあった

でもいざ、脳死状態になった姪から取り出す、
という状況になった時姉は半狂乱で拒んだ

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まだ生きてる、暖かい、
目を覚ますかもしれないのに!って

結局、姪はそのまま、維持装置が外された

事故で辛い思いをした娘に
これ以上メスを入れられたくない
せめて全て揃ったまま、天国に送ってやりたい
角膜が無くなったら
あの子は天国で何も見えないじゃないの

姉の思いは良く理解できた
医者も強いて提供を、とは言わなかった

姪の死後、数年して姉が言った
「夢であの子に泣かれた、
どうして私の意思を尊重してくれなかったの?」って

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提供をしていれば、
あの子の角膜は今も何かを見ていられたかも知れない
あの子の一部は誰かの中で生きていたかもしれない
灰になるよりその方が良かったかも知れない

姉は黙り込むことが多くなり、食が細くなっていった
一人娘を失い夫婦関係もぎこちなくなり、
姉夫婦は離婚した

その後、姉は数度の自殺未遂を繰り返し、
心が壊れ今は入院している
もう妹の私の事も分からない

ただ自転車のベルの音がすると
「○○ちゃんが学校から帰って来た」と
嬉しそうに窓を見る
「おやつを用意してあげなくちゃ、
時々いきなり友達を連れてくるから慌てちゃうのよ」
って嬉しそうに笑う
「女子高生って良く食べるの」って

可愛かった姪が突然亡くなった事
ひき逃げ犯がまだ捕まって無い事
姉が心を壊して、回復の見込みがない事
平和でどこにでもいる家族だった我が家が、
口では言えない修羅場のここ数年

あと私も数年前から
「おばちゃん、どうしてお母さんたちを
説得してくれなかったの?」って
夢で姪に責められている

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