オフクロが逮捕されかけた話をする
生前のオフクロは良くも悪くも田舎の朗らかなおばちゃん
俺は社会人でオヤジは病死して2人で暮らしてた
住まいは都会にもそこそこ近いが
田んぼもあるような治安もいいのんびりしたとこ
俺は普通にリーマンとして通勤
オフクロは家事をしながら畑を借りて暮らしてた
ある日そんなのんびりした街で殺人事件が起きた
早朝近所の林で女性の死体が発見された
そのサツ 害時間帯が俺の通勤時間と同じだったらしいのと
近所からの通報があったらしく
俺はどうやら容疑者の端っこに引っかかったみたいだった
直接お巡りさんや刑事が聞き込みに来し、
俺が不在時にもオフクロへ何度も事情聴取があった
俺は朝の通勤時に後をつけられてると
何度も感じたし、そんな毎日にストレスを感じてた
俺は勿論犯人じゃ無かったし、後日犯人グループは逮捕されたけど
疑われてると思しき期間は本当につらかった
俺は少年時代に少し素行が良くなかったのと
田舎だから少しの話題が大きくなることが相まって
近所でもその期間は村八分的な雰囲気で
ご近所さんから影であることないことコソコソ言われてた
ある日警察が会社まできて俺に事情聴取をした
それが上の耳に入り叱責された
お前は犯人じゃないのだろうが、自業自得なところがあるんじゃないか?
脇が甘いんじゃないか?と
俺はその日やり切れずに辞めてた酒を大量に呑んで
家に帰ってオフクロに愚痴った
その翌日の日曜日に俺が二日酔いで寝てると
話声がした
隣の奥さんとオフクロが玄関先て話し込んでたようだ
そのまま俺が微睡んでると突然オフクロの怒鳴り声が響いた
俺が飛び起きて玄関先に出てみると
オフクロが折れた竹箒を持ったまま警察に取り押さえられていた
俺はアタマに血が上って警察に飛びかかってオフクロを助け出した
警察は公務執行妨害でなんたらと騒いで
オフクロを捕まえようとする
俺はそれを妨害する、すると、俺のことも捕まえようとする
大騒ぎになりかけたところで隣の奥さんが旦那さんを引き連れ仲介
とりあえず騒ぎは収まった
興奮したオフクロを宥めながら事情を聞けば
隣の奥さんと話し込んでたときに警察が来て
件の殺人について俺のことを聞き始め
いい加減オフクロもガマンの限界、昨晩の俺の疲れた様子を見て
とうとうブチキレたらしい
俺は勿論警察を責めた
警察は、これは公務であって問題ある行動はしてない、と
それを邪魔されたからこれは公務執行妨害だと言う
俺も心底腹が立って文句を重ねようとしたら
スッと警察は帰って行った
俺は警察に抗議しに行ったし
親戚を頼りに地方議員や弁護士を通じて
謝罪させようと動いていた矢先に犯人は逮捕された
オフクロの恥を重ねたくないとの懇願に
俺は情けないが結局泣き寝入りした
でも最後まで彼らからの謝罪はなかった
今日オフクロの墓参りに行ってふと思い出したこと
オフクロは俺のために怒ってくれたことを忘れない
あれが俺の人生で結構大きい修羅場だった