小学生の頃、あんぽんたんで夢見がちだった私は
小雨の降る中、少女漫画に出てくるような出会いを求めて
自転車で近所をふらふらしていました。
頭の中では
「かっこいい年上の男の人と出会い、公園でお話する」
という、まさに当時、
少女漫画の王道ともいうべき世界が広がっていました。
すると、前方から傘も差さずに
自転車を引いている大学生風の男の人が・・・。
私は、その人の気を引くために、
周りを行ったり来たりして
自分の存在をアピールしていました。
そのうち
「この近くに自転車を修理する店はあるかな?」
と声を掛けられたので
舞い上がった私は、漫画の世界での展開を考えながら
「は、はい。よかったら案内します・・・」
と答えました。
しばらく、自転車を引きながら
話をして歩いていたのですが
夢見がちだった割りに、冷めた所もあった私は、
会話の内容や相手の態度に
「???なんか変かも??」と思い始め
名前や住所など、
プライバシーに関する事は一切話しませんでした。
アホ小学生ながらも『女の勘』は働くようで、
そのうちに
男
「この近くに神社があるんだけど、一緒に行こうか?」
私
「あぁ・・はい・・・
(こんな山道を登ったところに神社なんて無いよ)」
男
「心配しなくても、調べてあるから大丈夫だよ」
私
「ええ・・・
(あんた、この近くに来たのは
初めてだって、言ってたじゃん)」
男
「自転車は、ここに置いて手を繋いで行けば大丈夫だから」
と言い、私の手を引き寄せようとしました。
その瞬間、何かに引き戻されたように
私は現実へ舞い戻り
男をおもいっきりキックして逃げ出しました。
うずくまる男を背に、自転車をこぎ続け、
自宅に帰ったのですが
危うく、とんでもない目に遭うところでした。
その後、窓から様子を見ていたら、
どうやら私を探していたようで
自転車を引きながら近所をウロウロしていました。
あの時、ついて行かずにキックした自分を
褒めてやりたいです。
たしか3年生か4年生ぐらいの時だったと思います。
ホント、少女漫画の世界に憧れていて、
思い出すだけで大馬鹿ヤロウの自分でした。
思えば、その男の表情や語り口調などが
『こいつなら、俺でも大丈夫なんじゃないか』
なんて調子に変わってきたので、
アホな私にも察知できたのだと思います。
その頃は、リアルに理解できず
数年経ってから、心底恐怖が湧いてきました。