セクハラ先輩にしつこく飲みに誘われたので新宿2丁目に置き去りにした

当時、私は新卒で就職した会社で、一所懸命やっていた。
周りの人たちもいろいろ教えてくれた。
しかしその中に1人、先輩社員(男・妻子持ち・30代半ば)
がねちねち嫌なことを言ってくる。

「そんなにきりきり働いて、社長にでもなるつもり?」
「よっ、女社長、今日も残業?」
「仕事もいいけどさ、たまにはミニスカートとかはいてきなよ」
「今日、化粧が濃くない?セクシーだね」
社会経験の少ない小娘をからかってるだけだとわかっていても、
イライラした。

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ある週末、新宿で会社の納会があった(会社は新宿ではない)。
楽しく飲んで解散となったところで、
上記の先輩社員がいつの間にか私の脇に来ていて
「2人でもう1軒行かない?」と言ってきた。
もちろんいやだ。「電車がなくなりますから」と断っても
「送っていくから」「これも社会勉強だよ」と食い下がってくる。
先輩の機嫌を損ねたら仕事がしにくくなるし、
と悩んでいたら、ひらめいた。

私はにっこりうなずいて、「私の知ってる店でいいですか?」
この先輩が、新宿に詳しくないことは知っている。
(家が千葉で遠距離通勤がつらい、
会社の周りでしか飲めないといつも愚痴っていたから)

先輩がいいよと言ったので、ちょっと歩いて、
路地裏のバーに案内した。
先輩は機嫌よく、上司の悪口や自分の努力がいかに報われないかを語り、
午前1時を回った頃、なんか二枚目な口調で
「じゃ、行こうか」と立ち上がった。
路地の向こうに、しけたホテルのネオンが瞬いていた。

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そっちへ歩きながら先輩は私の肩を抱こうとしたが、避けた。
ホテルの前まで来て、先輩が何か言おうとした時、
私は最高の笑顔を作って
「送ってくださってありがとうございます。じゃ、ご馳走様でした!」
と大声で言い、ホテルの脇道へ駆け込んだ。
追いかけてこられたら怖いと思ってちょっと振り向いたら、
呆然とつっ立ってた。

そうさ私は地元民。ホテルから徒歩5分で実家。
さっきのバーは知り合いの店。
そしてどんな遅い時間だろうと、ある意味女は安全な町。
ここは新宿2丁目。

先輩、もう電車はないよ。
せっかく終電の心配をしてあげたのに、
千葉までタクシーでいくらかかるだろうね。
漫画喫茶やネットカフェはまだない時代だけど、
深夜営業のバーやホテルやサウナはいっぱいあるよ。
公園で始発まで時間つぶしもいいね。好きなところで過ごしてね。

2丁目の人達は、通りがかりの人を襲ったりはしない。
誘い・誘われがしたい人は、そのためのバーや
ホテルやサウナや公園に行く。
ただ、冷やかしや知らないでうっかりそういうところに踏み込むと、
えらい目に遭う(らしい)。
でも、本当に危険な歌舞伎町の裏通りに置き去りにしなかったんだから、
感謝してほしい。

週明けから、先輩は私に構ってこなくなった。
私の実家は今は引っ越している。
蛇足だが、昔の新宿は、繁華街をちょっと外れれば、
ふつうの住宅街だったのよ。

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